悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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転生先は、悪役令嬢!

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「ひゃあああああ!」

 成人女性としては、情けない声を上げながら、私は飛び起きた。
 連日の徹夜とトドメのビールで、フラフラになった体が、階段を踏み外したことを覚えている。

 け、怪我は?今日は大事なリリース日なのに!!

 慌てて、自分の手や足を確認するべく布団をはぐろうとしてー

 その手をピタリと止めた。

 これ、誰の手?いや、私の手だって分かってるけど。でも私の手は、女の割に指はちょっと太くて、日に焼けていて。こんな細く白く、小さくない・・・

「リアナ様っ!」

 扉が勢いよく開いて、誰かが部屋に飛び込んでくる。
 と、思ったら、ぎゅうぎゅうと抱きしめられていた。

「よかった。目が覚めたのですね!ずっと眠り続けていて、心配していたのですっ」

 ええと、どなたか存じませんが、胸が、胸が当たっております。私が望んでも手に入れなかった、そのふくよかなモノが!

「リアナ様?」

 そして、すごく綺麗な金髪。いるんだなぁ、こんなに綺麗に染めてる人。
 白の清楚な制服にも似合ってる。うん?制服?

 抱きしめていたナイスバディな女性をグイッと突き放す。
 輝く金色の、ふわふわとした髪が腰の辺りまで伸びている。その金の瞳は光を纏った黄金で、その愛らしい容姿を白の制服で包んでいる。

「・・・?・・フローラだ」

 どうして、私が作ったキャラのフローラが、いるんだ?
 夢?もしかして、これ夢なの?

「リアナ様?わ、私、抱きついたりして、嫌でしたわよね・・・」

 フローラが、その破廉恥な胸の前で両手を組み合わせている。
 自分にないモノを求めたから、フローラはナイスバディになっちゃったけど、これ、夢とはいえ目の前で見ると、犯罪レベルだわ。

 そんなことを考えてながら、ふと自分の胸元に視線を向けた。

 ん?私は肩までしか髪はないわよ?フローラの髪な訳ないし。
 んん?リアナ?リアナって、花乙の悪役令嬢のリアナのこと?

 私は慌ててベッドから飛び降りると、ガラス窓の前に立った。窓に映っていたのはー

 胸元までの、真っ直ぐな黒髪に、子猫のようなくりくりとした黒い瞳。白と紺の制服に身を包んだ15歳ほどの美少女。

「リアナ・アイリーン!?」

 私が作った『花乙』のヒロイン、フローラ・ダイアンサスの婚約者に横恋慕し、ヒロインを虐める悪役令嬢、それがリアナだ。

 えっ?私が、リアナ?
全ての愛を詰め込んだヒロインでなく、悪役令嬢?

 あまりのことに愕然とする。
というか、もしかして私、死んだの?あのまま階段から落ちて?
 それに、死んだのはともかく、リアナ?どゆこと?転生したってこと?
 まさか!ラノベじゃあるまいし、転生とかあるわけが・・・ないはずだけど。

「リアナ様?まだ具合が?」

 窓にしがみつくようにしている私に、フローラが駆け寄って、背中を撫でてくれる。

 うわーっ。なにこれ。フローラ、マジで天使!!
 いや、天使として作ったキャラだけど、私の愛の結晶だけど、現実の破壊力ハンパないわ!!

 天使に、こんな不安そうな顔をさせてるなんて、ダメだ。私のポリシーに反する!

「大丈夫です。フローラ様。ちょっと、その混乱していただけですので」

 そうそう。リアナはフローラのことを名前で呼んでいたのよね。

 この世界が、私の作った乙女ゲームの世界かはわからない。
 だけど、フローラは目の前にいて、私はリアナの姿形をしている。
 これが、『花乙』の世界なら、この先フローラはリアナに数々の嫌がらせを受けることになる。

 いや、ほんとなにしてくれてんの?前世の私。愛するフローラ傷つけ、悲しませるなんて。

 ここは、悪役令嬢なんかやってる場合ではないわ。ゲームクリエイターのチカラ全力でもって、フローラを幸せにしてみせる!

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