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リエル・イグリットの場合
リエル・イグリット侯爵令嬢
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イグリット侯爵家の令嬢、リエルは今年十六歳になる。
銀色の真っ直ぐな髪は腰まで伸び、澄んだ青い瞳は湖の底を思わせる。
透けるような白い肌に、華奢な体つき。
精巧に作られた人形のような彼女は、周囲から「妖精姫」と呼ばれていた。
それは彼女の容姿と、笑顔で人を惹きつけておきながら冷たく切り捨てるような気まぐれさが、妖精のようだと付いたあだ名である。
だがそれは、男共がリエルの笑顔に勝手に勘違いして、恋人気取りを始めたためにリエルが拒否をしたというだけである。
なので令嬢たちは、リエルの味方と、婚約者の心変わりをリエルのせいだと、悪女呼ばわりする者たちに分かれていた。
「リエル様、お昼をご一緒して下さいませんか?」
そう言って来たのは、ファーゼンバーグ王国の筆頭公爵家令嬢リズ・オビュスである。
波打つ金髪に、青い瞳。
大輪の薔薇のような華やかさのある令嬢だ。
「ええ、リズ様。喜んで」
ファーゼンバーグ王国の王立学園は、十三歳から十六歳までの、すべての貴族の子息子女が通う学園である。
クラス分けは、身分によって分けられ、王族から伯爵家までと、子爵家から準男爵家までとに分かれていた。
リズのいた高位貴族のクラスに、卒業まであと二年となった頃に編入して来たのがリエルだ。
編入試験の結果が満点だったというリエルのことを、リズは尊敬に値すると思った。
ファーゼンバーグ王国王立学園の試験は、他国から見てもトップクラスで、そこで満点を取るなど尊敬以外の何者でもなかったのだ。
高位の、しかも王族と縁戚関係にあるリズが仲良くしていることで、直接リエルに文句を言うような令嬢は普通はいない。
そもそも、リエル自体が侯爵令嬢なのだ。
公爵家や同等の侯爵家ならともかく、下位の貴族令嬢や令息が直接リエルに何か言うことなどあり得ない。
そう、あり得ないのだ。
だが、世の中にはあり得ない行動をする者がいるものである。
リズとリエルが並んで廊下を歩けば、ほとんどの令嬢令息は、さりげなく道を譲る形で避ける。
だが、前からパタパタと駆けてくる令嬢が、リエルの隣でバタリと転んだ。
「「・・・」」
リズとリエルが言葉なくその令嬢を眺め、周囲もなんとも言えない表情で転んだ令嬢を見る。
「ひ、酷いです、リエルさん!私のことが嫌いだからって、足をかけて転ばすなんて!」
「「「「「・・・」」」」」
令嬢は周囲の、そしてリズの冷たい視線に気付かない。
愚か者というのは、どこにでも湧くものである。
銀色の真っ直ぐな髪は腰まで伸び、澄んだ青い瞳は湖の底を思わせる。
透けるような白い肌に、華奢な体つき。
精巧に作られた人形のような彼女は、周囲から「妖精姫」と呼ばれていた。
それは彼女の容姿と、笑顔で人を惹きつけておきながら冷たく切り捨てるような気まぐれさが、妖精のようだと付いたあだ名である。
だがそれは、男共がリエルの笑顔に勝手に勘違いして、恋人気取りを始めたためにリエルが拒否をしたというだけである。
なので令嬢たちは、リエルの味方と、婚約者の心変わりをリエルのせいだと、悪女呼ばわりする者たちに分かれていた。
「リエル様、お昼をご一緒して下さいませんか?」
そう言って来たのは、ファーゼンバーグ王国の筆頭公爵家令嬢リズ・オビュスである。
波打つ金髪に、青い瞳。
大輪の薔薇のような華やかさのある令嬢だ。
「ええ、リズ様。喜んで」
ファーゼンバーグ王国の王立学園は、十三歳から十六歳までの、すべての貴族の子息子女が通う学園である。
クラス分けは、身分によって分けられ、王族から伯爵家までと、子爵家から準男爵家までとに分かれていた。
リズのいた高位貴族のクラスに、卒業まであと二年となった頃に編入して来たのがリエルだ。
編入試験の結果が満点だったというリエルのことを、リズは尊敬に値すると思った。
ファーゼンバーグ王国王立学園の試験は、他国から見てもトップクラスで、そこで満点を取るなど尊敬以外の何者でもなかったのだ。
高位の、しかも王族と縁戚関係にあるリズが仲良くしていることで、直接リエルに文句を言うような令嬢は普通はいない。
そもそも、リエル自体が侯爵令嬢なのだ。
公爵家や同等の侯爵家ならともかく、下位の貴族令嬢や令息が直接リエルに何か言うことなどあり得ない。
そう、あり得ないのだ。
だが、世の中にはあり得ない行動をする者がいるものである。
リズとリエルが並んで廊下を歩けば、ほとんどの令嬢令息は、さりげなく道を譲る形で避ける。
だが、前からパタパタと駆けてくる令嬢が、リエルの隣でバタリと転んだ。
「「・・・」」
リズとリエルが言葉なくその令嬢を眺め、周囲もなんとも言えない表情で転んだ令嬢を見る。
「ひ、酷いです、リエルさん!私のことが嫌いだからって、足をかけて転ばすなんて!」
「「「「「・・・」」」」」
令嬢は周囲の、そしてリズの冷たい視線に気付かない。
愚か者というのは、どこにでも湧くものである。
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