魔王様は転生王女を溺愛したい

みおな

文字の大きさ
1 / 45

転生王女の目覚め

しおりを挟む
「エリザベス第1王女殿下。なぜ私のベッドで寝ていらっしゃるのですか」

 私は、自分の隣で眠る金髪美少女を見て、大きくため息をついた。

「酷いわっ!第1王女殿下だなんて。可愛いローゼ、いつものようにお姉様と呼んでちょうだい」

「エリザベス、何度言えばベッドに無断で入るのをやめていただけるのですか?」

 そう。
これは今日初めての会話ではない。ここ数日、毎日繰り返されているものだ。
 そして、この後の・・・

「可愛いローゼ!!」

 突然、ドアが開く。

「カイルお兄様。妹とはいえ、淑女の部屋に無断で立ち入るのはいかがなものでしょうか。それから、ルヒトお兄様、ちゃんとカイルお兄様を止めてください」

「「ごめん」」

 気弱な声と、元気いっぱいの声が、重なる。

「私は着替えますから、さっさと出て行ってくださいませ」

「ローゼ・・・怒ってる?」

「私、今朝はパンケーキが食べたい気分ですわ。ああ、それと、お庭の薔薇がお部屋に飾られたら素敵でしょうね」

「「言ってくる!!」」

 しゅんとしていた兄達は、慌てて部屋から飛び出して行った。私は再び、ため息をつく。

「お姉様もお部屋へお戻り下さい。今日はお揃いの水色のドレスにしましょうか」

「ええ!可愛いローゼ」

 私の言葉に、姉もベッドから飛び降りて、部屋から飛び出して行く。姉付きの侍女が部屋の入口で私に頭を下げていた。
 毎日、毎日、申し訳ないことである。

 そう。毎日なのだ。ベッドの隣に姉が寝ているところから、兄達が乱入してきて、追い出されるまで。そこまでがセットで毎日繰り返される。

 私も、自分付きの侍女ミアに水色のドレスの準備を頼む。



 私の名は、ローズマリー・サフィロス。
 サフィロス王家の第2王女で、今年12歳の誕生日を迎える。
 父親譲りの銀髪に、王家の証である金の瞳、白磁の肌に、桜色の唇、まぁ、俗に言う美少女である。

 最初に鏡を見たときは、思わず2度見してしまった。それが、自分の姿だと信じられなくて。

 そう。私はローズマリーとして生まれたわけではない。

 私は、小山麻里という、極々普通の29歳のOLだった。
 最後の記憶は、トラックのライトの眩しさと、甲高いブレーキの音。それから察するに、私は車に跳ねられたのだろう。

 目が覚めたとき、私は混乱した。それはそうだろう。
 伸ばした手は小さく、29歳の自分のものではない。鏡に映った姿は、平凡なアラサーのものではない。

 混乱した私を落ち着けてくれたのは、頭の中に語りかけてきた《ローズマリー》の声だった。
 まぁ、それも最初は驚いて、自分が気が狂ったのかと思ったけど。

 《ローズマリー》は、
 私が前世で命を落としたこと。
 自分が、呪いをかけられ、このまま命を落とすところだったこと。
 そして、それの対抗手段として、禁呪である転生者の召喚をしたこと。
 それが私で、私の召喚により呪いを弾き飛ばしたことを語ってくれた。

 はっきり言って、ラノベの世界である。
 転生とか、召喚とか、まともな神経の一般庶民が受け入れられる話ではない。夢オチがいいところだ。

 でも、私にそれは許されなかった。
《ローズマリー》が私の中から、消えるから。
 禁呪の影響らしい。

 自分が消えても、ローズマリーの存在を残したかった理由を話した彼女は、ごめんねと残して、私の中から消えていった。

 そして、私はローズマリーとして生きることになったのだ。
 私に全てを託して消えていった《ローズマリー》のためにも、前世で死んだ麻里のためにも、私は生きなくてはいけない。
 ああ、ちなみに、《ローズマリー》に呪いをかけた相手は、転生の影響で、呪い返しにあったらしい。
 黒幕はともかく、実行犯は倒せたというところだろう。

 そうー
黒幕がいるはずだ。王女に呪いをかけるような阿呆が、ただのペーペーなわけがない。

 私は。
必ず、生き延びてみせる。
 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

2度目の結婚は貴方と

朧霧
恋愛
 前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか? 魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。 重複投稿作品です。(小説家になろう)

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

処理中です...