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第5話
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「――はい?」
これまで一度もこの国では聞いたことのない言葉にオフィーリアの理解が追い付かない。
国王陛下の御前だったがきっと間抜けな顔をしているに違いない。
慌てて表情を引き締めるオフィーリアに、
「まあいきなりそう言っても意味が分からないかもしれんな。正直私達も半信半疑だったからな」
マベウス公爵がそう言って小さなそれを侍従に渡した。
「これを続き部屋へ」
「畏まりました」
侍従が続き部屋へ入り扉を閉めた。
それを確認したマベウス公爵がオフィーリアにある物を渡した。
「……これは?」
こちらも見たこともない形をしていた。
強いて言えば武骨な巻貝といったところか。
「これをこうしてごらん」
言われたように突起を押し、耳に押し当てる。すると、
『……王様の耳は驢馬の耳っ!! 王様の耳は驢馬の耳っ!!』
先ほどの侍従の声で昔のお伽噺の一節が聞こえてきた。
「……」
何と答えたらいいのかとオフィーリアが悩んでいる内に侍従が続き部屋から戻って来る。
「ご苦労だったな」
「何でもないことにございます」
マベウス公爵が侍従を労い、次にオフィーリアを見た。
「それでどうだった?」
「声が聞こえました」
「どのようなものだった」
「……王様の耳は驢馬の耳、と」
「間違いないか」
マベウス公爵が侍従に確認を取る。
「お言葉の通りにございます」
侍従が肯定するとうむ、と国王が頷いた。
「これで分かっただろう。この道具はその場にいなくても状況が理解出来るものなのだ」
「結果としてのぞき見のようになってしまったのは申し訳ないが、念のため状況を確認しておきたくてな。しかし、我が娘が思ったより強くて安心したぞ」
「お父様……」
「いや済まない」
先ほどの啖呵を思い出したのかオフィーリアの頬が羞恥で染まった。
「それにしてもその道具はいつから?」
まさかずっと何年も置いてあった訳ではないだろう。
「ああ。これが置かれたのは一週間程前で、私達が状況を理解したのはつい昨日のことだ」
「――は?」
置かれたのが一週間前で把握したのが昨日?
それは一体どういうことか、とオフィーリアが聞きかけた時、新しい声がして扉が開いた。
「そこから先は私に説明させて下さい」
先ほどまで全く気配のなかった人物にオフィーリアの身が固まる。
「申し訳ない。ずっと待機していたのですが全く呼ばれる気配がありませんでしたので勝手に入室させていただきましたこと先にお詫び致します」
扉を背に立っていたのは20くらいと思われるがっしりした体躯の青年だった。
黒髪に青の瞳の整った顔立ちでありながら精悍な面持ちも見られ、その雰囲気から彼が実戦経験を何度も積んだ騎士であることが伺われる。
(……誰?)
戸惑いを隠せないオフィーリアを認め、青年が笑みを浮かべる。
その間に国王の言葉が下った。
「よい。今回は緊急故な。シャガール辺境伯令息。無礼を許そう」
これまで一度もこの国では聞いたことのない言葉にオフィーリアの理解が追い付かない。
国王陛下の御前だったがきっと間抜けな顔をしているに違いない。
慌てて表情を引き締めるオフィーリアに、
「まあいきなりそう言っても意味が分からないかもしれんな。正直私達も半信半疑だったからな」
マベウス公爵がそう言って小さなそれを侍従に渡した。
「これを続き部屋へ」
「畏まりました」
侍従が続き部屋へ入り扉を閉めた。
それを確認したマベウス公爵がオフィーリアにある物を渡した。
「……これは?」
こちらも見たこともない形をしていた。
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「これをこうしてごらん」
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『……王様の耳は驢馬の耳っ!! 王様の耳は驢馬の耳っ!!』
先ほどの侍従の声で昔のお伽噺の一節が聞こえてきた。
「……」
何と答えたらいいのかとオフィーリアが悩んでいる内に侍従が続き部屋から戻って来る。
「ご苦労だったな」
「何でもないことにございます」
マベウス公爵が侍従を労い、次にオフィーリアを見た。
「それでどうだった?」
「声が聞こえました」
「どのようなものだった」
「……王様の耳は驢馬の耳、と」
「間違いないか」
マベウス公爵が侍従に確認を取る。
「お言葉の通りにございます」
侍従が肯定するとうむ、と国王が頷いた。
「これで分かっただろう。この道具はその場にいなくても状況が理解出来るものなのだ」
「結果としてのぞき見のようになってしまったのは申し訳ないが、念のため状況を確認しておきたくてな。しかし、我が娘が思ったより強くて安心したぞ」
「お父様……」
「いや済まない」
先ほどの啖呵を思い出したのかオフィーリアの頬が羞恥で染まった。
「それにしてもその道具はいつから?」
まさかずっと何年も置いてあった訳ではないだろう。
「ああ。これが置かれたのは一週間程前で、私達が状況を理解したのはつい昨日のことだ」
「――は?」
置かれたのが一週間前で把握したのが昨日?
それは一体どういうことか、とオフィーリアが聞きかけた時、新しい声がして扉が開いた。
「そこから先は私に説明させて下さい」
先ほどまで全く気配のなかった人物にオフィーリアの身が固まる。
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扉を背に立っていたのは20くらいと思われるがっしりした体躯の青年だった。
黒髪に青の瞳の整った顔立ちでありながら精悍な面持ちも見られ、その雰囲気から彼が実戦経験を何度も積んだ騎士であることが伺われる。
(……誰?)
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その間に国王の言葉が下った。
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