【完結】すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭

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エレインの友人

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 この学園では、定期的に学力が身に付いているかを確かめる為のテストが行われている。
 エレインが入学してから、初めてのテストが間近に迫っていた。
 いつもの様に昼食を摂った三人は、真っすぐに図書室へと向かった。
 学園の図書室は王宮の図書館に負けず劣らず広大で、国中の書籍が集められている。
 テストが近い事もあって図書室に来る生徒の数も増えており殆どの席が埋まっていたが、いつも座っていた一番奥の窓際席が、三人の指定席であるかの様に空いていた。
 ルーカスとエレインが並んで座り、ルーカスの向かいにアルフレッドが座るのも、何時もの事である。
 アルフレッドはエレインに好意を寄せてはいるが、マルゲリーターとの婚約が破棄になったわけではないので、一応の体裁は保っているのだ。
 あくまでもルーカスと一緒に行動をしているだけ…と、本人は思っているが、周りの目は違う。
 この頃にはマルゲリーターが補欠入学をした事が周知されており、アルフレッドへ同情する者や、エレインに心変わりしても仕方がないと思う者も増えていた。
 何よりもエレインは首席で入学しただけあって勉強に意欲的であり、所作やマナーは当然の事だが全てにおいて完璧過ぎる事から、近寄りがたい存在となっていた。
 「エリー。テストの出題傾向を分析して、僕が模擬テストを作って来たから、今日はこれを解いてみようか」
 「ありがとうございます、お兄様」
 ルーカスは、妹とこうして机を並べ、勉強を教えてあげるのを夢見ていた。
 マルゲリーターにも何度か一緒に勉強をしようと誘った事もあったのだが、余計なお喋りばかりで全く覚える気が無かったのだ。
 それに比べてエレインは、教えた事を直ぐに理解し、分からない事は理解出来るまで聞いて来る。
 ルーカスは、エレインに勉強を教えるのが楽しくて仕方が無かった。
 優秀な妹に、尊敬される兄でいたいと、己の勉強にも熱心に取り組んでいる。
 アルフレッドも同じくエレインに感化され、負けじと勉学に励む姿は、自然と周りの生徒たちの視線を集めていた。
 目の前でスラスラと答案用紙に答えを記入していくエレインを、アルフレッドとルーカスは微笑ましそうに見つめている。
 「出来ましたわ。少し自信の無い所もあるのですけれど…」
 「ここだね、フルール嬢。ペンが止まっていたから、悩んでいると直ぐに分かったよ。私もよく引っ掛かるから、要注意箇所だ」
 アルフレッドは、見事にエレインの苦手個所を言い当てた。
 「凄いですわ、殿下、要注意箇所なのですね。当日、引っ掛からない様に気を付けますわ」
 定期的に行われる各学年の成績優秀者上位三名には、学園長自ら顧問を務めるクラブへのお誘いが来る。
 そのクラブがどの様な活動をしているのかは、入った者にしか分からない。
 活動内容は、絶対に口外してはいけないという決まりがあるからだ。
 テストで上位三名の中に入る事が出来た、成績優秀者だけが知る事の出来る特権でもあった。
 テストを頑張れば誰でも入会資格が出来る為、クラブに興味のある生徒は切磋琢磨しながらテストに挑むのだが、三学年の枠は厳しかった。
 なぜなら、ルーカスとアルフレッドが上位二名を独占しており、一度も外れた事がないのである。
 三学年の生徒は、最後の一席を巡る激戦区なのだ。

 テストが終わった週末明け、学園に来ると玄関ホールの大きな壁面に、先週受けたテストの結果が各学年ごとに張り出されていた。
 一位から最下位まで張り出されるのだが、元が成績優秀者しかいない学舎なので、最下位になったとしても決して恥ずかしがるような点数ではないのだ。
 最下位が同じ点数だった場合は、アルファベット順に名前が並ぶ為、どこからが最下位なのか探すのも難しい。
 皆己の順位を確かめるべく成績表の周りに集まっていたが、エレインの名は遠目からでもすぐに見つかった。
 「エリー。一位だ、おめでとう。僕は優秀な妹で、鼻が高い」
 「フルール嬢、一位おめでとう。そして、ようこそ我が怪しいクラブへ」
 「アルフレッド、怪しいクラブでは無いだろう。いくら第一王子だからと言っても、理事長に聞かれたら、叱られるぞ」
 「固い事は気にするな、我が友よ」
 そんな二人の戯れ合いも、エレインにとって見慣れた光景になっている。
 「ありがとうございます、嬉しいですわ。お兄様と殿下は、ご自分の順位を確認なさらないのですか?」
 「全問正解で、一位に決まっているからな。見る必要はない」
 「嫌味な奴だな。お前の所為で私は万年二位だと言うのに、少しは遠慮をしたらどうなのだ」
 「僕が手を抜いて一位になったとしても、アルフレッドは嬉しくないだろう。それに、側近として殿下を守る立場なのに、学園の成績で躓いてなどいられる訳が無い」
 「殿下と言わないでくれ。寂しくなるだろう」
 アルフレッドにとってルーカスは、側近という肩書など関係無く、心から気の置ける友人なのである。

 そんな二人のやり取りを楽しげに聞きながら教室までエスコートをされて来たエレインは、名残惜しそうにしているルーカスの腕から手を放し、教室に入って行った。
 何時公爵家が爵位を剥奪され、処罰を受けるか分からない状態にある為、本当なら学園に通う事なくエレインとの思い出作りをしたいのだ。
 しかし普通の令嬢として学園生活を楽しんでいるエレインの姿を見ていると、我儘に付き合わせる事も憚られた。
 ルーカスが学園を去った後でも、困らない様にしてあげる事が、彼なりに考えだした愛情表現だと考えたのだ。
 そんな彼の考えなど微塵も理解していないエレインは、自分に似ているルーカスを慕っており、学園を卒業したら付き合いは無くなるのだろうと寂しく思っていた。
 もともと爵位も高く、付き合えるレベルの相手ではない事もあり、自分からは必要以上に関わる事をしない様にと考えている。
 血の繋がった兄妹であると言うのに、悲しいすれ違いをしているのだった。

 「ごきげんよう、エレイン様。一位おめでとうございます。羨ましいですわ、理事長が顧問をされているクラブに入れるなんて。私も頑張ったのですけれど、残念ながら十位でしたの」
 「ごきげんよう、パトリシア様。ありがとうございます。一位を取れたのは、私だけの力ではありませんのよ。クラブの感想をお伝え出来ないのは残念ですが、楽しんで来ようと思っています」
 声を掛けて来たのは、パトリシア・アンバタサー伯爵令嬢だ。
 気さくで面倒見の良い彼女は、エレインの事を一人のクラスメイトとして接してくれる、唯一の友人になった令嬢でもある。
 性格は正反対なのだが、何となく気が合う二人であった。
 彼女のおかげで、ルーカスと離れた後でも、楽しい学園生活を送る事が出来るのだった。
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