推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな

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ヒロイン、ドキドキする

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 アナスタシア様に用意していただいたドレスも、とても素敵で我が家ではとてもじゃないけど買えないようなドレスだったけど・・・

 それ以上に、今着ているドレスは素敵だった。

 私は、男爵令嬢だからと自分を卑下するつもりはないし、お父様お母様の子供で良かったと思っている。

 だけど、綺麗なドレスを綺麗だと羨ましく思う気持ちはやっぱりある。

 もちろんそういうドレスを着れる方は、それ相応の義務もあることは理解しているのだけど。

「素敵・・・」

 夏の青空のような、澄んだ青色のドレスには、所々にピンク色や水色の小さな色石が付けられていて、それがキラキラと輝いている。

 石のおかげか、私のピンク色の髪とも相反せずに、青いドレスは私にあつらえたようにぴったりだった。

 青色・・・
王太子殿下のお色。

 殿下はどうして、このドレスを私に選んで下さったのかしら。

 使用人の方が見せたドレスは、このドレスともう一つ、濃いピンク色のドレスがあった。

 ピンクの髪と瞳の私には、そちらの方が無難だったはず。

 それに、自分の色のドレスを令嬢に贈ることは、婚約者であることを意味するということを、王太子殿下がご存知でないわけがないのに・・・

 胸がドキドキしてる。
おかしいわ。別に王太子殿下のことはなんとも思っていなかったのに。

 着替えた後、お茶会の会場に戻ったら、みんなが私のドレスを見ている気がして落ち着かなかった。

「人を貶めるようなことをする人間を、僕が選ぶことはない」

 私に紅茶をかけた侯爵家のご令嬢に、王太子殿下は冷たく言い放っていた。

 かわいそうだとは思わないわ。
だってあの人は、アナスタシア様が準備してくださったドレスを汚したんだもの。

 アナスタシア様に促されて、王太子殿下は私の手を引いたまま離宮の奥へと進んで行かれる。

 アナスタシア様にドレスの件をお詫びしたいのに。

 でも、たかが男爵令嬢が王太子殿下の手を振り払うなんて出来ない。

「すまなかった」

 しばらく歩いた後、小さな東屋があるところで殿下が立ち止まった。

 すまない?何が?

「嫌な思いをさせてしまった。僕が君のいたテーブルに行かなければ、あんな真似をされることもなかっただろうに」

「それは、殿下が悪いわけではないですから。私は気にしていません。ただ、アナスタシア様にご用意していただいたドレスが汚れてしまったことだけが悔しくて」

「あのドレスも似合っていたが、そうか、アデライン嬢が用意したのか。そうか・・・彼女は望んでいるのか」

 王太子殿下が何か呟かれているけど、アナスタシア様が何を望んでいるのかしら。


 
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