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転生王女の誕生日
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私の誕生日当日。
私は王族専用の入口で、お兄様方とその合図を待っていた。
広間では、華やかな衣装に身を包んだ貴族たちが談笑しながら、私たちの登場を待っている。
楽団の合図のあと、国王陛下、王妃、王太子殿下の順で入場し、末の娘の私は最後に入ることになる。そして、陛下のお言葉のあと、誕生日に集まってくれた人々に礼を述べる。
私は、頭の中で礼の言葉を復唱した。
ローズマリーとして転生して、国王陛下である父様や、お兄様方、世話をしてくれる侍女たちとの接触には慣れたものの、他の貴族と会うのは初めてである。
私の転生事情を知っている父様に、貴族図鑑なるものを借りて、主な貴族の特徴は必死になって覚え込んだが、正直不安しかない。
顔に不安が現れていたのだろう。父様がチラリとこちらを見て、フン、と鼻を鳴らす。
「辛気臭い顔だな。誕生日くらいにこやかにしたらどうだ」
「・・・そうですね。表情筋が死んでるのは、父様似なのかもしれませんね」
誕生日の娘に対して、辛気臭いって。本当、この人は愛情表現が下手だ。おそらくは、緊張するなと言いたいんだろう。
これ、29歳の麻里の記憶がある私だから分かるけど、12歳のローズマリーにはわからないわよ。嫌われてるって思われると思う。
現に、お兄様たちは渋い顔だ。彼らはローズマリーを溺愛してるからね。
「言い返せる元気はあるようだな」
「お気遣いいただきまして」
「別に気遣っておらん」
「さようで」
私は、週に1度のペースで父様の執務室を訪れている関係で、父様に対して別段なんの緊張もしなくなっていた。
転生事情を知ってると分かった時に、ローズマリーへの愛情を知ったことも関係しているかもしれない。
気安い会話を交わす私たちを、お兄様たちは唖然と見つめていた。あら?私、何かやらかしたかしら?だが、私が何かを言おうと口を開く前に、楽団の合図が鳴り響いた。
入場して、目に入ってきた世界は、あまりにも煌びやかだった。
男性はともかく、女性の方々の華やかで色とりどりのドレス。宝飾品がシャンデリアに煌き、広間一面を照らし出している。
め、目がチカチカする。
第一印象がそれなのだから、麻里がどれだけ庶民だったかが、分かるというものだ。
私が、圧倒されているうちに、父様とルヒトお兄様の挨拶が終わったみたいだ。次は、本日の主役たる私の番である。
前世が社会人だったし、挨拶くらいは出来るけど、さすがにこれだけの人間の注目を浴びると、緊張する。
「今日は、私ローズマリーの誕生の祝いに集まっていただき、ありがとうございます。サフィロス王国と、国民皆様の繁栄を心より望みます」
私の挨拶に、わぁっと歓声が上がる。概ね好意的に受け取られたみたいだ。
小さく息を吐く。
12歳といえど、私は第2王女である。この広間に集った人たちより身分が上なのだ。
あまり、遜った物言いをするものではないとは分かっているものの、庶民だった身としては緊張するのもやむ得ないだろう。
これから、招待者からのお祝いの言葉を受けなければならない。
サフィロス王国の公爵家を筆頭に、他国の王族たち。お祝いの品は前持って贈られているので、挨拶だけとはいえ、相当な人数だ。
そろそろ貼り付けた笑顔も品切れになりそうな頃、その人物は訪れた。
「アイリス王女殿下、誕生の祝いを申し上げる。クリムゾン魔国、アルフレッド・フォン・グランツィートだ」
私は王族専用の入口で、お兄様方とその合図を待っていた。
広間では、華やかな衣装に身を包んだ貴族たちが談笑しながら、私たちの登場を待っている。
楽団の合図のあと、国王陛下、王妃、王太子殿下の順で入場し、末の娘の私は最後に入ることになる。そして、陛下のお言葉のあと、誕生日に集まってくれた人々に礼を述べる。
私は、頭の中で礼の言葉を復唱した。
ローズマリーとして転生して、国王陛下である父様や、お兄様方、世話をしてくれる侍女たちとの接触には慣れたものの、他の貴族と会うのは初めてである。
私の転生事情を知っている父様に、貴族図鑑なるものを借りて、主な貴族の特徴は必死になって覚え込んだが、正直不安しかない。
顔に不安が現れていたのだろう。父様がチラリとこちらを見て、フン、と鼻を鳴らす。
「辛気臭い顔だな。誕生日くらいにこやかにしたらどうだ」
「・・・そうですね。表情筋が死んでるのは、父様似なのかもしれませんね」
誕生日の娘に対して、辛気臭いって。本当、この人は愛情表現が下手だ。おそらくは、緊張するなと言いたいんだろう。
これ、29歳の麻里の記憶がある私だから分かるけど、12歳のローズマリーにはわからないわよ。嫌われてるって思われると思う。
現に、お兄様たちは渋い顔だ。彼らはローズマリーを溺愛してるからね。
「言い返せる元気はあるようだな」
「お気遣いいただきまして」
「別に気遣っておらん」
「さようで」
私は、週に1度のペースで父様の執務室を訪れている関係で、父様に対して別段なんの緊張もしなくなっていた。
転生事情を知ってると分かった時に、ローズマリーへの愛情を知ったことも関係しているかもしれない。
気安い会話を交わす私たちを、お兄様たちは唖然と見つめていた。あら?私、何かやらかしたかしら?だが、私が何かを言おうと口を開く前に、楽団の合図が鳴り響いた。
入場して、目に入ってきた世界は、あまりにも煌びやかだった。
男性はともかく、女性の方々の華やかで色とりどりのドレス。宝飾品がシャンデリアに煌き、広間一面を照らし出している。
め、目がチカチカする。
第一印象がそれなのだから、麻里がどれだけ庶民だったかが、分かるというものだ。
私が、圧倒されているうちに、父様とルヒトお兄様の挨拶が終わったみたいだ。次は、本日の主役たる私の番である。
前世が社会人だったし、挨拶くらいは出来るけど、さすがにこれだけの人間の注目を浴びると、緊張する。
「今日は、私ローズマリーの誕生の祝いに集まっていただき、ありがとうございます。サフィロス王国と、国民皆様の繁栄を心より望みます」
私の挨拶に、わぁっと歓声が上がる。概ね好意的に受け取られたみたいだ。
小さく息を吐く。
12歳といえど、私は第2王女である。この広間に集った人たちより身分が上なのだ。
あまり、遜った物言いをするものではないとは分かっているものの、庶民だった身としては緊張するのもやむ得ないだろう。
これから、招待者からのお祝いの言葉を受けなければならない。
サフィロス王国の公爵家を筆頭に、他国の王族たち。お祝いの品は前持って贈られているので、挨拶だけとはいえ、相当な人数だ。
そろそろ貼り付けた笑顔も品切れになりそうな頃、その人物は訪れた。
「アイリス王女殿下、誕生の祝いを申し上げる。クリムゾン魔国、アルフレッド・フォン・グランツィートだ」
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