悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

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壊れた至宝《フローラ視点》

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「リアナ様が、笑わない?」

 シオン様と闇の聖女について話し合っていた私の元に、ソル様が訪れた。

 焦燥した表情のソル様がうなづくと、シオン様も大きくため息をついた。

「ここ数日、部屋からもほとんど出ない。僕が部屋を訪れても話しかければ答えるが、自分からは話そうとしない」

 シオン様もどうすればいいのか困り果てているようだ。
 私もシオン様と一緒に、街へと出かけないかと誘ってみたが、顔を合わせることもなく、侍女からお断りの返答を受けた。

 まさか会っても貰えないなんて。あの、リアナ様が?
 私は慌ててリアナ様の部屋へと向かった。まさか、闇の聖女が覚醒した?

「リアナ様?フローラです」

「・・・どうぞ」

 小さな返答の後、ほんの少し扉が開かれる。部屋に入ると、リアナ様は窓際に置かれた椅子へと進み、私に背を向けていた。

 リアナ様らしくない行動だ。
いつもなら満面の笑みで迎えてくれるのに。

「リアナ様?」

「・・・」

 椅子に腰掛けて、私を見上げるリアナ様の瞳を覗き込む。
 光の失われた瞳。だけど、違う。闇の聖女が覚醒しているわけではない。

 では、これは?
学院に通えなくなったから?だけど、シオン様の話では、一旦は反発したリアナ様もシオン様たちの気持ちを汲んでくれたようだと言っていたのに。

「リアナ様、どうされたのですか?学院に・・・学院に通えなくなったことがそんなに辛いのですか?」

「・・・いえ」

「リアナ様。本当のことをおっしゃって下さい。シオン様やソル様に言うなと言われるなら言いません。それとも、私とも話したくないですか?」

 リアナ様の両肩に手をかけ、視線を合わせる。その、漆黒の瞳が焦点を結んで、私を見た。

 みるみるうちに溢れ出てくる涙が、数日でやつれてしまった頬にこぼれていく。

「学院の、ことは・・・納得、は、して・・・いるの、です。お兄様や、ソルが、私を心配して・・・ふっ、うっ・・・」

「リアナ様、お辛かったですね」

「期待・・・するのが、怖くて。諦める、ことは、苦しいから・・・それなら最初から、期待しない、ほうがいいって・・・」

 ああ。だから、笑えなくなっていたんですね。何かを望んで叶わないことが怖くて、だから、シオン様もソル様も自分から遠ざけた。
 望んで失ったら、心が壊れてしまうから、最初から遠くに置いて望まないように。
 心を閉ざすしか、道がなかったのですね。

 なんてこの人は、綺麗なのでしょうか。こんな澄んだ心の持ち主に、闇の聖女が宿るなんて。私などより聖の聖女に相応しい方だというのに。

 あと1年ー
あと1年も我慢させなければならないのでしょうか。
 しかし、王太子のシオン様より先に婚姻をするわけにもいかないでしょうし。

 少し、シオン様と相談してみましょう。
この私たちの至宝を守るためにー


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