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攻略対象、間違いを正す
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「母上っ!」
僕の悲鳴のような声に、ようやく母上が重い口を開いた。
その内容に、僕もアデライン公爵夫人も、呆然とした。
「本当なのよっ!ここは『愛の歌を聴かせて』っていうラノベの世界なのよ!ダミアン、貴方は攻略対象の一人で、メロディ・ペイジ男爵令嬢がヒロインなの!だから、あなたがヒロインに惹かれるのは当たり前だけど、アナスタシアが婚約者でないと駄目なの!彼女は悪役令嬢としてヒロインに酷いことをして、貴方に断罪されなきゃいけないのよ。その結果、男爵令嬢であるヒロインはみんなに受け入れられるんだから!」
「・・・母上」
「正気の沙汰ではないわね」
母上が必死に話せば話すほど、正気を疑ってしまう。
物語の中と現実の区別がつかなくなっている?
いつから?
母上は賢母と言っても過言でないほどの、立派な方だった。
その母上の、こう言ってはなんだが頭がおかしいって思えるような発言に、僕はゾッとした。
「ダミアン!メイソンだってオスカーだって、そうよ!カイルだってヒロインに惹かれるのよ!攻略対象全員に愛されるヒロインに、貴方が選ばれるためにも、物語通りに進むように修正しなきゃ駄目なの!」
「・・・母上。よく分かりました」
「分かってくれたのね?なら、アナスタシアと・・・」
「父上に進言します。しばらく離宮にてゆっくりなさって下さい」
母上が精神を病んでしまっているのか、それとも本当にそんな物語があるのか、僕には判断できない。
ただ理解るのは、このまま母上を表舞台に置いておくことはできないということだ。
もし、母上の言っていることが正しかったとしても、ここはその物語の世界ではない。
アデライン嬢は決して悪役令嬢?とかいうものではないし、メロディ嬢とも仲良くしている。
それにカイルは欠片もメロディ嬢に惹かれてなどいないし、オスカーだって婚約者と仲良くしている。
ここは僕たちが生きて、自分の意思で動いている世界であって、母上の言うような決められた世界ではない。
母上の妄想のせいで、アデライン公爵家やローレンス公爵家との関係を悪化させるわけにはいかない。
僕にとっては、優しく大切な母上だが、今の状態の母上を王妃として表舞台には置いておけない。
「何を言っているの?ちょっと、ダミアン?」
母上は抵抗していたけど、あの後やって来た父上に話し、数名の侍女たちと共に離宮へと閉じ込めることが決定した。
アデライン公爵夫人には父上と僕が謝罪し、母上の妄言を聞かれた夫人は、この謝罪を受け入れてくれた。
公には、王妃は病気療養に入ると発表することになった。
僕の悲鳴のような声に、ようやく母上が重い口を開いた。
その内容に、僕もアデライン公爵夫人も、呆然とした。
「本当なのよっ!ここは『愛の歌を聴かせて』っていうラノベの世界なのよ!ダミアン、貴方は攻略対象の一人で、メロディ・ペイジ男爵令嬢がヒロインなの!だから、あなたがヒロインに惹かれるのは当たり前だけど、アナスタシアが婚約者でないと駄目なの!彼女は悪役令嬢としてヒロインに酷いことをして、貴方に断罪されなきゃいけないのよ。その結果、男爵令嬢であるヒロインはみんなに受け入れられるんだから!」
「・・・母上」
「正気の沙汰ではないわね」
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いつから?
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「・・・母上。よく分かりました」
「分かってくれたのね?なら、アナスタシアと・・・」
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母上が精神を病んでしまっているのか、それとも本当にそんな物語があるのか、僕には判断できない。
ただ理解るのは、このまま母上を表舞台に置いておくことはできないということだ。
もし、母上の言っていることが正しかったとしても、ここはその物語の世界ではない。
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それにカイルは欠片もメロディ嬢に惹かれてなどいないし、オスカーだって婚約者と仲良くしている。
ここは僕たちが生きて、自分の意思で動いている世界であって、母上の言うような決められた世界ではない。
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僕にとっては、優しく大切な母上だが、今の状態の母上を王妃として表舞台には置いておけない。
「何を言っているの?ちょっと、ダミアン?」
母上は抵抗していたけど、あの後やって来た父上に話し、数名の侍女たちと共に離宮へと閉じ込めることが決定した。
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公には、王妃は病気療養に入ると発表することになった。
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