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第四十四話 別れ
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目から零れた大粒の涙だけを残して、アラン様の部屋を去ったあたしは、自室のベッドに顔から飛び込んだ。
「ぐすっ……うえぇぇぇぇん……」
『お、おいどうしたんだミシェル? 何か悲しいことでもあったのか?』
急に帰ってきて泣きじゃくっていたからか、部屋で丸くなって寝ていたシロちゃんが、血相を変えて飛んできた。
シロちゃんにも、ちゃんと説明をしなくちゃいけないのに、そんな余裕なんて、今のあたしにはあるわけもない。
「シロちゃん、ごめん……あたし、ここを出て行くの……」
『えぇ!? い、意味がわからないぞ!』
「……あたし、シロちゃんの知らない人と結婚するの……」
『け、結婚ってなんだ??』
「ぐすっ……よく考えたら、あたしがいくらアラン様が好きで、アラン様と結ばれたとしても……前世の世界に戻ったら、もう会えないんだよね……」
あれ? そう考えたら、さようならをしたのは、ある意味良かったかも……き、きっとそうに違いない。これでよかった……よかったんだ……あ、あはは……。
『前世? 戻る? さっきから、言ってることが全然わからないぞ!』
「ごめんね、シロちゃん……偉そうなことを言って連れてきておいて、こんなことになって……大丈夫、ちゃんとシロちゃんのことは、屋敷の人にお願いするから……嫌だったら、野生の世界に戻ってもいいからね」
『み、ミシェル……』
「ごめんね……今は、一人になりたい……」
『……でも……』
「出てって!!」
ついに色々と限界になってしまったあたしは、頭から布団をかぶって全てを拒絶する。
アラン様、どうしてアタシを捨てるような決断をしたんですか? 悠、芽衣……お姉ちゃん、どうすればいいのかな……もう、わけがわからないよぉ……!
「さよならなんて、したくない……寂しいよぉ……アランさまぁ……!」
****
――アラン様に出て行くように言われてから十日が経った。あの日から、あたしは部屋の中に引きこもる生活をしていた。
あたしにとって、とても大切な人に裏切られてしまったせいで、誰にも会いたくないし、動く気力も沸いてこない。まるで、生きる気力がごっそり奪われてしまったかのように。
そんなあたしがいる部屋に、使用人の女性が入ってきた。
「失礼します。ミシェル様、今日もお食事をほとんど残しておられましたが……」
「ごめんなさい、食べたくないんです……」
「左様でございますか……」
いつもなら、あたしは使用人でもあるんだから丁寧に喋らなくても、なんて思っているだろうけど、今はそんなことを思う気力も無い。
……そういえば、あの日から何一つとして、専属使用人の仕事も助手の仕事もやっていない。
アラン様、ちゃんとごはんを食べて、休息を取ってるかな……部屋も散らかしてないかな……って、あたしはアラン様に捨てられたんだから、別に気にする必要も無いか……えへへ。
「あの、用はそれだけですか?」
「……スィヤンフィ様から、ミシェル様をお迎えする準備が出来たと連絡を受けました。なので、これから支度をしていただきたく存じます……」
「そうですか……わかりました……」
あたしが引きこもっている間に、そんなに話が進んでたんだ。アラン様ってば、随分と迅速な対応をして……そんなにあたしに出て行ってほしいのかな……。
「こちらにおかけください」
わざわざ伝えに来てくれた使用人に促されて、化粧台の前に力なく腰を降ろす。
鏡に映ったあたしは、前世で仕事に終われていた時よりもやつれていて、見るに堪えないくらい、酷い有様だった。
「ミシェル様、差し出がましいとは存じますが、一言だけお許しください。本当に……これでよかったのですか?」
「……はい。スィヤンフィ様との結婚は、アラン様の望みですから……」
「ミシェル様……」
これはあたし達の問題なのに、彼女はまるで自分のことのように、悲しそうな表情を浮かべていた。
……その後、結局あたしは一切言葉を交わさずに、彼女に身支度を整えてもらった。おかげで、少しは見れる顔になったと思う。
荷物は何日も前からまとめてあるし、あとはバーンズ家とさよならをするだけだ。
「ありがとうございます。馬車の準備は出来てますか?」
「はい。ご案内いたします」
彼女に連れられて屋敷の外に行くと、そこにはとても立派な馬車が一台と、バーンズ家に仕える多くの人達、そして使用人に抱っこされているシロちゃんが、あたしの見送りのために集まってくれていた。
でも……アラン様とウィルモンド様の姿は、ここにはなかった。
ウィルモンド様は、確か仕事で屋敷を空けているのはいつものことだから仕方ないけど、アラン様は……捨てた人間の見送りなんて、くるはずもないか……。
「みなさん、お世話になりました。シロちゃん、元気でね」
『ミシェル……』
「シロ様の面倒は、我々がしっかり見させていただきます」
「ありがとうございます。あたしのワガママで連れてきたのに、押し付ける形になって……本当にごめんなさい……では……」
見送りに来てくれたみんなに、力ない別れの言葉を残して、マール家へと出発する。
もう二度と、ここの人達と会えないかもしれないんだから、ちゃんと挨拶をするべきなのはわかってるけど……そんな当たり前のことすら考えられないほど、今のあたしには気力も余裕も無かった……。
「ぐすっ……うえぇぇぇぇん……」
『お、おいどうしたんだミシェル? 何か悲しいことでもあったのか?』
急に帰ってきて泣きじゃくっていたからか、部屋で丸くなって寝ていたシロちゃんが、血相を変えて飛んできた。
シロちゃんにも、ちゃんと説明をしなくちゃいけないのに、そんな余裕なんて、今のあたしにはあるわけもない。
「シロちゃん、ごめん……あたし、ここを出て行くの……」
『えぇ!? い、意味がわからないぞ!』
「……あたし、シロちゃんの知らない人と結婚するの……」
『け、結婚ってなんだ??』
「ぐすっ……よく考えたら、あたしがいくらアラン様が好きで、アラン様と結ばれたとしても……前世の世界に戻ったら、もう会えないんだよね……」
あれ? そう考えたら、さようならをしたのは、ある意味良かったかも……き、きっとそうに違いない。これでよかった……よかったんだ……あ、あはは……。
『前世? 戻る? さっきから、言ってることが全然わからないぞ!』
「ごめんね、シロちゃん……偉そうなことを言って連れてきておいて、こんなことになって……大丈夫、ちゃんとシロちゃんのことは、屋敷の人にお願いするから……嫌だったら、野生の世界に戻ってもいいからね」
『み、ミシェル……』
「ごめんね……今は、一人になりたい……」
『……でも……』
「出てって!!」
ついに色々と限界になってしまったあたしは、頭から布団をかぶって全てを拒絶する。
アラン様、どうしてアタシを捨てるような決断をしたんですか? 悠、芽衣……お姉ちゃん、どうすればいいのかな……もう、わけがわからないよぉ……!
「さよならなんて、したくない……寂しいよぉ……アランさまぁ……!」
****
――アラン様に出て行くように言われてから十日が経った。あの日から、あたしは部屋の中に引きこもる生活をしていた。
あたしにとって、とても大切な人に裏切られてしまったせいで、誰にも会いたくないし、動く気力も沸いてこない。まるで、生きる気力がごっそり奪われてしまったかのように。
そんなあたしがいる部屋に、使用人の女性が入ってきた。
「失礼します。ミシェル様、今日もお食事をほとんど残しておられましたが……」
「ごめんなさい、食べたくないんです……」
「左様でございますか……」
いつもなら、あたしは使用人でもあるんだから丁寧に喋らなくても、なんて思っているだろうけど、今はそんなことを思う気力も無い。
……そういえば、あの日から何一つとして、専属使用人の仕事も助手の仕事もやっていない。
アラン様、ちゃんとごはんを食べて、休息を取ってるかな……部屋も散らかしてないかな……って、あたしはアラン様に捨てられたんだから、別に気にする必要も無いか……えへへ。
「あの、用はそれだけですか?」
「……スィヤンフィ様から、ミシェル様をお迎えする準備が出来たと連絡を受けました。なので、これから支度をしていただきたく存じます……」
「そうですか……わかりました……」
あたしが引きこもっている間に、そんなに話が進んでたんだ。アラン様ってば、随分と迅速な対応をして……そんなにあたしに出て行ってほしいのかな……。
「こちらにおかけください」
わざわざ伝えに来てくれた使用人に促されて、化粧台の前に力なく腰を降ろす。
鏡に映ったあたしは、前世で仕事に終われていた時よりもやつれていて、見るに堪えないくらい、酷い有様だった。
「ミシェル様、差し出がましいとは存じますが、一言だけお許しください。本当に……これでよかったのですか?」
「……はい。スィヤンフィ様との結婚は、アラン様の望みですから……」
「ミシェル様……」
これはあたし達の問題なのに、彼女はまるで自分のことのように、悲しそうな表情を浮かべていた。
……その後、結局あたしは一切言葉を交わさずに、彼女に身支度を整えてもらった。おかげで、少しは見れる顔になったと思う。
荷物は何日も前からまとめてあるし、あとはバーンズ家とさよならをするだけだ。
「ありがとうございます。馬車の準備は出来てますか?」
「はい。ご案内いたします」
彼女に連れられて屋敷の外に行くと、そこにはとても立派な馬車が一台と、バーンズ家に仕える多くの人達、そして使用人に抱っこされているシロちゃんが、あたしの見送りのために集まってくれていた。
でも……アラン様とウィルモンド様の姿は、ここにはなかった。
ウィルモンド様は、確か仕事で屋敷を空けているのはいつものことだから仕方ないけど、アラン様は……捨てた人間の見送りなんて、くるはずもないか……。
「みなさん、お世話になりました。シロちゃん、元気でね」
『ミシェル……』
「シロ様の面倒は、我々がしっかり見させていただきます」
「ありがとうございます。あたしのワガママで連れてきたのに、押し付ける形になって……本当にごめんなさい……では……」
見送りに来てくれたみんなに、力ない別れの言葉を残して、マール家へと出発する。
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