嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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手の届かない幸せ②〜エミリ視点〜

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 その人は、本物の王子様だった。

 キラキラ輝く金髪に、夏空のような青い瞳。

 ローゼン王国の王太子殿下、シリウス様。

 一目で好きになった。
平民だった頃では近づけない存在だったけど、今の私は公爵令嬢。

「こんにちは」

「・・・ああ。君はコンフォート公爵家に引き取られたご令嬢だね。僕に何か用かい?」

「いえ。ご挨拶したくて。エミリ・コンフォートと言います」

「うん、僕はシリウスだよ。よろしく」

 シリウス様はとても優しくて、素敵な方だった。

 でも彼には婚約者がいた。

 ジュエル・リビエラ伯爵令嬢。
以前の私なら、比較することも許されないような身分。

 でも今の私は、公爵令嬢。
王太子殿下のシリウス様の隣には、私の方が似合うんじゃない?

 あの時の私は、何もわかっていなかった。

 本当は、シリウス様ジュエル様が婚約者になったこと。

 ジュエル様は伯爵家のご令嬢だから、王太子妃になるためにとても厳しい教育を五年も受けていたこと。

 公爵令嬢といえどの私にとってその教育はとてもじゃないほど大変なこと。

 シリウス様は、ジュエル様に触れることができないから、で私に甘い言葉をかけてくれていたこと。

 私は何にも分かっていなかった。

 お父さんの奥さん・・・一度お母さんと呼んだら「二度と呼ばないで。私のことは公爵夫人かメリッサ様と呼んでちょうだい」と言われた人に、ものすごい蔑んだ目で見られた。

 お父さんに引き取られて公爵家で会った時も、お母さんと呼んで拒否された時も、こんな目で見られなかったのに・・・

「何を考えて、シリウス王太子殿下に近付いたの?婚約者がいる殿下に擦り寄るなんて。この国が不貞を許さない国だって学んだわよね?」

「ふ、不貞だなんて」

「抱き合ったり、頬にキスをしたら十分不貞よ。貴女、本当にあの人の子供ね。することもそっくり」

 シリウス様は、婚約者の伯爵令嬢のことをすっごく好きなんだって言われた。

 でも私と不貞したことで婚約は解消されて、シリウス様は私の婚約者としてコンフォート公爵家に婿入りするって。

 お父さん・・・お父様は私が王太子妃になれば良いんじゃないかって言ったらしいけど、やらされた勉強に、はっきり言って全くついていけなかった。

 なんなの?あれ。
食事マナーから歩き方、話し方、他国の言葉に、自国の歴史に、他国の歴史、自国の貴族構成に、その領地の特産物。

 終わりがない以前に、全く理解できない。

 王太子妃は無理だと言われた。あんな勉強しなきゃいけないなら、王太子妃なんてならなくて良いわよ。
 
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