悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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勇気の一歩

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「リアナ様!」

 馬車を降りた途端、アリスティア様が抱きついてきた。
 いつも凛としていて、貴族の見本のようなアリスティア様が私をぎゅうぎゅうと抱きしめている。

 一瞬、フローラかと思った。それほどまでにアリスティア様らしくない行動だった。

「あ、アリスティア様?」

「心配しましたのよ。心配しましたの・・・」

 アリスティア様の震える声に、私の涙腺も緩んでしまう。

 あれから3日後ー
ようやく私は学園に向かった。いつまでも休んでいるわけにはいかない。

 シオンとソルには会っていたけど、他のみんなに会うのが怖くて、学園に行こうとすると震えが止まらなかった。
 だけど、ソルの優しさに、1歩踏み出す勇気をもらった。私のためにチョコレートを買ってきてくれたソル。あのチョコレートは、まだ私の部屋に大切に置いてある。

 私はー
自分のことでいっぱいいっぱいで、アリスティア様のことまで思い至れなかった。心配してくれていたんだ。

「あ!姫君!」

 アリスティア様と抱き合ったまま、べそべそ泣いていると、ハロルドやジェイムズ、イリアスがやって来た。

「良かった。元気になったんだね」

「姫君がいないと、シオン様が元気がないんだよ」

「アリスティア?え?何で姫君と泣いてるんだ?」

 ハロルドが目を白黒させている。あ。そうだった。ハロルドはアリスティア様の婚約者だっけ。

「へー。彼女がハロルド様の婚約者?すっごい美人さんだ」

「本当だな」

 ジェイムズとイリアスがアリスティア様を見て感嘆の声を上げる。
 うん。アリスティア様は、本当に美人さんだ。気品があって、私よりお姫様っぽいよね。

 というか、こんな美人の婚約者がいるのに、ハロルドってば何で私を構うのかなぁ。んー、もしかしてシオンを揶揄ってるとか?

「みんな、僕のリアナが疲れてしまう。そろそろ教室へ向かおう」

 シオンは抱き合ってる私からアリスティア様を引き剥がすと、ハロルドへと差し出す。
 そして、私をぎゅっと抱きしめた。

 ・・・うん。ご令嬢を引き剥がすとか、紳士としていかがなものかな?シオン。彼女はフローラじゃないんだよ?扱いがフローラと同じになってるよ?
 いや。フローラ相手ならいいってわけではないけどね。フローラ、私が思ってたより何だかたくましいんだもん。

 あの事件以来、シオンのシスコンがパワーアップしている。
 学園に通ってる時と、公務の時、後はお風呂と就寝時以外、べったりなのだ。
 食事はみんなの目があるから普通なんだけど、ティータイムになるとシオンのお膝の上に座らされる。

 いやいやいやいや。貴方の妹はもう16歳だから!でもって中身がアラサーだから!

 恥ずかしいから勘弁して欲しい。だけど、嫌がるとシオンの見えないお耳が、へにゃんと垂れちゃうのが見えるのよ!
 心配かけた身としては、罪悪感で拒絶もできない。

「お、お兄様!離してくださいませ。アリスティア様と教室へ行きますから!」

「僕の可愛いリアナ。離せなんて、そんな冷たいこと言わないでおくれ」

「もう!皆様ももうすぐ予鈴が鳴りますわ。アリスティア様、行きましょう?」

 シオンの腕から逃れると、アリスティア様の手を引いて学舎へと向かう。
 と、その足を止めると、苦笑いしながら歩き始めたシオンの元へと駆け寄った。

 その身にぎゅっと抱きつく。

「お兄様、ありがとうございます。大好きですわ」

 呆然としているシオンを放置して、私は身を翻した。

 恥ずかしい!私の顔、絶対真っ赤だわ!
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