魔王様は転生王女を溺愛したい

みおな

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転生王女の告白3

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「しかし、呪い返しか」

 我が主が、その麗しい顔に手をやりながら呟く。
 魔国クリムゾンの国王である魔王陛下アルフレッド様は、愛しい婚約者殿の告白に思うところがあるようだ。

 このサフィロス王国の第2王女殿下ローズマリー様は、国王陛下に諸々の報告に行っている。

 膝の上から下ろすとき、我が主は大層寂しそうにされていた。
 私が何度進言しても、全く婚約どころか異性に興味を持たなかった我が主が、初めて興味を持った相手が人間というのは、少々問題がなくもないが、その程度の問題は主が押さえ込むだろう。

 そんなことよりも、我が主の寵愛を受ける婚約者殿に、危害を加えようとする者をどうにかする方が重要案件だ。

「我が君、アルフレッド魔王陛下。私にお任せを」

「ああ。我が愛しのローゼに危害を加えようとした愚か者をあぶりだせ」

 私は恭しく一礼すると、その場から転移した。



「あら?フレイ様はいらっしゃらないのですか?」

 私が、父様への報告から戻ると、部屋にはアルフレッド様しかいなかった。
 長い足を組んで、頬杖をついていたアルフレッド様は、私の問いにムッとした顔をする。

「我が愛しのローゼ、貴女の口から他の男の名前を聞くのは許しがたい」

「・・・アルフレッド様の側近の方でしょう?」

「僕を余り嫉妬させないで欲しい」

 わたしが驚いて目を見張ると、アルフレッド様は少し拗ねたような顔をされた。
 手を引かれて、そのまま逆らわずにその膝に座る。

「嫉妬して下さったの?」

「愛しいローゼ、どうして嬉しそうなのかな?」

「だって、私を好きだから、嫉妬して下さったのでしょう?お兄様方もアルフレッド様に嫉妬していらっしゃったもの」

 クスクス笑いながら、そう告げると、アルフレッド様もその表情を和らげる。

「我が婚約者殿には敵わないな。フレイには、呪いをかけた人間の炙り出しを命じたから、しばらくは席を外す」

「まぁ。早速動いて下さったのですね。ありがとうございます」

 にっこりと笑って礼を述べると、アルフレッド様はとても満足したように、その麗しいお顔をほころばせた。

「フレイに任せておけば問題ない。それより、それは何?」

「わ、私の作ったお菓子ですわ。召し上がっていただこうと思って」

 昨日作ったパウンドケーキを入れた籠を差し出す。
 誕生日以降、常にアルフレッド様が一緒にいるから、お菓子作りは夕食後の僅かな時間でしか出来なかった。

 ああ、もちろん、勉強の時間や公務の時は別行動だけど。とにかくそれ以外の昼間は一緒に居たがるのだ。

 おかげで、お兄様たちの嫉妬が物凄くて、治っていた朝の突撃が再燃していた。最近は、ルヒトお兄様までカイルお兄様と同じようにしてくるし。
 ・・・お兄様たちの私への溺愛はわかっているから、今まで通り文句を言うだけで我慢してるけどね。
 アルフレッド様にバレたら、物凄く面倒なことになりそうなのよね。

 籠を受け取ったアルフレッド様は、中のパウンドケーキを興味深そうに眺めている。

「もしかして甘いものはお嫌いでしたか?」

 あれ?お茶菓子食べてたからと思ったけど。

「いや、そんなことはないが・・・」

 珍しく歯切れが悪いわね。魔王であるアルフレッド様は、毒を摂取しても大丈夫って言ってたから毒味もいらないし。
 それに毒が入ってたら匂いでわかるそうだ。アルフレッド様がいれば、温かい食事が取れそう。

「愛しいローゼの手作りなど、もったいなくて食べれない」

「た、食べて下さいませ。傷んでしまいますわ。また作りますから!」

 そっちですか!そういえば、お兄様たちもそうだったわ。
 私は籠からひとつ取り出すと、アルフレッド様のお口へと差し出した。
 お兄様たちはこれで食べたから・・・は、恥ずかしいけど、婚約者だしいいわよね。

 アルフレッド様は、私の顔と差し出されたパウンドケーキを交互に見て、その麗しいお顔を赤く染めた。

「!!」

「愛しいローゼ、そのような可愛らしいことをされると、抑えが効かなくなってしまう」

 アルフレッド様は、私の手首を掴んでパウンドケーキを口に運ぶ。そして、そのまま私の指までペロリと舐めあげた。

「!!!!!」

「ああ、ローゼは指まで甘いね」

 甘いわけありません!それ、パウンドケーキ持ってたからだから!

 私はおそらく真っ赤であろう、熱のこもった顔を伏せると、舐められた手を胸元に引き寄せた。
 だ、ダメだわ。ストッパーのフレイ様がいないと。
 嬉しそうな笑顔のアルフレッド様を見ながら、私は諦めてため息をついたのだった。
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