悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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好きだということ《フローラ視点》

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「フローラは誰かと婚約する予定あるのか?」

 リアナ様のお見舞いに訪れた私を捕まえたシオン様が、訳の分からないことを言い出した。
 いくら友人といえど、失礼な物言いではないだろうか。

「いきなりなんですか?」

「いや、フローラに相手がいないなら、卒業と同時に僕と婚約しないか?」

 乙女ゲーム『花乙』では、聖女となったヒロインは王太子と婚約する。だけど、私が聖女になってるのはまだ秘密だし、私は全然王太子である彼を攻略もしてないんだけど。

 大体、彼は私に全く興味がない。私もないけど。
 なのにいきなりなんでそんな話になったのだろう?

「あと・・・フローラはリアナがソルのことを好きだと思うか?」

「私はリアナ様ではありませんから、絶対そうだとは言えませんが」

「フローラの観点でいい」

「リアナ様はシオン様のことをお好きなのと同じように、ソル様のこともお好きなように見えます。特別かどうかは分かりませんが。それで、それがどうしたのです?」

 私がそう言うと、シオン様は少し考え込んだ。うーん、乙女ゲームの中ではリアナ様がソル様とくっつくなんて展開はないけど。でも、リアナ様は乙女ゲームの中の悪役令嬢じゃない。

 それに、ヒロインのフローラ・ダイアンサスもヒロインとして生きてないし。
 リリー嬢はこの世界を乙女ゲームの中だと言ってたけど、私はこの世界は『花乙』によく似た世界でしかないと思っている。

 だって、シオンもリアナもソルも、そしてフローラも、自分の意思で動いているもの。

「リアナがソルを好きなら、婚約させようと思ってる」

「・・・なんとなくわかりました。ソル様と結婚するなら、このまま王宮で暮らすことが出来るから、手放さなくていいと思っていますね?」

 シオン様はリアナ様のことをとてもとてもお好きだから。
 図星だったようで、シオン様はそっぽを向かれた。

 私を婚約者にと言うのは、王宮にリアナ様を残した場合、シオン様の婚約者と揉めたりしないようにと考えたのね。
 私なら、リアナ様のことを大好きだから、いじめたりしないだろうと。

 私は伯爵家の娘だから、ぎりぎり王太子の婚約者にはなれる。まぁ、聖女だとバラしたら確定するけど。
 シオン様は他のご令嬢には全然興味がないらしく、釣書はたくさんきているらしいけどお見合いすらしてないと聞いた。

 王太子妃かぁ。シオン様にも王太子妃にも興味ないけど、シオン様と結婚したらリアナ様と姉妹になれるのよね。
 しかも、ソル様と結婚して王宮に残ってくれたら、ずっと一緒にいられる。

 それは、ものすごくいいわね。

「リアナ様がソル様をお好きで婚約されるなら、シオン様と婚約してもいいですよ」

「フローラは僕のことを好きってわけじゃないよな」

「ええ。私はリアナ様の側にいたいんです。でも、シオン様のこと嫌いではないですよ?友人としてなら好きです」

「僕もリアナを手放したくない。それに、フローラのそのはっきりしたところは好感を持っているよ」

 なら、これは契約だ。
一番大好きな、大切なものは手に入れることはできないけど、側でずっと見守っていくことは出来る。

 そのためなら、聖女だろうが王太子妃だろうが、何にだってなってみせる!
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