嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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逃げ場所

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「体調が悪かったんだって?言ってくれれば良かったのに。大丈夫かい?ジュエル」

 気遣わしげに微笑みながら、婚約者であるシリウス・ローゼン王太子殿下が私に近付いて来る。

 私の名前は、ジュエル・リビエラ。
リビエラ伯爵の次女で、ローゼン王国の王太子殿下の婚約者だ。

 煌びやかな金髪にサファイアのような青い瞳。
 絵に描いた王子様のようなシリウス殿下。

 誰もが羨ましそうに、殿下に気遣われる私を見ている。

 ここは、ローゼン王国の王立学園。

 学園には、ローゼン王国に住む貴族の令息令嬢は必ず通わなければならない。

 それは王族であるシリウス殿下も例外ではなく、今年から学園に通っている。

 学園でのクラス分けは身分によって分かれていて、王族から伯爵家までが同じクラスとなっている。

 入学当時は・・・

 婚約者であるシリウス殿下と同じクラスなことが、とても嬉しかった。

 だけど、今は・・・

「ご心配をおかけしました」

「大切な婚約者のことを、心配するのは当然だよ。まだ顔色が悪い」

「ッ!」

 シリウス殿下の手が額に触れようとしたのを、咄嗟に避ける。

「ジュエル?」

「すみません。お手洗いに行ってきます」

 ご不浄に行くなどと言うのは恥ずかしかったが、医務室に行くと言うと付いてくる可能性がある。

 いや、間違いなく付いてくるだろう。

 その点、ご不浄なら付いてくることはない。

 私は教室を出ると、医務室に向かって歩き始めた。

 もうすぐ授業が始まる。
私が戻らなくても、授業が終わるまではシリウス殿下はやって来れない。

 医務室の扉を開くと、先生が振り返った。

「あら?リビエラさん。顔色が悪いわね」

「すみません、先生。少し休ませてください」

「かまわないけど、大丈夫?」

 医務室は、男性用と女性用に分かれている。

 当然、女性用の医務室には女性医師がいる。
 男性だけでないのは、未婚の貴族の令嬢のケアをするのは、女性の方が良いという学園長の判断からだ。

 医療行為とはいえ、男性に体を触れられることを良しとしない貴族令嬢が多いことも理由のひとつだった。

「すみませんが、殿下がいらっしゃったら眠っていると伝えて下さいますか?」

「・・・ええ。分かったわ」

 女性用の医務室でも、婚約者なら入ることが出来る。

 だけど眠っていると伝えることは、暗に会わせられないという意味を含んでいる。

 女性医師のこの先生は、長く王立学園に勤めているからか、余計なことを聞かない。

 誰しも色々な事情を抱えていることを理解していて、常識外な願いは聞いてくれないけど、みんなに寄り添ってくれる先生だと慕われている。

 先生が頷いてくれたことで、私は安心してカーテンの向こうのベッドに腰掛けた。

 
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