はい!喜んで!

みおな

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シリル・イグリットの場合

シリル・イグリット伯爵令嬢

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 イグリット伯爵家の令嬢、シリルは今年十六歳になる。

 銀色の真っ直ぐな髪は腰まで伸び、澄んだ青い瞳は深い湖の底を思わせる。

 透けるような白い肌に、華奢な体つき。

 精巧に作られた人形のような彼女は、周囲から「氷姫」と呼ばれていた。

 それは彼女の容姿と、全く表情を変えないことから付いたあだ名である。

 ただし、表情を変えないからと言って無愛想なわけではない。

 ちゃんとクラスメイトとも話すし、頼み事を聞いたりもする。

 だから「氷姫」と呼ばれてはいるが、友人がいないわけではない。

「シリル様、今日うちでお菓子でも食べながらお話しませんこと?」

「あら!マーガレット様、ずるいですわ。私もシリル様とお茶をしたいです」

「私も、新しい茶葉を取り寄せましたのよ。ぜひ、ご一緒したいですわ」

「ありがとうございます。是非」

 シリルが無表情で答えても、令嬢たちはにこやかに喜んだ。

 マーガレット・カイサル公爵令嬢。

 セレーネ・ギュンター侯爵令嬢。

 ベルモット・ラックス侯爵令嬢。

 この三人は、常にシリルと行動を共にしている友人である。

 彼女たちの通うガーデンプレイス王国の王立学園は、全ての貴族の令息令嬢が十五歳から二年間通う。

 クラスは成績順で決められていて、シリル達四人は同じ特別クラスだ。

「シリル様、我が家の馬車でご一緒しましょう?帰りもお送りいたしますわ」

 マーガレットの提案にシリルが頷いて立ち上がると、セレーネとベルモットも鞄を手に立ち上がった。

「イグリット嬢」

 教室を出ようとしたところに後ろからかけられた声に、マーガレットたち全員が足を止める。

 鞄を手に立っていたのは、アルトガン公爵家の嫡男、ウォルターである。

に挨拶くらいして帰るべきでは?」

「・・・さようなら、アルトガン公爵令息様」

 チラリとウォルターを見ると、シリルは軽く頭を下げて背を向けた。

 その後ろから、マーガレットたちが続く。

「ちょっと待・・・」

「今日、シリル様は私たちとご一緒しますの。?アルトガン公爵令息様?」

「チッ」

「まぁ。品のないこと。その舌打ちはもしかして私にしたのかしら?」

 マーガレットが足を止めて睨むと、ウォルターは顔を顰めたものの何も言わずに背を向けた。

がシリル様の婚約者だなんて。陛下のお考えが分かりませんわ」

 ブツブツと言いながらシリルの後ろを歩くマーガレットに、セレーネとベルモットも苦笑しながら頷く。

 カイサル公爵家には、甘いお菓子を手土産にした方がいいかもしれない。
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