拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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パーティーという名の罠。

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 私たちというか、皇帝であるお父様と皇帝妃であるお母様への挨拶が全て終わると、ダンスが始まる。

 お父様とお母様が踊り、お姉様とルーファスお兄様が踊る。

 私はシリルと踊りながら、離れた場所にいるレグディア男爵令嬢に意識を向けた。

 令息、しかも容姿が優れていて、高位貴族と思われるシリルから視線を逸らさないことに、思わず唇の端が笑みの形をとってしまう。

「シリル、予定通りにね」

「分かってる。僕が離れたら、兄上たちと一緒にいてよ?」

「ええ。シリルが見える場所にいるわ」

 おそらくこの後、フリーのダンスになればレグディア男爵令嬢はシリルに近付いて来る。

 伯爵家以上のご令嬢には、シリルにダンスを申し込まないように伝えてある。

 令嬢から申し込むのははしたないとされる国もあるけど、我が国は女性からダンスを申し込むことは別に否とされない。

 男性側は申し込まれたら、一回はお相手しなければならない。

 あくまでも社交のひとつ。
ダンスを受け入れてくれたからといって、好意があるというわけではない。

 だから間違いなくレグディア男爵令嬢は、シリルにダンスを申し込んでくる。

 そしてダンスが終わった後に、何らかの行動を起こすはずだ。

 私はシリルとのダンスを終えて、シリルのエスコートでお姉様の元へと移動する。

 この後は下位貴族たちのダンスがあり、その後に自由時間となる。

 シリルから飲み物を受け取り、ホールを眺めていると、レグディア男爵令嬢はブッセ伯爵令息と踊り、一曲終わると今度はターナー伯爵令息と踊り始めた。

「あの二人は・・・終わったな」

 シリルの言葉に頷く。

 メルキオール帝国の全貴族が集まったパーティーで、婚約者と仲睦まじくダンスを踊る。

 それが周囲にどう見られるか、薬物でレグディア男爵令嬢に魅了されている二人には分からない。

「婚約者の家も自分の両親もいることすら考えれない状態って、解毒できるかしら?」

「薬の成分を分析してみないと、何とも言えないな。無理に解毒すれば、廃人になる可能性もある」

 そうらしいのよね。
精神を操る薬の場合、あまりに強いものだと解毒薬を使うと、精神を病んでしまう可能性があるらしい。

 ソルティア侯爵家とフォレスコム伯爵家、ターナー伯爵家にブッセ伯爵家の当主には、薬を使われていることは伝えてある。

 そしてご令嬢たちの望みと、解毒可能性についても。

 自分たちの息子が、婚約者以外をまるで婚約者のように扱っていても何も言わない。止めもしない。

 何故ならこれは、パーティーという名の罠だから。

 彼らがいるのは、張り巡らされた蜘蛛の巣の上。
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