拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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迷いを突かれた。

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 明日帰るという日の夕方、カグレシアン公爵閣下に呼ばれてお話をすることになった。

 侍女は無事に回復して、昨日は郊外を一緒に案内してもらったわ。

 絵画のように綺麗な景色で、彼女もカルドラン王国をとても気に入ったみたいだった。

 私も、カグレシアン公爵閣下のお心遣いに、この方となら婚約してもいいと感じていた。

 年齢は離れているけれど、年齢云々よりも精神的に大人だから、安心していられる。

 そう思っていたのだけど・・・

「楽しんでもらえただろうか?」

「はい。お心遣いありがとうございます。とても楽しく、そしてカルドラン王国を好ましく思いましたわ」

 食べ物も美味しいし、景色も綺麗で。
 もちろん、そうでないところもあるでしょうけど、少なくとも今回見れたところは、好ましく感じたわ。

 カグレシアン公爵閣下はどうなのかしら?

 私みたいな小娘では、不満だったりしないかしら?

「閣下。婚約のことですが・・・」

「ああ。そのことで聞いておきたいことがある。皇女としての立場や政略結婚の役目など、諸々のことを忘れた上で答えてもらいたい」

「立場を忘れて、ですか?」

 そんなことを言われても、私は生まれた時から皇女だったし、お姉様が後を継がれることは決まってからは、政略結婚も当たり前だと考えていたわ。

 それでも、カグレシアン様がそうおっしゃるのだからと頷いた。

「本当に嫁ぎたい相手はいないのか?海を渡ったこの国に嫁げば、二度とその者と会うことは叶わなくなるかもしれない。いや、同じ国にいたとしても、突然二度と会えなくなることだってある。そのことを踏まえて、本当に嫁ぎたい相手はいないのか?私はこう見えても嫉妬深い。君が他の男と親しくすることは許せないだろう。本当に後悔しないのか?」

 カグレシアン公爵閣下が嫉妬深いとか、想像できないけれど。

 しかも家族相手にでもだなんて。

 冗談をおっしゃっているようには見えない。

 言われた言葉が、頭の中に浸透し・・・

 彼の顔が頭に浮かんだ。

 どうして・・・

「心当たりがありそうだな。その者では駄目な理由があるのかもしれないが、よく考えた方がいい。大切なものを失いたくないなら、素直に自分の心に向き合うことも大切だ」

「カグレシアン様、私は・・・」

「人は生きていれば間違えることもある。許せない間違いもあるだろう。だがそれを踏まえても失ってはならない存在というのはあるものだ。時間はあるのだろう?よく考えるといい。二年経っても君の心が変わらなかったら、私と婚姻しよう」



 
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