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第七話 指導者
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「第三王女殿下?」
「ああ。クスコ辺境伯だったわね。見て分かりませんか? 鍛錬ですわ」
クスコ辺境伯の眉が上がった。
「鍛錬、ですか」
その口調からするとかなり訝しんでいるのが分かったので、先ほどまで考えていたことを披露するとなるほど、と頷かれた。
「確かにそれは一理ありますが、第三王女殿下はこれまで体力作りをされたご経験はありますか?」
「ないわね」
王女は守られるもの。
そんな認識が当たり前だったから、身体を動かしたことなどなかった。
「でしたら基礎体力を上げてからの方がよろしいかと思いますが」
それもそうなのだけれど、私が目指すのは騎士たちの鍛錬とは方向性が違うのよね。
説明すると、沈黙が落ちた。
やっぱりこういうのは難しいかしら。
「第三王女殿下の懸念は分かりましたが、やはり指導者は居た方がいいかと」
指導者、ね。
騎士団員たちの方を見ると皆、目を逸らした。
ちょっとそれ、どういう意味!?
くすり、と笑ったような気配がして振り返るとクスコ辺境伯の青い瞳と目が合った。
銀髪と青い瞳。
私と同じような銀の髪なのに受ける印象がまったく違う。
いけない、見惚れそうになっていたわ。
「……あなたも私には無理だと言うのかしら」
う、何か拗ねたような言い方になってしまったわ。
「とんでもありません。指導者の件ですがどうでしょう。私に引き受けさせていただけないでしょうか?」
「……はい?」
辺境伯って多忙ではなかったのかしら。
だけど、指導者が欲しいのも事実。
思わず頷きかけた時、聞き慣れた声がした。
「ちょっと待て。クスコ辺境伯」
いつの間に来たのか、マクシムお兄様が来ていた。
恐らくさっきの騎士が呼びに行ったのだろう。
「オデロン、お前ウチのかわいい妹に手を出すなんていい度胸だな」
お兄様、顔は笑っているのに目が違いますが。
クスコ辺境伯はやれやれ、というふうに頭を振った。
「妹離れが出来ていない方にも困りますね。せっかくの善意の申し込みを」
「ロクサーヌには俺かラグーンが教える予定だったんだ」
あら、ラグーン様はお兄様の一番の側近の方ですけれど、いいのかしら?
そんなことを思っているとクスコ辺境伯も同じことを思ったようだった。
「第二王子殿下はご多忙でしょう。それにラグーン殿も第二王子殿下の側近なのですから、お忙しいのでは?」
痛いところを突かれた、というふうに一瞬黙ったマクシムだったが、すぐに言い返す。
「それはお前も同じだろう!!」
「一応連絡は取り合ってます。今のところ急務はないようですのでもうしばらくなら大丈夫ですよ」
流れるような反論だった。
「いや、だが――」
ふ、とクスコ辺境伯が視線をマクシムの背後へ向けた。
「どうやらお迎えのようですよ」
ばたばたと駆け寄って来たのはマクシムと同じ二十代前半と思われる青年だった。
淡い茶色の髪をしたマクシムの側近は緑色の瞳を見開いて声を張り上げる。
「第二王子殿下!! 火急速やかに目を通して頂きたい書類があるのですが!!」
く、とマクシムが拳を握りしめる。
「よりによってこんな時に」
「それでは第二王子殿下。またの拝謁を願っております」
「ああ。ってふざけるなよ。すぐに戻る!!」
妹に手を出すなよー、と叫びながら去って行く様子には王族としての矜持もあったものではないが、皆生温い視線を送っていた。
ずいぶんと気安いけれど、知り合いなのかしら?
疑問が現れていたのだろう。
クスコ辺境伯がああ、と頷いた。
「第二王子殿下には恐れ多いながらも剣の稽古を付けたことがございますから」
ん? お兄様って今二十一よね。
ということはクスコ辺境伯って――
「今年で二十五になります」
また顔に出ていたのか、クスコ辺境伯がそう答えてくれた。
そんなに!?
せいぜい二十歳くらいかと思っていた。
落ち着いた雰囲気はあるけれどどこか若々しさを感じさせる。
「……私とは七歳違うのね」
ただ事実を述べただけなのだけれど、クスコ辺境伯は別の意味に取ったようだった。
「こんなおじさんで嫌でしたら、他の者を斡旋しますが」
その言葉に慌てて首を振る。
「いえ、そうじゃないわ」
と続きは飲み込んでおいた。
流石に初対面の方に若く見えるは失礼かもしれないもの。
クスコ辺境伯の容姿はどちらかというと端麗に近く、整っているのだけれど、その辺りもあって実年齢より若く見えるのだろう。
だけどおじさんって。
見た目とそぐわない言葉に思わず笑みを浮かべそうになり、慌てて抑える。
「いえ。お構いなく」
柔らかい口調で言われて、おや、と思う。
そんなふうに言われるようなことをしたかしら。
「ではまずは動きやすい服装に着替えて下さい。第三王女殿下の主旨は分かりましたが、それは基礎が身についてからの方がよろしいかと思います」
「ああ。クスコ辺境伯だったわね。見て分かりませんか? 鍛錬ですわ」
クスコ辺境伯の眉が上がった。
「鍛錬、ですか」
その口調からするとかなり訝しんでいるのが分かったので、先ほどまで考えていたことを披露するとなるほど、と頷かれた。
「確かにそれは一理ありますが、第三王女殿下はこれまで体力作りをされたご経験はありますか?」
「ないわね」
王女は守られるもの。
そんな認識が当たり前だったから、身体を動かしたことなどなかった。
「でしたら基礎体力を上げてからの方がよろしいかと思いますが」
それもそうなのだけれど、私が目指すのは騎士たちの鍛錬とは方向性が違うのよね。
説明すると、沈黙が落ちた。
やっぱりこういうのは難しいかしら。
「第三王女殿下の懸念は分かりましたが、やはり指導者は居た方がいいかと」
指導者、ね。
騎士団員たちの方を見ると皆、目を逸らした。
ちょっとそれ、どういう意味!?
くすり、と笑ったような気配がして振り返るとクスコ辺境伯の青い瞳と目が合った。
銀髪と青い瞳。
私と同じような銀の髪なのに受ける印象がまったく違う。
いけない、見惚れそうになっていたわ。
「……あなたも私には無理だと言うのかしら」
う、何か拗ねたような言い方になってしまったわ。
「とんでもありません。指導者の件ですがどうでしょう。私に引き受けさせていただけないでしょうか?」
「……はい?」
辺境伯って多忙ではなかったのかしら。
だけど、指導者が欲しいのも事実。
思わず頷きかけた時、聞き慣れた声がした。
「ちょっと待て。クスコ辺境伯」
いつの間に来たのか、マクシムお兄様が来ていた。
恐らくさっきの騎士が呼びに行ったのだろう。
「オデロン、お前ウチのかわいい妹に手を出すなんていい度胸だな」
お兄様、顔は笑っているのに目が違いますが。
クスコ辺境伯はやれやれ、というふうに頭を振った。
「妹離れが出来ていない方にも困りますね。せっかくの善意の申し込みを」
「ロクサーヌには俺かラグーンが教える予定だったんだ」
あら、ラグーン様はお兄様の一番の側近の方ですけれど、いいのかしら?
そんなことを思っているとクスコ辺境伯も同じことを思ったようだった。
「第二王子殿下はご多忙でしょう。それにラグーン殿も第二王子殿下の側近なのですから、お忙しいのでは?」
痛いところを突かれた、というふうに一瞬黙ったマクシムだったが、すぐに言い返す。
「それはお前も同じだろう!!」
「一応連絡は取り合ってます。今のところ急務はないようですのでもうしばらくなら大丈夫ですよ」
流れるような反論だった。
「いや、だが――」
ふ、とクスコ辺境伯が視線をマクシムの背後へ向けた。
「どうやらお迎えのようですよ」
ばたばたと駆け寄って来たのはマクシムと同じ二十代前半と思われる青年だった。
淡い茶色の髪をしたマクシムの側近は緑色の瞳を見開いて声を張り上げる。
「第二王子殿下!! 火急速やかに目を通して頂きたい書類があるのですが!!」
く、とマクシムが拳を握りしめる。
「よりによってこんな時に」
「それでは第二王子殿下。またの拝謁を願っております」
「ああ。ってふざけるなよ。すぐに戻る!!」
妹に手を出すなよー、と叫びながら去って行く様子には王族としての矜持もあったものではないが、皆生温い視線を送っていた。
ずいぶんと気安いけれど、知り合いなのかしら?
疑問が現れていたのだろう。
クスコ辺境伯がああ、と頷いた。
「第二王子殿下には恐れ多いながらも剣の稽古を付けたことがございますから」
ん? お兄様って今二十一よね。
ということはクスコ辺境伯って――
「今年で二十五になります」
また顔に出ていたのか、クスコ辺境伯がそう答えてくれた。
そんなに!?
せいぜい二十歳くらいかと思っていた。
落ち着いた雰囲気はあるけれどどこか若々しさを感じさせる。
「……私とは七歳違うのね」
ただ事実を述べただけなのだけれど、クスコ辺境伯は別の意味に取ったようだった。
「こんなおじさんで嫌でしたら、他の者を斡旋しますが」
その言葉に慌てて首を振る。
「いえ、そうじゃないわ」
と続きは飲み込んでおいた。
流石に初対面の方に若く見えるは失礼かもしれないもの。
クスコ辺境伯の容姿はどちらかというと端麗に近く、整っているのだけれど、その辺りもあって実年齢より若く見えるのだろう。
だけどおじさんって。
見た目とそぐわない言葉に思わず笑みを浮かべそうになり、慌てて抑える。
「いえ。お構いなく」
柔らかい口調で言われて、おや、と思う。
そんなふうに言われるようなことをしたかしら。
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