嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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繰り返し

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 あの日以来、私はシリウス殿下のことを疑いの目で見るようになってしまった。

 何故なら・・・

 注意して殿下の行動を見ていると、あのご令嬢と逢瀬を重ねている場を何度も目撃することになったからだ。

 シリウス殿下は、その逢瀬が咎められないように空き教室を利用していた。

 二人一緒に教室に出入りしたりせず、長い時間共にいたりもしない。

 しかも誰かに目撃されても誤魔化せるように、ほんの少し扉を開けて、意味のない書類を机に並べて手伝いを擬装する。

 それでいて、扉から覗き込まなければ見えない位置で、抱きしめ合う。

 交わされる言葉はいつも甘い。

「ずっとそばにいたい」

「離れたくない」

「一緒に生きていきたい」

 そして、口づけ合う。

 私は手鏡を使って、見えない位置の彼らの行動を盗み見た。

 扉に隠れて、その発言も聞いた。

 エミリ・コンフォート。
コンフォート公爵家に半年前に引き取られた彼女は、元は平民だったそうだ。

 公爵が若い頃に使用人に手を出して産ませた子で、婚外子だったエミリ様だけど、母親が亡くなったことで公爵が引き取ったそうだ。

 ふわふわとした金髪に、エメラルドのような瞳。

 突然貴族令嬢になったエミリ様は、平民のような屈託のなさと、その美貌でシリウス殿下の心を捉えたようだった。

 私の五年間は何だったのだろう。

 あの厳しくて辛い王太子妃教育は。

 そう思うけれど、人が人を好きになる気持ちに時間は関係ないのかもしれない。

 それに身分を言えば、公爵家のご令嬢となったエミリ様の方がシリウス殿下の後ろ盾になる。

 あんなに想い合う二人だ。
すぐに殿下から婚約の解消の話があるだろう。

 そう思っていた。
でも、待てど暮らせどその気配がない。

 伯爵令嬢の私から王太子殿下に、婚約の解消を申し出るわけにはいかない。

 だから仕方なく、それとなくシリウス殿下を誘導することにした。

「シリウス殿下」

「ジュエル。どうしたの?」

「あの・・・殿下はコンフォート公爵令嬢様のこと、ご存知ですか?」

 お付き合いされてますよね?とか言えないのがもどかしい。

 でも私から話を振れば、殿下も気持ちを言い出しやすいだろう。

 きっと言い出しにくかったのだろう。
五年も婚約関係にあったのだから。

 だけどそう思っていた私の前で、シリウス殿下は息を吐くように嘘を吐いた。

「うん?ああ。たまに挨拶はするけど?なに?ジュエル、ヤキモチかい?嬉しいな。でも、僕の好きなのはジュエルだけだよ。安心して?」

 その、この五年間見て来たのと全く変わらない表情と声に、吐き気がした。
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