悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな

文字の大きさ
53 / 57

悪役令嬢の在り方《リアナ・アイリーン視点》

しおりを挟む
 子供の頃からー
ずっとシオン兄様が好きだった。

 子供の頃は、兄様も優しくしてくれた。笑いかけてくれた。
 でも、シオン兄様が学院に通うようになった頃から、私は距離を取られるようになった。
 理由はわかってる。私が兄様に近づく令嬢や王宮のメイドたちにも酷く当たっていたから。

 自分でも駄目だってわかってたけど、嫉妬する気持ちを抑えきれなかった。

 学院に入学する日ー

 突然、自分の中にが現れた。

 真っ暗な中、『彼女』の目を通して世界を見る。

 『彼女』の思考も私の中に流れ込んできた。シオン兄様が、私を断罪して処刑する?そんな・・・

 『彼女』の言う『げえむ』というのが何なのかわからなかったけど、『こうりゃくたいしょう』というのがシオン兄様たちで、『あくやくれいじょう』というのが私のことだというのは分かった。

 そして、『こうりゃくたいしょう』というのは、『ひろいん』と結ばれるということ。『あくやくれいじょう』は断罪され処刑されるということ。

 最初は、あまりにショックで、もうこのまま死んでしまいたいと思った。
 だけど、『彼女』がシオン兄様を避けるように行動すると、何故かシオン兄様が追いかけて来るようになった。

 そして、まるで子供の頃のように、優しく甘やかしてくれる日々。

 嬉しかった。ずっと、ずっと望んでた時間を手に入れた。

 私とシオン兄様は血が繋がっているから、婚姻することはできない。そんなことは初めからわかってた。
 わかってたけど、私はシオン兄様しか見えなかった。

 でも『彼女』は、ソルという護衛に恋をしたみたいだった。
 最初は、『こうりゃくたいしょう』であるその護衛を避けていたけど、『彼女』の気持ちが傾いていくのは、私には手にとるように分かった。

 その頃には、私がいるのはリアナの心の中ということ、それから、その中に黒い塊があるということに気付いていた。

 その黒い塊は、闇の聖女という力だと、聖の聖女であるフローラという人が言っていた。

 シオン兄様の婚約者になった人。
不思議と怒りがわかなかった。
 きっと、シオン兄様が彼女を特別な好きでないということ。また彼女も兄様を特別な好きでないことに気づいたから。

 思考の中にいると、色んな人の気持ちがよくわかった。

 シオン兄様もフローラという聖女も、ソルという護衛も、みんな『彼女』が特別。

 その『彼女』は、29歳だというけれど、とにかく恋愛に関しては、はっきり言って私以下だと思う。
 みんなの気持ちにまるっきり気づかないし、勝手に勘違いして落ち込んだりする。

 だけど。
ずっと『彼女』を見て来たから、私にとっても『彼女』は特別になった。

 『彼女』が傷ついたり苦しんだりすると、黒い塊は大きくなる。
 思考の中にいる私は、この塊が危険な物だと理解できた。

 思考の中に沈んできた『彼女』とも話せたし、最後に1つくらい良いことをして消えるのもいいかもしれない。

 この塊を、私が呑み込んで消えたら、リアナの中から闇の聖女とやらは消せる。

 私は眠ると言ったから、『彼女』は私が消えても気付かずに済むだろう。29歳というわりに泣き虫だから。

 私はー
とても清々しい気持ちで黒い塊を呑み込んだ。

 今度、生まれてくるときは、『彼女』みたいに愛される存在になりたい。そう思いながら・・・
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

花見 有
恋愛
乙女ゲームの断罪エンドしかない悪役令嬢リスティアに転生してしまった。どうにか断罪イベントを回避すべく努力したが、それも無駄でどうやら断罪イベントは決行される模様。 仕方がないので最終手段として断罪イベントから逃げ出します!

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

処理中です...