はい!喜んで!

みおな

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リエル・イグリットの場合

その他大勢の傍観者

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 カルロス・ファーゼンバーグ王太子殿下が、チナ・パンランチ準男爵令嬢と親しくし始めた頃。

 周囲は、それらを傍観することに徹した。

 理由はふたつ。

 まずは、当事者であるカルロス王太子殿下の婚約者、リエル・イグリット侯爵令嬢が、他人に関与されることを拒んだこと。

 カルロスやチナに何かを言うのはかまわないが、リエルのためにと言うのはやめて欲しいと言っていたのだ。

 公爵令嬢であるリズ・オビュスに。

 筆頭公爵令嬢であり、国王陛下の姪であるリズにである。

 それを聞いて、周囲の令嬢令息たちは口をつぐむことにした。

 そしてもう一つだが、カルロスもチナも、人の話を聞かないという悪癖があった。

 チナは身分が準男爵令嬢だからまだいいが、カルロスは腐っても王太子殿下である。

 機嫌を損ねて、不敬に問われても困る。

 というわけで、周囲は傍観者に徹することにしたのだ。

 傍観者には徹するが、婚約者がいながら他の令嬢と親しくする王太子殿下にも、婚約者がいる男性にまとわりつく準男爵令嬢にも関わりたくない。

 だから、周囲はカルロスとチナから距離を大きく取った。

 さすがにカルロスに話かけられたら無視はできないが、チナ相手なら問題ない。

 チナに話しかけられても聞こえないふりで、周囲はチナを完全に無視した。

 それは教師たちも同じだった。

 それも当然で、教師たちは貴族である。

 王族を敵に回したいわけではないが、王太子殿下にまとわりつく準男爵令嬢などを相手にして、筆頭公爵令嬢や侯爵令嬢に睨まれたくはない。

 結果として、チナはもちろんカルロスも他の令息令嬢から距離を取られ、その上教師からも冷たい視線を向けられるようになった。

 カルロスは王族のため、教師も不敬にならない程度にだが、チナに対しては辛辣なまでに厳しい対応となった。

 もちろん、貴族として教師としての矜持を失うような真似はしない。

 少々辛辣な、をする程度だ。

「聞いたか?カルロス王太子殿下の弟君、ミハエル様がアンドレ元公爵閣下の教育を受けるそうだ」

「ミハエル様がか。

「僕たちにすら理解できるのに、な」

 彼らは、階下で準男爵令嬢と仲良く腕を組んで馬車に向かうカルロスを視線を向ける。

 どうしてああも、危機感なくいられるのか。

 自分が長子だから、王太子の座は揺るがないと?

 そんなこと、あるわけがない。

 親が子供に愛情を持っていないわけではないが、それよりも国王陛下にも自分たちの親にも、子供への愛情よりも大切な責任がある。

「僕たちも、ああはならないようにしないとな」

「ああ」

 人の振り見て我が振り直せ、である。
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