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第3話
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「そんなことはないっ!!」
そこで怒鳴り散らしている段階で既にそう告げているようなものだったが、オフィーリアは構わずに続けた。
「左様にございますか。それではこの件は父に報告してもよろしいでしょうか?」
「……構わん」
父であるマベウス公爵は穏健派だが、このことを知ったら怒り狂うことは間違いなかった。
何故ならあの時オフィーリアには別に婚約者候補がいたのだから。
――レッド、と呼んで欲しい。
深い青い瞳が特徴のシャガール辺境伯の令息である彼は少し怒ったようにそう告げた。
まだ5歳の頃の話だ。
父親同士が親友ということもあり、その初顔合わせ以降、辺境に居るのは本当かという位頻繁に顔を会わせることになるのだが、オフィーリアも屋敷内から中々出られない箱入り娘。
年の近い遊び相手がいるのは嬉しかった。
3つ上の彼とはよく遊んだ記憶がある。
その後最初不機嫌そうに見えたのはその名でよくからかわれたことがあった、ということでオフィーリアは警戒されていたらしい。
『そうなの? 素敵な名じゃない? 青も赤も私は好きよ』
オフィーリアの言葉にレッドの瞳が見開かれた。
そんなこともあり、オフィーリアとシャガール辺境伯令息は共に遊ぶことが増えた。
だが、もう昔のことである。
オフィーリアとの話が消えた後、縁談も来ているだろう。
尚こういった事情があるため、オフィーリアの父親であるマベウス公爵はこの王家の横やりを快く思ってない。
未だにぶつぶつ言うことを知っているオフィーリアはロメオを少々気の毒に思った。
この状況では恐らく婚約は解消されるだろう。
父であるマベウス公爵はオフィーリアが寝る間も惜しんで王太子妃教育の勉強をしているのを知っていた。
内心を隠してオフィーリアはロメオに向き直った。
「承知致しました。それではこのこと、父に報告して参ります。それではごきげんよう」
最後にカーテシーを決めてオフィーリアはロメオの執務室を後にしようとした。
人払いをしてしまったため、扉を開けてくれる者がいない。
公の場ではないのだからここでオフィーリアが自分で扉を開けても構わないだろうが、それでは他の者の仕事を取ったことになってしまう。
オフィーリアが廊下に待機しているだろう侍従に声を掛けようとした時、ふいにその扉が開いた。
思わぬ事態にオフィーリアが一歩下がりかけた時、聞いたことのある声がした。
「――オフィーリアッ!!」
「よく頑張ったっ!! これであのバカ王太子との婚約は解消だっ!!」
呆気に取られている内にオフィーリアはマベウス公爵と兄であるハロルドに抱き締められていた。
「お父様、お兄様?」
何故ここに、と聞きかけたオフィーリアは更に驚くことになる。
「……父上、どうしてここに?」
マベウス公爵とハロルドの後に侍従達を連れて国王メガードが入室して来たからである。
慌てて礼を取るオフィーリアに、
「そのままでよい。――ロメオ。お前には失望した」
「は? 父上いきなり何を――」
その続きは言えなかった。
国王が合図すると廊下に居たのだろう騎士が入り、よく訓練された動きでロメオを拘束したのだ。
「父上っ!!」
「この痴れ者がっ!! 己に課せられた公務をマベウス公爵令嬢に押し付けただけでも業腹であるのに、お飾りの王太子妃にするだとっ!? こちらがあれ程苦労してまとめ上げた縁談を愚弄する気かっ!?」
「ですが――」
「もうよい、どちらにせよお前の廃嫡は決まっておる。連れて行け」
「はっ!!」
そこで怒鳴り散らしている段階で既にそう告げているようなものだったが、オフィーリアは構わずに続けた。
「左様にございますか。それではこの件は父に報告してもよろしいでしょうか?」
「……構わん」
父であるマベウス公爵は穏健派だが、このことを知ったら怒り狂うことは間違いなかった。
何故ならあの時オフィーリアには別に婚約者候補がいたのだから。
――レッド、と呼んで欲しい。
深い青い瞳が特徴のシャガール辺境伯の令息である彼は少し怒ったようにそう告げた。
まだ5歳の頃の話だ。
父親同士が親友ということもあり、その初顔合わせ以降、辺境に居るのは本当かという位頻繁に顔を会わせることになるのだが、オフィーリアも屋敷内から中々出られない箱入り娘。
年の近い遊び相手がいるのは嬉しかった。
3つ上の彼とはよく遊んだ記憶がある。
その後最初不機嫌そうに見えたのはその名でよくからかわれたことがあった、ということでオフィーリアは警戒されていたらしい。
『そうなの? 素敵な名じゃない? 青も赤も私は好きよ』
オフィーリアの言葉にレッドの瞳が見開かれた。
そんなこともあり、オフィーリアとシャガール辺境伯令息は共に遊ぶことが増えた。
だが、もう昔のことである。
オフィーリアとの話が消えた後、縁談も来ているだろう。
尚こういった事情があるため、オフィーリアの父親であるマベウス公爵はこの王家の横やりを快く思ってない。
未だにぶつぶつ言うことを知っているオフィーリアはロメオを少々気の毒に思った。
この状況では恐らく婚約は解消されるだろう。
父であるマベウス公爵はオフィーリアが寝る間も惜しんで王太子妃教育の勉強をしているのを知っていた。
内心を隠してオフィーリアはロメオに向き直った。
「承知致しました。それではこのこと、父に報告して参ります。それではごきげんよう」
最後にカーテシーを決めてオフィーリアはロメオの執務室を後にしようとした。
人払いをしてしまったため、扉を開けてくれる者がいない。
公の場ではないのだからここでオフィーリアが自分で扉を開けても構わないだろうが、それでは他の者の仕事を取ったことになってしまう。
オフィーリアが廊下に待機しているだろう侍従に声を掛けようとした時、ふいにその扉が開いた。
思わぬ事態にオフィーリアが一歩下がりかけた時、聞いたことのある声がした。
「――オフィーリアッ!!」
「よく頑張ったっ!! これであのバカ王太子との婚約は解消だっ!!」
呆気に取られている内にオフィーリアはマベウス公爵と兄であるハロルドに抱き締められていた。
「お父様、お兄様?」
何故ここに、と聞きかけたオフィーリアは更に驚くことになる。
「……父上、どうしてここに?」
マベウス公爵とハロルドの後に侍従達を連れて国王メガードが入室して来たからである。
慌てて礼を取るオフィーリアに、
「そのままでよい。――ロメオ。お前には失望した」
「は? 父上いきなり何を――」
その続きは言えなかった。
国王が合図すると廊下に居たのだろう騎士が入り、よく訓練された動きでロメオを拘束したのだ。
「父上っ!!」
「この痴れ者がっ!! 己に課せられた公務をマベウス公爵令嬢に押し付けただけでも業腹であるのに、お飾りの王太子妃にするだとっ!? こちらがあれ程苦労してまとめ上げた縁談を愚弄する気かっ!?」
「ですが――」
「もうよい、どちらにせよお前の廃嫡は決まっておる。連れて行け」
「はっ!!」
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