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転生王女の目覚め
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「エリザベス第1王女殿下。なぜ私のベッドで寝ていらっしゃるのですか」
私は、自分の隣で眠る金髪美少女を見て、大きくため息をついた。
「酷いわっ!第1王女殿下だなんて。可愛いローゼ、いつものようにお姉様と呼んでちょうだい」
「エリザベスお姉様、何度言えばベッドに無断で入るのをやめていただけるのですか?」
そう。
これは今日初めての会話ではない。ここ数日、毎日繰り返されているものだ。
そして、この後の・・・
「可愛いローゼ!!」
突然、ドアが開く。
「カイルお兄様。妹とはいえ、淑女の部屋に無断で立ち入るのはいかがなものでしょうか。それから、ルヒトお兄様、ちゃんとカイルお兄様を止めてください」
「「ごめん」」
気弱な声と、元気いっぱいの声が、重なる。
「私は着替えますから、さっさと出て行ってくださいませ」
「ローゼ・・・怒ってる?」
「私、今朝はパンケーキが食べたい気分ですわ。ああ、それと、お庭の薔薇がお部屋に飾られたら素敵でしょうね」
「「言ってくる!!」」
しゅんとしていた兄達は、慌てて部屋から飛び出して行った。私は再び、ため息をつく。
「お姉様もお部屋へお戻り下さい。今日はお揃いの水色のドレスにしましょうか」
「ええ!可愛いローゼ」
私の言葉に、姉もベッドから飛び降りて、部屋から飛び出して行く。姉付きの侍女が部屋の入口で私に頭を下げていた。
毎日、毎日、申し訳ないことである。
そう。毎日なのだ。ベッドの隣に姉が寝ているところから、兄達が乱入してきて、追い出されるまで。そこまでがセットで毎日繰り返される。
私も、自分付きの侍女ミアに水色のドレスの準備を頼む。
私の名は、ローズマリー・サフィロス。
サフィロス王家の第2王女で、今年12歳の誕生日を迎える。
父親譲りの銀髪に、王家の証である金の瞳、白磁の肌に、桜色の唇、まぁ、俗に言う美少女である。
最初に鏡を見たときは、思わず2度見してしまった。それが、自分の姿だと信じられなくて。
そう。私はローズマリーとして生まれたわけではない。
私は、小山麻里という、極々普通の29歳のOLだった。
最後の記憶は、トラックのライトの眩しさと、甲高いブレーキの音。それから察するに、私は車に跳ねられたのだろう。
目が覚めたとき、私は混乱した。それはそうだろう。
伸ばした手は小さく、29歳の自分のものではない。鏡に映った姿は、平凡なアラサーのものではない。
混乱した私を落ち着けてくれたのは、頭の中に語りかけてきた《ローズマリー》の声だった。
まぁ、それも最初は驚いて、自分が気が狂ったのかと思ったけど。
《ローズマリー》は、
私が前世で命を落としたこと。
自分が、呪いをかけられ、このまま命を落とすところだったこと。
そして、それの対抗手段として、禁呪である転生者の召喚をしたこと。
それが私で、私の召喚により呪いを弾き飛ばしたことを語ってくれた。
はっきり言って、ラノベの世界である。
転生とか、召喚とか、まともな神経の一般庶民が受け入れられる話ではない。夢オチがいいところだ。
でも、私にそれは許されなかった。
《ローズマリー》が私の中から、消えるから。
禁呪の影響らしい。
自分が消えても、ローズマリーの存在を残したかった理由を話した彼女は、ごめんねと残して、私の中から消えていった。
そして、私はローズマリーとして生きることになったのだ。
私に全てを託して消えていった《ローズマリー》のためにも、前世で死んだ麻里のためにも、私は生きなくてはいけない。
ああ、ちなみに、《ローズマリー》に呪いをかけた相手は、転生の影響で、呪い返しにあったらしい。
黒幕はともかく、実行犯は倒せたというところだろう。
そうー
黒幕がいるはずだ。王女に呪いをかけるような阿呆が、ただのペーペーなわけがない。
私は。
必ず、生き延びてみせる。
私は、自分の隣で眠る金髪美少女を見て、大きくため息をついた。
「酷いわっ!第1王女殿下だなんて。可愛いローゼ、いつものようにお姉様と呼んでちょうだい」
「エリザベスお姉様、何度言えばベッドに無断で入るのをやめていただけるのですか?」
そう。
これは今日初めての会話ではない。ここ数日、毎日繰り返されているものだ。
そして、この後の・・・
「可愛いローゼ!!」
突然、ドアが開く。
「カイルお兄様。妹とはいえ、淑女の部屋に無断で立ち入るのはいかがなものでしょうか。それから、ルヒトお兄様、ちゃんとカイルお兄様を止めてください」
「「ごめん」」
気弱な声と、元気いっぱいの声が、重なる。
「私は着替えますから、さっさと出て行ってくださいませ」
「ローゼ・・・怒ってる?」
「私、今朝はパンケーキが食べたい気分ですわ。ああ、それと、お庭の薔薇がお部屋に飾られたら素敵でしょうね」
「「言ってくる!!」」
しゅんとしていた兄達は、慌てて部屋から飛び出して行った。私は再び、ため息をつく。
「お姉様もお部屋へお戻り下さい。今日はお揃いの水色のドレスにしましょうか」
「ええ!可愛いローゼ」
私の言葉に、姉もベッドから飛び降りて、部屋から飛び出して行く。姉付きの侍女が部屋の入口で私に頭を下げていた。
毎日、毎日、申し訳ないことである。
そう。毎日なのだ。ベッドの隣に姉が寝ているところから、兄達が乱入してきて、追い出されるまで。そこまでがセットで毎日繰り返される。
私も、自分付きの侍女ミアに水色のドレスの準備を頼む。
私の名は、ローズマリー・サフィロス。
サフィロス王家の第2王女で、今年12歳の誕生日を迎える。
父親譲りの銀髪に、王家の証である金の瞳、白磁の肌に、桜色の唇、まぁ、俗に言う美少女である。
最初に鏡を見たときは、思わず2度見してしまった。それが、自分の姿だと信じられなくて。
そう。私はローズマリーとして生まれたわけではない。
私は、小山麻里という、極々普通の29歳のOLだった。
最後の記憶は、トラックのライトの眩しさと、甲高いブレーキの音。それから察するに、私は車に跳ねられたのだろう。
目が覚めたとき、私は混乱した。それはそうだろう。
伸ばした手は小さく、29歳の自分のものではない。鏡に映った姿は、平凡なアラサーのものではない。
混乱した私を落ち着けてくれたのは、頭の中に語りかけてきた《ローズマリー》の声だった。
まぁ、それも最初は驚いて、自分が気が狂ったのかと思ったけど。
《ローズマリー》は、
私が前世で命を落としたこと。
自分が、呪いをかけられ、このまま命を落とすところだったこと。
そして、それの対抗手段として、禁呪である転生者の召喚をしたこと。
それが私で、私の召喚により呪いを弾き飛ばしたことを語ってくれた。
はっきり言って、ラノベの世界である。
転生とか、召喚とか、まともな神経の一般庶民が受け入れられる話ではない。夢オチがいいところだ。
でも、私にそれは許されなかった。
《ローズマリー》が私の中から、消えるから。
禁呪の影響らしい。
自分が消えても、ローズマリーの存在を残したかった理由を話した彼女は、ごめんねと残して、私の中から消えていった。
そして、私はローズマリーとして生きることになったのだ。
私に全てを託して消えていった《ローズマリー》のためにも、前世で死んだ麻里のためにも、私は生きなくてはいけない。
ああ、ちなみに、《ローズマリー》に呪いをかけた相手は、転生の影響で、呪い返しにあったらしい。
黒幕はともかく、実行犯は倒せたというところだろう。
そうー
黒幕がいるはずだ。王女に呪いをかけるような阿呆が、ただのペーペーなわけがない。
私は。
必ず、生き延びてみせる。
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