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第十八話 初めてのお友達
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事情を使者の方に説明をし、リズの同行の許可を貰った私は、同じ馬車に乗って、再びソリアン国へと進んでいく。
その道中、リズはずっとニコニコしながら、私のことを見つめたり、窓から外を眺めて過ごしていた。
「リズ、随分と嬉しそうですわね」
「はいっ! これからセリア様が、あんな場所を離れて過ごせるのが嬉しいですし、恩返ししなきゃって張り切っちゃって! もちろん不安もありますけど、セリア様となら、きっと乗り越えて楽しく過ごせると思うんです!」
楽しそうに流暢に話すリズを見ていると、私も自然と笑顔になる。
初めて彼女に気づき、話をした時はもっと内気な方だと思っていたけど、こうして話してみると、とても明るくて素敵な女性というのがわかる。散々酷い方々を見て育ってきた私には、まるで太陽のように見える。
「まあ、あんな偉そうなことを言って、無理やりついてきちゃいましたけど……私みたいな人間が、どれだけお役に立てるのかって思うと、ちょっぴり不安になっちゃいます」
「あなた、よく自分のことを卑下するようなことを仰っておりますが、その必要はございませんわ。あなたはとても素晴らしい人間ですのよ?」
「わ、わたしが!? そんな、大げさですよ! もっと凄い人なら、セリア様をすぐにササッと助けてますよ!」
「早さなんて、関係ございません。全て私が悪い、私が悪という空気の中、それはおかしいと思い、行動に移してくれたのが、なによりも嬉しいのです」
「セリア様に、そんな優しい言葉をかけられたら……わたし、嬉しくて涙が止まらなくなっちゃいますぅ……!」
「ちょっ、あなたこそ大げさではありませんこと?」
人前なのに遠慮なくリズの涙を拭くためにハンカチを出そうとしたが、先程リズの汗を拭うのに汚れてしまっている。いくら本人のとはいえ、汚れているハンカチで拭くのは失礼と思い、手で涙を拭ってあげた。
「ずびっ……ありがとうございます」
「どういたしまして」
「セリア様。もう間もなく国境に到着いたします。話は通しておりますが、兵士に何か聞かれた際は、ご対応のほどお願いいたします」
「わかりました」
国境って、どんな感じなのかしら。私、生まれてこの方、カルネシアラ国を出たことがないから、とても気になる。窓から確認してみよう。
「わあ、大きい建物……それも、凄く横に長いですわ」
「本当に長いですね! これも、両国が戦争をしていた名残なのでしょうか?」
「きっとそうでしょうね」
もう一つ窓はあるのだから、そこから確認をすればいいのに、私と同じ窓から確認をするリズに、私は頷いて見せた。
国境沿いは、言ってしまえば戦争時は最前線になる場所なのだから、これだけ立派なものになるのは、必然なのだろう。
「あっ、止まりましたね。何か確認をしてるのでしょうか?」
「手続きとかをしているのかもしれませんわね。国境を超えるには、相応の手順が必要ですからね」
「失礼します。セリア・カルネシアラ様と、同伴のリズ様ですね」
「はい。私がセリア・カルネシアラですわ。そして彼女が、同伴のリズです」
「お話は伺っております。城で我らが主がお待ちです。このまま馬車でおくつろぎくださいませ」
本来なら、国境を超えるには身分証明や持ち物検査が行われるが、どうやら今回はその必要は無いようだ。他の方はしているようだから、恐らく私達は特例だろう。
それにしても、あの方の紳士的な対応……やっぱり、とても野蛮な人達には見えない。
「なんていうか……優しい人達でしたね? わたし、お話に出てくる、バケモノみたいな人達を想像していたのですけど……」
「さすがにそれは、飛躍しすぎ……と言いたいところですが、私もソリアン国の方々は、恐ろしい人達と聞いていたので、驚いておりますわ」
話が外に聞こえないように、ヒソヒソと話していると、馬車が再び動き出した。
ついに、人生で初めての外国だ。何か特別なことがあるというわけではないけど、ソワソワするというか、落ち着かないのは何故だろうか。
「外国と言っても、至って普通の自然というか、祖国とあまり変わらない感じですね。もっとこう、マグマがそこら中から噴き出てるとか、吹雪で一面雪景色とか、そんなのを想像してました」
「ふふっ、リズったら。さすがにそれは冒険物の小説を読み過ぎではなくて?」
「えへへ、冗談ですよ~。いくらなんでも、そこまで違うなんて、思ってませんよ!」
こうして笑いながらお喋りをしていると、まるでお友達を楽しく遊んでいるかのようだ。
私の人生で出来たお友達は、みんなぬいぐるみばかりだったから……こういうの、密かに憧れていたの。
「あっ……やだ、わたしったら。相手はセリア様なのに、つい楽しくて友達と話しているような感覚になっていました!」
「まあ、それは奇遇ね。私も、お友達とおしゃべりするのって、こんな感じなのかって思ってたところですのよ。そうだ! あなたが良ければ、私とお友達になってくださらない?」
「え、えぇぇぇ!? わわ、わたしがセリア様の!? いくらなんでも、それは恐れ多いといいますか!」
「そう……ダメ、ですのね」
そうよね。いきなりこんなことを言われたら、困ってしまうに決まっている。私ったら、家族に復讐したり、国を出れたからって、浮かれすぎていたわ。
「そ、そんな悲しいお顔をしないでください! 全然嫌じゃないんです! 凄く嬉しくて、光栄なんですけど、わたしのような、ただの使用人がお友達なんて、本当に良いのかって思って!」
「ええ、私があなたが良いのです。私の、初めてのお友達になってくださりませんか?」
「セリア様……えへっ、わたしでよければ、よろこんで!」
私達は、お互いの手を握り合いながら、顔をあげると、同時にクスッと笑っていた。
こんなに心が穏やかで、暖かい気持ちになったのはいつぶりだろう。リズには、本当に感謝しなくては。
でも……同時に、絶対にソリアン国という恐ろしい国の毒牙にかからないように、しっかりリズを守らないとね。
その道中、リズはずっとニコニコしながら、私のことを見つめたり、窓から外を眺めて過ごしていた。
「リズ、随分と嬉しそうですわね」
「はいっ! これからセリア様が、あんな場所を離れて過ごせるのが嬉しいですし、恩返ししなきゃって張り切っちゃって! もちろん不安もありますけど、セリア様となら、きっと乗り越えて楽しく過ごせると思うんです!」
楽しそうに流暢に話すリズを見ていると、私も自然と笑顔になる。
初めて彼女に気づき、話をした時はもっと内気な方だと思っていたけど、こうして話してみると、とても明るくて素敵な女性というのがわかる。散々酷い方々を見て育ってきた私には、まるで太陽のように見える。
「まあ、あんな偉そうなことを言って、無理やりついてきちゃいましたけど……私みたいな人間が、どれだけお役に立てるのかって思うと、ちょっぴり不安になっちゃいます」
「あなた、よく自分のことを卑下するようなことを仰っておりますが、その必要はございませんわ。あなたはとても素晴らしい人間ですのよ?」
「わ、わたしが!? そんな、大げさですよ! もっと凄い人なら、セリア様をすぐにササッと助けてますよ!」
「早さなんて、関係ございません。全て私が悪い、私が悪という空気の中、それはおかしいと思い、行動に移してくれたのが、なによりも嬉しいのです」
「セリア様に、そんな優しい言葉をかけられたら……わたし、嬉しくて涙が止まらなくなっちゃいますぅ……!」
「ちょっ、あなたこそ大げさではありませんこと?」
人前なのに遠慮なくリズの涙を拭くためにハンカチを出そうとしたが、先程リズの汗を拭うのに汚れてしまっている。いくら本人のとはいえ、汚れているハンカチで拭くのは失礼と思い、手で涙を拭ってあげた。
「ずびっ……ありがとうございます」
「どういたしまして」
「セリア様。もう間もなく国境に到着いたします。話は通しておりますが、兵士に何か聞かれた際は、ご対応のほどお願いいたします」
「わかりました」
国境って、どんな感じなのかしら。私、生まれてこの方、カルネシアラ国を出たことがないから、とても気になる。窓から確認してみよう。
「わあ、大きい建物……それも、凄く横に長いですわ」
「本当に長いですね! これも、両国が戦争をしていた名残なのでしょうか?」
「きっとそうでしょうね」
もう一つ窓はあるのだから、そこから確認をすればいいのに、私と同じ窓から確認をするリズに、私は頷いて見せた。
国境沿いは、言ってしまえば戦争時は最前線になる場所なのだから、これだけ立派なものになるのは、必然なのだろう。
「あっ、止まりましたね。何か確認をしてるのでしょうか?」
「手続きとかをしているのかもしれませんわね。国境を超えるには、相応の手順が必要ですからね」
「失礼します。セリア・カルネシアラ様と、同伴のリズ様ですね」
「はい。私がセリア・カルネシアラですわ。そして彼女が、同伴のリズです」
「お話は伺っております。城で我らが主がお待ちです。このまま馬車でおくつろぎくださいませ」
本来なら、国境を超えるには身分証明や持ち物検査が行われるが、どうやら今回はその必要は無いようだ。他の方はしているようだから、恐らく私達は特例だろう。
それにしても、あの方の紳士的な対応……やっぱり、とても野蛮な人達には見えない。
「なんていうか……優しい人達でしたね? わたし、お話に出てくる、バケモノみたいな人達を想像していたのですけど……」
「さすがにそれは、飛躍しすぎ……と言いたいところですが、私もソリアン国の方々は、恐ろしい人達と聞いていたので、驚いておりますわ」
話が外に聞こえないように、ヒソヒソと話していると、馬車が再び動き出した。
ついに、人生で初めての外国だ。何か特別なことがあるというわけではないけど、ソワソワするというか、落ち着かないのは何故だろうか。
「外国と言っても、至って普通の自然というか、祖国とあまり変わらない感じですね。もっとこう、マグマがそこら中から噴き出てるとか、吹雪で一面雪景色とか、そんなのを想像してました」
「ふふっ、リズったら。さすがにそれは冒険物の小説を読み過ぎではなくて?」
「えへへ、冗談ですよ~。いくらなんでも、そこまで違うなんて、思ってませんよ!」
こうして笑いながらお喋りをしていると、まるでお友達を楽しく遊んでいるかのようだ。
私の人生で出来たお友達は、みんなぬいぐるみばかりだったから……こういうの、密かに憧れていたの。
「あっ……やだ、わたしったら。相手はセリア様なのに、つい楽しくて友達と話しているような感覚になっていました!」
「まあ、それは奇遇ね。私も、お友達とおしゃべりするのって、こんな感じなのかって思ってたところですのよ。そうだ! あなたが良ければ、私とお友達になってくださらない?」
「え、えぇぇぇ!? わわ、わたしがセリア様の!? いくらなんでも、それは恐れ多いといいますか!」
「そう……ダメ、ですのね」
そうよね。いきなりこんなことを言われたら、困ってしまうに決まっている。私ったら、家族に復讐したり、国を出れたからって、浮かれすぎていたわ。
「そ、そんな悲しいお顔をしないでください! 全然嫌じゃないんです! 凄く嬉しくて、光栄なんですけど、わたしのような、ただの使用人がお友達なんて、本当に良いのかって思って!」
「ええ、私があなたが良いのです。私の、初めてのお友達になってくださりませんか?」
「セリア様……えへっ、わたしでよければ、よろこんで!」
私達は、お互いの手を握り合いながら、顔をあげると、同時にクスッと笑っていた。
こんなに心が穏やかで、暖かい気持ちになったのはいつぶりだろう。リズには、本当に感謝しなくては。
でも……同時に、絶対にソリアン国という恐ろしい国の毒牙にかからないように、しっかりリズを守らないとね。
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