4 / 88
第1章
ヴァレリア公爵家
しおりを挟む
ヴァレリア公爵家ー
カムシーナ王国にある3つの公爵家のうちの1つで、父親であるアルファード・ヴァレリアは国王陛下の幼馴染。
母親のジーナ・ヴァレリアは隣国の王女だった人。
嫡男のアベル・ヴァレリアは父親譲りの銀髪を肩より少し長めに伸ばしていて、襟足で纏めている。
次男のアゼル・ヴァレリアは母親譲りの金髪で、魔力量の多いヴァレリア公爵家の中で、母親のジーナの血が強いせいかほとんどと言っていいほど魔力がない。
そのせいで、兄のアベルに強い劣等感を抱いている。
そして唯一の娘であるヴィヴィ・ヴァレリア。
父親アルファードも母親ジーナも、そして長男であるアベルも、ヴィヴィのことを溺愛している。
攻略対象の1人である次男のアゼルも、ヒロインに出会うまでは同じように妹を溺愛していた。
それが、ヒロインと出会い、彼女との距離が近くなればなるほど、ヴィヴィを遠ざけるようになるのだ。
ヴィヴィはアベルと同じく父親の血を濃く継いでいるために、魔力量も多い。
そんな妹にアゼルが距離を置き始めたのは、ヴィヴィが第2王子の婚約者に決まった頃からだ。
元々、優秀な兄に劣等感を感じていたアゼル。
それでも、勉強も剣技も魔法も、全てに優れている兄を尊敬し、本人なりに努力していた。
アゼルに魔力がほとんどないことは、母親であるジーナが他国の出身で、その血を強く引いているからだと家族も本人も理解している。
貴族でも、下位貴族になれば平民と婚姻することもあるので、魔力を持たない貴族もいる。
高位貴族の場合はほとんどが魔力持ちだが、嫡男以降の場合は他国の貴族や王族を妻に迎えていることもあるため、魔力量の少ない人間も稀にいた。
だから、アゼルが魔力をほとんど持たなくても家族がそのことを問題視することもなかったし、兄と隔てなく育てていたのである。
むしろ嫡男である分、アベルの方が厳しく育てられていた方だろう。
だが、ヴィヴィの魔力量がアベル以上だということで、第2王子との婚約が王家から申し込まれる。
その辺りから、アゼルは兄を妹を、父と母を避けるようになっていく。
自分には何故、魔力がないのか。
同じように母から生まれた兄と妹にはあるというのに。
そんな劣等感に苛まれていくアゼルを、ヒロインは優しく癒すのだ。
貴方はとても頑張っている、と。
自分は貴方のお兄さんや妹さんのことは知らないけど、貴方が誰よりも頑張って、優れていることは分かる、と。
その言葉に、アゼルはヒロインに傾倒していくのであるー
乙女ゲームの説明書に書かれていた兄のキャラ設定と、ゲームの展開を思い出して、私はため息を吐いた。
魔力がないことは、かわいそうだとは思う。だけど、勝手に劣等感抱くのも、勝手に家族から距離を取るのも、それこそ好きにしてくれれば構わないけど、ヒロインに傾倒した挙句に、実の妹を断罪するのは許せない!
アゼルがヒロインと出会うのは、ヒロインが学園に入学してからである。
それまでに、兄の劣等感を矯正しよう!私はそう決意した。
カムシーナ王国にある3つの公爵家のうちの1つで、父親であるアルファード・ヴァレリアは国王陛下の幼馴染。
母親のジーナ・ヴァレリアは隣国の王女だった人。
嫡男のアベル・ヴァレリアは父親譲りの銀髪を肩より少し長めに伸ばしていて、襟足で纏めている。
次男のアゼル・ヴァレリアは母親譲りの金髪で、魔力量の多いヴァレリア公爵家の中で、母親のジーナの血が強いせいかほとんどと言っていいほど魔力がない。
そのせいで、兄のアベルに強い劣等感を抱いている。
そして唯一の娘であるヴィヴィ・ヴァレリア。
父親アルファードも母親ジーナも、そして長男であるアベルも、ヴィヴィのことを溺愛している。
攻略対象の1人である次男のアゼルも、ヒロインに出会うまでは同じように妹を溺愛していた。
それが、ヒロインと出会い、彼女との距離が近くなればなるほど、ヴィヴィを遠ざけるようになるのだ。
ヴィヴィはアベルと同じく父親の血を濃く継いでいるために、魔力量も多い。
そんな妹にアゼルが距離を置き始めたのは、ヴィヴィが第2王子の婚約者に決まった頃からだ。
元々、優秀な兄に劣等感を感じていたアゼル。
それでも、勉強も剣技も魔法も、全てに優れている兄を尊敬し、本人なりに努力していた。
アゼルに魔力がほとんどないことは、母親であるジーナが他国の出身で、その血を強く引いているからだと家族も本人も理解している。
貴族でも、下位貴族になれば平民と婚姻することもあるので、魔力を持たない貴族もいる。
高位貴族の場合はほとんどが魔力持ちだが、嫡男以降の場合は他国の貴族や王族を妻に迎えていることもあるため、魔力量の少ない人間も稀にいた。
だから、アゼルが魔力をほとんど持たなくても家族がそのことを問題視することもなかったし、兄と隔てなく育てていたのである。
むしろ嫡男である分、アベルの方が厳しく育てられていた方だろう。
だが、ヴィヴィの魔力量がアベル以上だということで、第2王子との婚約が王家から申し込まれる。
その辺りから、アゼルは兄を妹を、父と母を避けるようになっていく。
自分には何故、魔力がないのか。
同じように母から生まれた兄と妹にはあるというのに。
そんな劣等感に苛まれていくアゼルを、ヒロインは優しく癒すのだ。
貴方はとても頑張っている、と。
自分は貴方のお兄さんや妹さんのことは知らないけど、貴方が誰よりも頑張って、優れていることは分かる、と。
その言葉に、アゼルはヒロインに傾倒していくのであるー
乙女ゲームの説明書に書かれていた兄のキャラ設定と、ゲームの展開を思い出して、私はため息を吐いた。
魔力がないことは、かわいそうだとは思う。だけど、勝手に劣等感抱くのも、勝手に家族から距離を取るのも、それこそ好きにしてくれれば構わないけど、ヒロインに傾倒した挙句に、実の妹を断罪するのは許せない!
アゼルがヒロインと出会うのは、ヒロインが学園に入学してからである。
それまでに、兄の劣等感を矯正しよう!私はそう決意した。
279
あなたにおすすめの小説
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪
山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」
「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」
「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」
「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」
「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」
そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。
私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。
さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪
婚約者をないがしろにする人はいりません
にいるず
恋愛
公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。
ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。
そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。
婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~
tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。
ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる