悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

文字の大きさ
35 / 57

大切な存在《シオン視点》

しおりを挟む
 アクツート伯爵家の一件以来、ソルとリアナの距離が縮まったような気がする。

 伯爵家の後片付けのあと王宮に戻り、国王陛下である父上と伯爵家取り潰しの話を詰めた。

 当然、伯爵と息子は処刑。伯爵夫人は何も知らなかったようだが、取り潰しの伯爵家に残ってもどうにもならない。
 当主と次期当主である息子の罪は、貴族なら一族で取るのが当然である。当然なのだが、何も知らなかった夫人を処刑や罪に問うた場合、リアナがどう思うか。

 悩んだ僕に、聖女となったフローラが提案してきた。

「平民に落とすというのもなんですし、私付きの侍女にでもなってもらいますか?」

「いや、聖女付きの侍女なんて高待遇だろう?」

「んー、王太子妃付きとなると高待遇過ぎますか。でも、リアナ様のお心を痛めたくないですし・・・ご本人はどうおっしゃってるんです?」

「伯爵と息子のしたことを思うと、処刑されても仕方ないと。ただ、使用人と実家には罪がないから、どうか慈悲をと言われた」

 もちろん使用人たちや伯爵夫人の実家まで断罪するつもりはない。
 まぁ、リアナが無事だったからだが。無事だったからこそ、当事者以外の処遇に困っているのだが。

 優しいリアナは、当事者はともかくそれ以外の人間の処罰を嫌うだろう。
 それでも、僕たちがリアナを思って処罰したと理解し、きっと心を痛めるだろう。
 それでなくても傷ついたリアナに、これ以上痛みを与えたくない。

「まともな方のようですね。やはり、私付きになってもらいましょう?そうしたらリアナ様もお喜びになられると思うんですよね」

「リアナは優しい子だからな」

「もちろん、扱いは一番下になりますけど。断罪した家族を冷遇していないというのも、国民に対して好印象だと思うんですよね」

 確かに、そうかもしれない。身分は落とした上だが、聖女付きにしたと聞けば、悪い印象は抱かれないだろう。

「貴族だから優遇しているととられないだろうか」

「当事者は処刑ですからね。それに、この国では余程のことがない限り、平民は処刑はされないじゃないですか」

「それもそうか。なら、そうするか」

 フローラのことは、友人としてしか見ていないが、それでも婚約者になってからは随分と多くの助言をしてもらっている。
 彼女は、頭も良く、よく気がつく女性だ。少々、リアナにべったりなのが不満だが、冷たく当たられるよりは何倍もいい。
 フローラが聖女である以上、彼女が王太子妃、未来の王妃になることは決定事項なのだから。

「最近、リアナがソルから離れないんだよな・・・」

 懸念していたことが片付いて、つい愚痴がこぼれてしまう。
 フローラは仕方ないなという顔で、笑った。

「いいじゃないですか。婚約者なんだし。それに・・・ソル様と一緒にいるリアナ様、すごく柔らかい感じになりましたよ?」

「ああ、それは僕も気づいた。入学式で倒れて以来、僕やソルとも距離を置こうとしていたリアナが、あの女の一件以来少しずつだが僕らに歩み寄ってきた。そして、今回の件で不安気な様子が少し消えてきたみたいだ」

 そうだ。
大切なリアナが微笑っていられるなら、それがソルの側でもいいじゃないか。
 大切な大切な、異母妹。
これからもソルと共に僕のそばにいてくれるなら、それでいいのかもしれない。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

花見 有
恋愛
乙女ゲームの断罪エンドしかない悪役令嬢リスティアに転生してしまった。どうにか断罪イベントを回避すべく努力したが、それも無駄でどうやら断罪イベントは決行される模様。 仕方がないので最終手段として断罪イベントから逃げ出します!

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

処理中です...