婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな

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第3章

卒業パーティー本番〜ブラン編〜

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「次は僕と踊って下さい」

 ブランがリティカをエスコートして、私たちの元へやってくる。

 ハルトナイツは、リティカに手を差し出し、フロアの中へと進んでいく。
 私もブランの手に自分のそれを重ねた。

 ラグヌスよりはいくらか滑らかなエスコートで、ダンスが始まる。

「レンブラント皇国に行ってしまうなんて、思わなかった」

 ポツリとブランが呟く。
その顔はどこか捨て犬のようで、不安に揺れている気がした。

「ビゼット様?」

「サイード殿下と婚約解消しても、カムシーナ王国からいなくなるなんて思わなかったのに」

「ビゼット様にはリティカ様がおいでになりますでしょう?何がそんなに不安なのですか?」

 ブランは、例の植物魔物化イベント以来、リティカにちゃんと向かい合ってたはずだ。
 それなのに、どうしてこんなに不安そうなの?

「うん。リティカはずっと僕のそばにいてくれる。暴走気味の僕のことをちゃんと叱ってくれて、ちゃんと見ててくれる」

 暴走じゃなくて、完璧に暴走してるけど、まぁ、そこは置いとこう。
 理解してるのに、何が不安なんだ?

「ヴァレリア嬢は・・・魔力が多いよね・・・」

「え、ええ」

「だから、魔力の残滓があるとかわかるんでしょ。僕はどうしても魔法のことになると、目先のことしか見えなくてね。リティカにも注意されるんだけど、リティカは優しいから、余程にならないと僕を叱らないんだ。でも、ヴァレリア嬢は僕が暴走したら注意してくれるから・・・」

 ええと?
あのね、ブラン。私はあなたのお母さんじゃないのよ?

 私がこれまで、ブランのイベントに関わってきたのは、リティカを悲しませないため。

 ブランは、ヒロインに傾倒した挙句に、植物を魔物化させてリティカの魔力を吸い上げてしまう。
 そして、魔力枯渇を起こしたリティカは、そのまま昏睡状態になってしまうのだ。

 ブランよりも魔法適正があるくせに、ブランのプライドを守るためにそれを隠していたリティカ。

 そんな彼女を悲しませたくない。
だから、ブランの暴走も諌めもしたし、フォローもした。

「ビゼット様。ご自分でそれがわかっていらっしゃるなら、改善できますわ。だって、ビゼット様はリティカ様のためなら変われるでしょう?」

「・・・うん。そうだね。僕はリティカのためなら誇れる自分になれる気がするよ」

「ふふっ。なら、大丈夫ですわ。そうですわね、では最後に私からひとつ」

 ラグヌスは脳筋だし、ユサールも知識バカだけど、一番暴走してヤバいことになるのはブランだ。
 何せ、魔法の威力というものは巨大なのだから。

「魔法よりも大切なものをお探し下さいな。そうしたら、ビゼット様は今よりももっともっと強くなれますわ」

「魔法よりも大切なもの?」

「ええ。次にお会いする時までに見つけておいて下さいませね?」

「・・・わかった。約束だね。そのかわり、レンブラント皇国に珍しい魔法があったら、覚えてきて教えてね」

 わかってるのか、相変わらずなのか。
そんなブランの、それでも晴れやかな笑顔を最後に、ダンスは幕を閉じた。

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