拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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 お母様から渡されたのは、厚さが十センチもある釣書だった。

「帝国の皇女相手にね、伯爵家までもが釣書を送って来たの。理解る?あり得ないことでしょう?それだけクロエが軽く見られているということなのよ。何か問題があるから婚約が二度も解消になった、そう思われているの。相手に問題があるとしても、それを見極めることが出来なかったと言っているも同じなの」

 お母様の言葉に、お姉様も口を閉じた。

 お母様のおっしゃる通りだわ。
私がもっと早く、お母様たちに相談していたら、シリルとの婚約が解消になることもなかった。

「まぁ、クロエが可愛いからと中途半端に好き勝手させたわたくしたちも悪いのだけど」

 そう言ってお母様は、三枚の釣書を渡して来られた。

「こちらの中から、クロエ自身が選びなさい。三ヶ月間時間をあげるから、自分でよく見極めて、自分の責任で婚約者を決めなさい」

「お母様」

「クロエ。わたくしたちはクロエが可愛いし大切だけど、同じようにオーロラもルーファスも、それから帝国の民も大切なの。わたくしの言いたいこと、理解るわね?」

「はい、お母様。ご迷惑をおかけしました。ちゃんと自分で決めたいと思います」

 この釣書の束。
伯爵家からもとお母様はおっしゃっていたわ。

 皇女の降嫁先に伯爵家は、普通ならあり得ない。

 もちろん、私が好きな相手が伯爵家の嫡男で、お互い思い合っているのなら、お父様もお母様も許してくださるだろうけど。

 政略結婚の場合、最低でも侯爵家ね。

 あの、元婚約者様でさえ公爵家だったのよ、次男だけど。

 それだけ、私の価値を低く見られているということ。

 どちらも他国の王侯貴族だったせいで、他国からメルキオール帝国の皇女は二度も婚約を解消している。

 何か問題のある皇女なのではないか、と見られている可能性が高い。

 私個人の問題では済まないのだから、お母様のいう通りにちゃんと調べて見極めなきゃ。

 十センチの束と三枚の釣書を抱えて、自室へと戻る。

 お茶を淹れてもらって、ゆっくりと釣書に目を通した。

 十センチの束は、帝国内外の王侯貴族からのものだった。

 下は伯爵家。上は他国の王族ね。

 私は全ての方を知ってはいないけど、お母様がまとめてあるということは、問題ある方々ということでしょう。

 お母様が三枚に、順番に目を通した。

 ひとりはメルキオール帝国の方。

 ひとりはアルトナー王国の方。

 そしてもうひとりは、海を挟んだ東の大陸にあるカルドラン王国の方だった。

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