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第五十八話 懐かしい景色
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家を出て、近くの電車にこっそり乗り継ぎを繰り返して、無事に新幹線に乗りこめたあたしは、ふぅ~……と大きな溜息を漏らした。
これ、あたしの姿が見えてたら、完全に詰んでたよね? お金とか無いし、家に入るのも大変になってそうだしね。
「二人は大丈夫かな……」
ボーっとしていると、頭に余裕が出来て、変なことばかりを考えてしまう。会っても意味がないんじゃないかとか、二人は元気にしているのかとか。
とにかく頭の中がグルグル過ぎて、パンクしそうだ。
「はぁ……とりあえず到着までのんびりしよう」
あたしは窓から外を眺めながら、あたしの家族……悠と芽衣のことを思い出していた。
悠はとてもやんちゃで、走るのが好きだった。転んでしまうと大泣きするが、芽衣がいるとお兄ちゃんになって、泣くのを止めてたなぁ。
芽衣はとても臆病で引っ込み思案で、部屋の隅で一人で遊ぶような子だったけど、それを見かねた悠が絵本を持ってきて、一緒に読んでいる姿は、とても微笑ましかった。
……ダメだ、二人のことばかりが頭に浮かんで、気ばかりが焦ってしまう。
「早く着かないかな……」
人生で一番時間の流れが遅く感じながら、過去を思い出したり、心配したりを繰り返しているうちに、目的地である九州に到着した。
さらにここから一時間ほどバスに揺られ……辺りが真っ暗になった頃に、無事におばあちゃんが住む家に到着した。
それなりの田舎にあるおばあちゃんの家は、木造の一軒家だ。
前世のあたしは、仕事をするようになってからは、全然来れてなかったけど……記憶の中にある家と変わらない。とっても懐かしいな……。
「ふむ……ようやくこっちの花も咲いたようじゃな」
「あっ……! おじいちゃん!!」
家の庭では、仏頂面で植木をいじる男性――あたしのおじいちゃんの姿があった。
あたしのおじいちゃんは、アラン様みたいにあまり感情を表に出さないし、少し近寄りがたい雰囲気の人だけど、人一倍思いやりがあって優しい人だ。
あたしが遊びに来た時、なにをしても嫌な顔を一つしなかったし、おやつやおもちゃを買ってくれたのをよく覚えている。
そんなおじいちゃんに久しぶりに会ったことが嬉しくて、つい大きな声を出してしまったけど、やっぱりと言うべきか、おじいちゃんは何も反応をしなかった――と思ったら、キョトンとした顔で、あたしの方を向いた。
うそっ、もしかしてあたしの声が聞こえたの!? あたしの姿が見えてるの!?
「……? 今、誰かに呼ばれたような? やれやれ、俺にもついにお迎えが来たんかのぉ? あの子達のためにも、まだ死ぬわけにはいかんから、あと十年は待ってほしいんじゃが」
「爺さんや、こんな夜遅くに植木をいじってちゃ、危ないですよ」
「お、おばあちゃん……!!」
おばあちゃんも、最後にあった時から全然変わらない。穏やかで、とっても優しい雰囲気な人だ。
おばあちゃんは、とっても穏やかな性格な優しい人で、あたしに色々な食べ物を振舞うのが好きで、色々食べたせてもらった。特に手作りのおはぎや、納豆巻きが大好きなんだ。
……こんな形でずっと会えていなかった二人に会えるなんて、本当に嬉しくて、胸の奥と目頭が熱くなってきちゃった。
「婆さんは心配性じゃな。ところで、さっき俺を呼んだかね?」
「いや、呼んでませんよ?」
「そうか……誰かに呼ばれたような気がしたんじゃがな。それも、随分と懐かしい声じゃった」
「変な爺さんですねぇ。でも、私も実は、誰かがうちに来たような気がしたんですよ。それも、何故かとても嬉しい気がしてねぇ」
「もしかしたら、真琴がひょっこり遊びに来たのかもしれんぞ」
「まぁ、そうだったらこれほど嬉しいことはありませんねぇ」
「おじいちゃん……おばあちゃん……」
あたしの姿は見えてないし、声だって聞こえていないはずなのに、二人はあたしのことが、なんとなくわかってくれたんだ。えへへ、嬉しいなぁ……ぐすんっ。
「ところで、悠と芽衣はもう寝たんか?」
「ええ、もう部屋に戻って休んでますよ。さあ、私達も休みましょう」
「そうじゃな。俺達が起きていたら、あの子が二人に会いにくくなってしまうからの」
まるで、あたしがいるのがわかっているんじゃないかって勘違いしちゃうようなことを言いながら、おじいちゃんとおばあちゃんは、家の中に入っていった。それもご丁寧に、窓を少しだけ開けた状態で。
「…………」
あたしは、少しだけ庭にボーっと立ち尽くしてから、窓から中に――入ることはしないで、すぐ近くにある原っぱに来た。
この原っぱは、あたしがここに来ると、よく遊びに来ていた場所だ。ずっとママに苦しめられる生活をしていたあたしにとって、数少ない羽を伸ばせる場所だ。
「この時期なら、あれがあるはず……」
月明かりと星々の輝きを頼りに、暗い原っぱでとある物を探す。その探し物とは、あたしが好きで思い入れのあるものだ。
「あ、あった!」
探し始めてから間もなく、あたしは小さな白い花を見つけた。
この花は、どこにでも生えているような雑草の一種なんだけど、白くて小さいのが可愛くて、凄く好きなの。前に、おじいちゃんとおばあちゃんに、この花で作った花束を作ったことがある。
だいぶ簡易式のものにはなっちゃうだろうけど……この花で、花束を作って感謝を伝えたいの。
うん、わかってる。こんなことをしても無駄になるだろうし、こうしている間にも、あたしがここにいられる時間はどんどん減ってしまう。
それでも、あたしは二人に可愛がってもらったからさ……本当にもう二度と会えないかもしれないから、出来る間に感謝の気持ちを届けたかったの。
「これだけあればいいかな……」
本当はたくさん摘んでいきたかったけど、せっかく咲いた花を減らすのも申し訳ないと思い、最低限の量の花をいただいた。
その花を、あたしの髪を結っている髪留めでまとめることで、簡易的な花束が出来た。
あたしはその花束を両手で抱えて、家に戻ってくると、庭からこっそりと入り、おじいちゃんとおばあちゃんの寝室の前に置いた。
「おじいちゃん、おばあちゃん。本当にありがとう……」
寝室に繋がるふすまの前でお礼を言ったあたしは、物音を立てないように悠と芽衣のいる部屋を探す。
どの部屋にいるかは聞いてないけど、この家には何度も来たことがあるから、どの部屋を使ってるか、なんとなく予想できる。
「多分客間を使ってるんだと思うけど……ここだ」
このふすまを開ければ、ずっと会いたかった二人に会える。そう思うと、心臓が爆発しそうなくらい脈打ち、緊張で体が震える。
こんな所でドキドキしてても始まらない。あたしは家を決して、ふすまをそっと開けると……そこには、ずっと会いたかった弟妹が、布団の中で身を寄せ合って眠っていた。
これ、あたしの姿が見えてたら、完全に詰んでたよね? お金とか無いし、家に入るのも大変になってそうだしね。
「二人は大丈夫かな……」
ボーっとしていると、頭に余裕が出来て、変なことばかりを考えてしまう。会っても意味がないんじゃないかとか、二人は元気にしているのかとか。
とにかく頭の中がグルグル過ぎて、パンクしそうだ。
「はぁ……とりあえず到着までのんびりしよう」
あたしは窓から外を眺めながら、あたしの家族……悠と芽衣のことを思い出していた。
悠はとてもやんちゃで、走るのが好きだった。転んでしまうと大泣きするが、芽衣がいるとお兄ちゃんになって、泣くのを止めてたなぁ。
芽衣はとても臆病で引っ込み思案で、部屋の隅で一人で遊ぶような子だったけど、それを見かねた悠が絵本を持ってきて、一緒に読んでいる姿は、とても微笑ましかった。
……ダメだ、二人のことばかりが頭に浮かんで、気ばかりが焦ってしまう。
「早く着かないかな……」
人生で一番時間の流れが遅く感じながら、過去を思い出したり、心配したりを繰り返しているうちに、目的地である九州に到着した。
さらにここから一時間ほどバスに揺られ……辺りが真っ暗になった頃に、無事におばあちゃんが住む家に到着した。
それなりの田舎にあるおばあちゃんの家は、木造の一軒家だ。
前世のあたしは、仕事をするようになってからは、全然来れてなかったけど……記憶の中にある家と変わらない。とっても懐かしいな……。
「ふむ……ようやくこっちの花も咲いたようじゃな」
「あっ……! おじいちゃん!!」
家の庭では、仏頂面で植木をいじる男性――あたしのおじいちゃんの姿があった。
あたしのおじいちゃんは、アラン様みたいにあまり感情を表に出さないし、少し近寄りがたい雰囲気の人だけど、人一倍思いやりがあって優しい人だ。
あたしが遊びに来た時、なにをしても嫌な顔を一つしなかったし、おやつやおもちゃを買ってくれたのをよく覚えている。
そんなおじいちゃんに久しぶりに会ったことが嬉しくて、つい大きな声を出してしまったけど、やっぱりと言うべきか、おじいちゃんは何も反応をしなかった――と思ったら、キョトンとした顔で、あたしの方を向いた。
うそっ、もしかしてあたしの声が聞こえたの!? あたしの姿が見えてるの!?
「……? 今、誰かに呼ばれたような? やれやれ、俺にもついにお迎えが来たんかのぉ? あの子達のためにも、まだ死ぬわけにはいかんから、あと十年は待ってほしいんじゃが」
「爺さんや、こんな夜遅くに植木をいじってちゃ、危ないですよ」
「お、おばあちゃん……!!」
おばあちゃんも、最後にあった時から全然変わらない。穏やかで、とっても優しい雰囲気な人だ。
おばあちゃんは、とっても穏やかな性格な優しい人で、あたしに色々な食べ物を振舞うのが好きで、色々食べたせてもらった。特に手作りのおはぎや、納豆巻きが大好きなんだ。
……こんな形でずっと会えていなかった二人に会えるなんて、本当に嬉しくて、胸の奥と目頭が熱くなってきちゃった。
「婆さんは心配性じゃな。ところで、さっき俺を呼んだかね?」
「いや、呼んでませんよ?」
「そうか……誰かに呼ばれたような気がしたんじゃがな。それも、随分と懐かしい声じゃった」
「変な爺さんですねぇ。でも、私も実は、誰かがうちに来たような気がしたんですよ。それも、何故かとても嬉しい気がしてねぇ」
「もしかしたら、真琴がひょっこり遊びに来たのかもしれんぞ」
「まぁ、そうだったらこれほど嬉しいことはありませんねぇ」
「おじいちゃん……おばあちゃん……」
あたしの姿は見えてないし、声だって聞こえていないはずなのに、二人はあたしのことが、なんとなくわかってくれたんだ。えへへ、嬉しいなぁ……ぐすんっ。
「ところで、悠と芽衣はもう寝たんか?」
「ええ、もう部屋に戻って休んでますよ。さあ、私達も休みましょう」
「そうじゃな。俺達が起きていたら、あの子が二人に会いにくくなってしまうからの」
まるで、あたしがいるのがわかっているんじゃないかって勘違いしちゃうようなことを言いながら、おじいちゃんとおばあちゃんは、家の中に入っていった。それもご丁寧に、窓を少しだけ開けた状態で。
「…………」
あたしは、少しだけ庭にボーっと立ち尽くしてから、窓から中に――入ることはしないで、すぐ近くにある原っぱに来た。
この原っぱは、あたしがここに来ると、よく遊びに来ていた場所だ。ずっとママに苦しめられる生活をしていたあたしにとって、数少ない羽を伸ばせる場所だ。
「この時期なら、あれがあるはず……」
月明かりと星々の輝きを頼りに、暗い原っぱでとある物を探す。その探し物とは、あたしが好きで思い入れのあるものだ。
「あ、あった!」
探し始めてから間もなく、あたしは小さな白い花を見つけた。
この花は、どこにでも生えているような雑草の一種なんだけど、白くて小さいのが可愛くて、凄く好きなの。前に、おじいちゃんとおばあちゃんに、この花で作った花束を作ったことがある。
だいぶ簡易式のものにはなっちゃうだろうけど……この花で、花束を作って感謝を伝えたいの。
うん、わかってる。こんなことをしても無駄になるだろうし、こうしている間にも、あたしがここにいられる時間はどんどん減ってしまう。
それでも、あたしは二人に可愛がってもらったからさ……本当にもう二度と会えないかもしれないから、出来る間に感謝の気持ちを届けたかったの。
「これだけあればいいかな……」
本当はたくさん摘んでいきたかったけど、せっかく咲いた花を減らすのも申し訳ないと思い、最低限の量の花をいただいた。
その花を、あたしの髪を結っている髪留めでまとめることで、簡易的な花束が出来た。
あたしはその花束を両手で抱えて、家に戻ってくると、庭からこっそりと入り、おじいちゃんとおばあちゃんの寝室の前に置いた。
「おじいちゃん、おばあちゃん。本当にありがとう……」
寝室に繋がるふすまの前でお礼を言ったあたしは、物音を立てないように悠と芽衣のいる部屋を探す。
どの部屋にいるかは聞いてないけど、この家には何度も来たことがあるから、どの部屋を使ってるか、なんとなく予想できる。
「多分客間を使ってるんだと思うけど……ここだ」
このふすまを開ければ、ずっと会いたかった二人に会える。そう思うと、心臓が爆発しそうなくらい脈打ち、緊張で体が震える。
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