おバカな婚約者に説教していたらほとんど終わっていた件

神崎 ルナ

文字の大きさ
1 / 9

第1話

しおりを挟む
「君に頼みがあるんだ」

 長年の婚約である王太子にそう言われて、オフィーリア・マベナス公爵令嬢はまたですか、という表情になった。

 このフィルンシア王国は特産と呼ばれるものはないが、常に周辺国の情報を探り、常にその時の最適解を選択してきたため、小国ながらも何とか国の体裁を保っていた。

 王太子のロメオは今年で17になる。

 王族の例に漏れず金髪碧眼の彼は周囲の目を引く美形であり、公の場では一応それらしい態度を取ることができた。

 だが、それだけである。

 幼い頃からの家庭教師が必死に覚えさせた教養や礼儀作法は最低限しか身に付かなかった。

 これが中流程度の貴族なたらまだ良かったのだが、ロメオは王太子である。

 ロメオが9歳の時に急遽、婚約者の差し替えが行われ、容貌よりその中身重視でオフィーリアが婚約者とされたのだった。

 突然の婚約話に当惑したのは本人だけではない。

 マベナス公爵家でも降って沸いたような王太子との縁談に難色を示したが、相手は王家。

 断る訳にもいかず、現状があるのだが。

 オフィーリアは焦げ茶の眉を軽く顰めた。

「今度は何用でしょうか?」

 最初の頃はもう少し優しく言っていたのが、こんなふうに頼みごとをされるのも一度や二度ではない。

 そして最近はロメオの分の公務の手伝いも増え、既に王太子妃教育と学園の授業で時間を取られているオフィーリアに余剰な時間など無いに等しかった。

 それでも自分は王太子の婚約者なのだ。

 婚約者ロメオの失敗は自分の失敗。
 
 今度は何を頼まれるのか、と身構えたオフィーリアの前でロメオは真剣そうな目をして話し出した。

「俺は真実の愛を見付けたんだ」




「……真実の愛、ですか」

 予想もしなかった言葉に流石のオフィーリアの反応も鈍くなってしまう。

「ああ。そうだ。俺はシェリー・ピアーズ男爵令嬢と愛し合っているんだっ!!」

 高らかに宣言したロメオに対するオフィーリアの反応は、というと。

「左様にございますか」

 貴族令嬢としてまた王太子妃候補としては動揺したところなど見せられない。

 オフィーリアの対応は貴族令嬢としては完璧なものだったが、目の前の相手はそうは取らなかったようだ。

「また君はそんな取り澄ました態度しか取れないんだなっ!! 婚約者が他に真実の愛を見付けた、と言ったんだぞっ!!」

 激高したようにロメオが怒鳴り散らすがオフィーリアはその態度を崩さなかった。

「それでは婚約は解消にございますね」

 冷静に返したオフィーリアには殆ど何の感情も浮かんでないように見えた。

「はっ、やはり俺の判断は正しかったようだな。喜べオフィーリア、お前との婚約は解消しない」


 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】真実の愛とやらに負けて悪役にされてポイ捨てまでされましたので

Rohdea
恋愛
最近のこの国の社交界では、 叙爵されたばかりの男爵家の双子の姉弟が、珍しい髪色と整った容姿で有名となっていた。 そんな双子の姉弟は、何故かこの国の王子、王女とあっという間に身分差を超えて親しくなっていて、 その様子は社交界を震撼させていた。 そんなある日、とあるパーティーで公爵令嬢のシャルロッテは婚約者の王子から、 「真実の愛を見つけた」「貴様は悪役のような女だ」と言われて婚約破棄を告げられ捨てられてしまう。 一方、その場にはシャルロッテと同じ様に、 「真実の愛を見つけましたの」「貴方は悪役のような男性ね」と、 婚約者の王女に婚約破棄されている公爵令息、ディライトの姿があり、 そんな公衆の面前でまさかの婚約破棄をやらかした王子と王女の傍らには有名となっていた男爵家の双子の姉弟が…… “悪役令嬢”と“悪役令息”にされたシャルロッテとディライトの二人は、 この突然の婚約破棄に納得がいかず、 許せなくて手を組んで復讐する事を企んだ。 けれど───……あれ? ディライト様の様子がおかしい!?

【完結】やり直しの人生、今度は王子様の婚約者にはならない……はずでした

Rohdea
恋愛
侯爵令嬢のブリジットは、大きな嘘をついて王太子であるランドルフの婚約者の座に収まっていた。 しかし、遂にその嘘がバレてしまう。 ブリジットの断罪の場で愛するランドルフの横にいたのは異母妹のフリージア。 そのフリージアこそがかつて本当にランドルフが婚約に望んだ相手だった。 断罪されたブリジットは、国外追放となり国を出る事になる。 しかし、ブリジットの乗った馬車は事故を起こしてしまい───…… ブリジットが目覚めると、なぜか時が戻っていた。 だけど、どうやら“今”はまだ、ランドルフとの婚約前。 それならば、 もう二度と同じ過ちは犯さない! 今度は嘘もつかずに異母妹フリージアをちゃんと彼の婚約者にする! そう決意したはずなのに何故か今度の人生で、ランドルフから届いた婚約者の指名は、 フリージアではなく、ブリジットとなっていて───

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

地味令嬢を馬鹿にした婚約者が、私の正体を知って土下座してきました

ほーみ
恋愛
 王都の社交界で、ひとつの事件が起こった。  貴族令嬢たちが集う華やかな夜会の最中、私――セシリア・エヴァンストンは、婚約者であるエドワード・グラハム侯爵に、皆の前で婚約破棄を告げられたのだ。 「セシリア、お前との婚約は破棄する。お前のような地味でつまらない女と結婚するのはごめんだ」  会場がざわめく。貴族たちは興味深そうにこちらを見ていた。私が普段から控えめな性格だったせいか、同情する者は少ない。むしろ、面白がっている者ばかりだった。

【完結】記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました

Rohdea
恋愛
誰かが、自分を呼ぶ声で目が覚めた。 必死に“私”を呼んでいたのは見知らぬ男性だった。 ──目を覚まして気付く。 私は誰なの? ここはどこ。 あなたは誰? “私”は馬車に轢かれそうになり頭を打って気絶し、起きたら記憶喪失になっていた。 こうして私……リリアはこれまでの記憶を失くしてしまった。 だけど、なぜか目覚めた時に傍らで私を必死に呼んでいた男性──ロベルトが私の元に毎日のようにやって来る。 彼はただの幼馴染らしいのに、なんで!? そんな彼に私はどんどん惹かれていくのだけど……

貴方の願いが叶うよう、私は祈っただけ

ひづき
恋愛
舞踏会に行ったら、私の婚約者を取り合って3人の令嬢が言い争いをしていた。 よし、逃げよう。 婚約者様、貴方の願い、叶って良かったですね?

私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?

あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。 理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。 レイアは妹への処罰を伝える。 「あなたも婚約解消しなさい」

【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません

Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。 彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──…… 公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。 しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、 国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。 バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。 だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。 こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。 自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、 バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは? そんな心揺れる日々の中、 二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。 実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている…… なんて噂もあって────

処理中です...