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第二章
クーデター後の一休み ②
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――コンコン。
殿下達の話をソファーに座って聞いていたら執務室の扉をノックする音が聞こえた。
「――殿下、お楽しみ中申し訳ありませんが陛下がお呼びです。タクト様、スクト様も一緒にとの事です」
アルスト殿下の側近であるデベッシュの声に皆の顔が少し曇る。せっかく久々にお話出来る時間が出来たと喜んでいたけど、やはり未だ事件の後処理で多忙な様子だ。がっかりする気持ちを心の奥に押し込んで「わたくしの事は気にせずにどうぞ」と皆を見送る。
こうして殿下の執務室に一人残っていても仕方ないので、あたしも帰ろうと手荷物を纏めていたら殿下が部屋へと戻って来られた。
「忘れ物ですか?」
そう尋ねると殿下はツカツカとあたしへと歩み寄って来て、そして腕の中へと抱きしめられた。
「……っ!」
突然感じた殿下の温もりにドキリとする。
「……うん、ティアナに口付けするのを忘れた」
そう呟きながら、そっと殿下の唇があたしの唇へと重なる。されるがまま目を閉じて、殿下のシャツの胸元を軽くつまむ。
――コンコン。
執務室の扉を叩く音がして「殿下……」とデペッシュの声が廊下から聞こえてくる。それでも殿下はあたしへの口付けを止める気配はない。
――コンコン。
「……で、んか……呼ばれて……ま……」
「いいから黙って……」
――コンコン。コンコンコンコン。
「…………っ」
「…………」
――ゴンッ!!
「だああぁぁっ!! 分かったよ、今行くから!」
執事からの無言の圧力に負けた殿下は観念してあたしから離れた。あたしは久々の口付けに顔が真っ赤になっているのが分かる。名残惜しそうにしながらも執務室の扉を開ると、廊下で待っていた侍女のマイリ―へとあたしを引き渡す。
「また必ず時間作るから」
そう言って足早にデペッシュと共に廊下の奥へと姿を消して行った。その姿をマイリ―と見送ったあたしは、ゆっくりと長い廊下を歩き始めた。
――まさかこの後暫く……殿下にもお兄様達にも会えなくなる事なんて、この時のあたしは知らなかった。
殿下達の話をソファーに座って聞いていたら執務室の扉をノックする音が聞こえた。
「――殿下、お楽しみ中申し訳ありませんが陛下がお呼びです。タクト様、スクト様も一緒にとの事です」
アルスト殿下の側近であるデベッシュの声に皆の顔が少し曇る。せっかく久々にお話出来る時間が出来たと喜んでいたけど、やはり未だ事件の後処理で多忙な様子だ。がっかりする気持ちを心の奥に押し込んで「わたくしの事は気にせずにどうぞ」と皆を見送る。
こうして殿下の執務室に一人残っていても仕方ないので、あたしも帰ろうと手荷物を纏めていたら殿下が部屋へと戻って来られた。
「忘れ物ですか?」
そう尋ねると殿下はツカツカとあたしへと歩み寄って来て、そして腕の中へと抱きしめられた。
「……っ!」
突然感じた殿下の温もりにドキリとする。
「……うん、ティアナに口付けするのを忘れた」
そう呟きながら、そっと殿下の唇があたしの唇へと重なる。されるがまま目を閉じて、殿下のシャツの胸元を軽くつまむ。
――コンコン。
執務室の扉を叩く音がして「殿下……」とデペッシュの声が廊下から聞こえてくる。それでも殿下はあたしへの口付けを止める気配はない。
――コンコン。
「……で、んか……呼ばれて……ま……」
「いいから黙って……」
――コンコン。コンコンコンコン。
「…………っ」
「…………」
――ゴンッ!!
「だああぁぁっ!! 分かったよ、今行くから!」
執事からの無言の圧力に負けた殿下は観念してあたしから離れた。あたしは久々の口付けに顔が真っ赤になっているのが分かる。名残惜しそうにしながらも執務室の扉を開ると、廊下で待っていた侍女のマイリ―へとあたしを引き渡す。
「また必ず時間作るから」
そう言って足早にデペッシュと共に廊下の奥へと姿を消して行った。その姿をマイリ―と見送ったあたしは、ゆっくりと長い廊下を歩き始めた。
――まさかこの後暫く……殿下にもお兄様達にも会えなくなる事なんて、この時のあたしは知らなかった。
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