3 / 7
初めての創作作業
しおりを挟む
その夜僕はスマホを手に固まっていた。
帰宅して課題も済ませ、夕食等も終えた後気紛れにネット小説を読み漁った。
ほとんどが片想いを扱ったものを探して読み終えたが、自分と似たような、共感できるものはないな、と思った時ふとその一文が止まった。
――自分の想いをノートに書き出す。
これだ、と思った。
こんなに苦しいのは内に秘めているからで、一度何らかの形で表に出してしまえばきっと違うのだろう。
(小説を書くには――。いや、ただこの想いを隠すためなんだからそんなに拘らなくていいだろう)
投稿画面を出したところで指が止まった。
(こんなに書く項目があるのか)
題名、あらすじはともかく――ジャンルやタグ?
(ただこの想いを打ち出したいだけなのに)
途中何度も指が止まりかけながらも何とか欄を埋め、本文を書こうとした時だった。
(はあ? サブタイトルッ!? 僕はそんな長文を書くつもりはないっ!! というかショートショートのつもりなのだけれど?)
頭の中にはてなマークを飛ばしながらスマホを手に固まること十分あまり。
白詰草の指輪が頭を過り、『忘れたのは君』と入力することが出来た。
(サブタイトルでこんなに悩むとは思わなかった……)
既にメンタルをやられながらも指を進める。
ちなみにタイトルは決まっている。
――バウムクーヘンエンド。
仲が良かった二人の内の一方が違う相手と挙式を挙げ、その帰宅後に引き出物のバウムクーヘンを一人で食しながら失恋の痛手に浸る、というシチュエーションだ。
高校生の僕には想像もつかないが――いや、案外想像つくかもしれない。
教会で式を挙げるタキシード姿の光とドレス姿の彼女の姿が浮かんでしまい、指が止まる。
一度深く息を吐いて心を落ち着かせる。
(ここで手が止まってどうするんだ。ああ、丁度いい。二次会の誘いを断るところからにしよう)
意外とスムーズに場面が浮かび、次に白詰草の場面に転換しようとしたが、同じページでは無理があるかも、と次の話へ回すことにした。
(あ、またサブタイトルか。ええと……『君が言ったのに』……いや、これだと何だか詰っているようだから。『君がいったのに』の方が柔らかい印象になるか。というかなかなか気を遣うな。ってこれは本当に小説って訳でもないんだけど。いや、あまりにも現実に近いと身バレするかもしれないしな)
白詰草の場面はスムーズに書けた。
(一番好きなところだしな)
ただ、薬指だという指摘は先生にして貰い、同級の子達はなしにした。
折角の思い出なのに揉めている場面にしたくなかったからだ。
(本当に可愛いな。光)
思い出の中の光にこちらもほんわりしながら話を進める。
(次は――『君が大事だから』)
自分のせいで幼なじみに迷惑がかかる、と距離を取る主人公。
(まあ、僕は違うけれど)
僕の幼なじみ、ということで妬んで光を苛めようとする輩とは物理でオハナシ合いしておいたし。
告白できないのだからせめて光に恋人が出来るまでは一緒にいたい、と思っていたのだけれど。
(もう、ここまでか)
今でさえ嫉妬で光にひどい態度を取ってしまいそうになる。
主人公は距離を置いて疎遠になった。
(やっぱり僕もそうした方がいいのかな……)
この想いを言葉に出すことは出来ない。
書き終えた頃には頭の中がぐしゃぐしゃになっていた。
(公開ボタンは――。どうしようか)
迷いながらも予約公開をセットする。
今すぐにはボタンを押せそうになかったから。
(その頃には少しはマシになっているかな)
だからその小説が公開された日にこんな目に遭うだなんて全く予想もしていなかった。
「ねえ、この小説書いたの、海斗だよね?」
目の前にはハイライトの消えた目をした光。
(どうしてこうなったっ!?)
帰宅して課題も済ませ、夕食等も終えた後気紛れにネット小説を読み漁った。
ほとんどが片想いを扱ったものを探して読み終えたが、自分と似たような、共感できるものはないな、と思った時ふとその一文が止まった。
――自分の想いをノートに書き出す。
これだ、と思った。
こんなに苦しいのは内に秘めているからで、一度何らかの形で表に出してしまえばきっと違うのだろう。
(小説を書くには――。いや、ただこの想いを隠すためなんだからそんなに拘らなくていいだろう)
投稿画面を出したところで指が止まった。
(こんなに書く項目があるのか)
題名、あらすじはともかく――ジャンルやタグ?
(ただこの想いを打ち出したいだけなのに)
途中何度も指が止まりかけながらも何とか欄を埋め、本文を書こうとした時だった。
(はあ? サブタイトルッ!? 僕はそんな長文を書くつもりはないっ!! というかショートショートのつもりなのだけれど?)
頭の中にはてなマークを飛ばしながらスマホを手に固まること十分あまり。
白詰草の指輪が頭を過り、『忘れたのは君』と入力することが出来た。
(サブタイトルでこんなに悩むとは思わなかった……)
既にメンタルをやられながらも指を進める。
ちなみにタイトルは決まっている。
――バウムクーヘンエンド。
仲が良かった二人の内の一方が違う相手と挙式を挙げ、その帰宅後に引き出物のバウムクーヘンを一人で食しながら失恋の痛手に浸る、というシチュエーションだ。
高校生の僕には想像もつかないが――いや、案外想像つくかもしれない。
教会で式を挙げるタキシード姿の光とドレス姿の彼女の姿が浮かんでしまい、指が止まる。
一度深く息を吐いて心を落ち着かせる。
(ここで手が止まってどうするんだ。ああ、丁度いい。二次会の誘いを断るところからにしよう)
意外とスムーズに場面が浮かび、次に白詰草の場面に転換しようとしたが、同じページでは無理があるかも、と次の話へ回すことにした。
(あ、またサブタイトルか。ええと……『君が言ったのに』……いや、これだと何だか詰っているようだから。『君がいったのに』の方が柔らかい印象になるか。というかなかなか気を遣うな。ってこれは本当に小説って訳でもないんだけど。いや、あまりにも現実に近いと身バレするかもしれないしな)
白詰草の場面はスムーズに書けた。
(一番好きなところだしな)
ただ、薬指だという指摘は先生にして貰い、同級の子達はなしにした。
折角の思い出なのに揉めている場面にしたくなかったからだ。
(本当に可愛いな。光)
思い出の中の光にこちらもほんわりしながら話を進める。
(次は――『君が大事だから』)
自分のせいで幼なじみに迷惑がかかる、と距離を取る主人公。
(まあ、僕は違うけれど)
僕の幼なじみ、ということで妬んで光を苛めようとする輩とは物理でオハナシ合いしておいたし。
告白できないのだからせめて光に恋人が出来るまでは一緒にいたい、と思っていたのだけれど。
(もう、ここまでか)
今でさえ嫉妬で光にひどい態度を取ってしまいそうになる。
主人公は距離を置いて疎遠になった。
(やっぱり僕もそうした方がいいのかな……)
この想いを言葉に出すことは出来ない。
書き終えた頃には頭の中がぐしゃぐしゃになっていた。
(公開ボタンは――。どうしようか)
迷いながらも予約公開をセットする。
今すぐにはボタンを押せそうになかったから。
(その頃には少しはマシになっているかな)
だからその小説が公開された日にこんな目に遭うだなんて全く予想もしていなかった。
「ねえ、この小説書いたの、海斗だよね?」
目の前にはハイライトの消えた目をした光。
(どうしてこうなったっ!?)
252
あなたにおすすめの小説
片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした
みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。
今後ハリーsideを書く予定
気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。
サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。
ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。
息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。
ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日”
ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、
ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった
一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。
結局俺が選んだのは、
“いいね!あそぼーよ”
もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと
後から思うのだった。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない
迷路を跳ぶ狐
BL
自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。
恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。
しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。
【完結】神官として勇者パーティーに勧誘されましたが、幼馴染が反対している
カシナシ
BL
僕、フェリスはこの村の村長の息子と付き合っている。小さい頃は病弱だった僕も、今では神官を目指して勉強に励むようになったが、恋人であるアノンは気に入らないみたい。
僕が勉強をすると『俺は要らないんだろ』と森へ入ってしまうアノン。そんな彼を連れ戻すのに日々疲弊していると、ある日、勇者パーティーが訪れ、なんと僕を神官として勧誘したいと言う。
考える時間は、彼らの滞在する、たったの三日間。
アノンは怒り、村中が反対をして――――。
神官を目指す村の子(美少年受け)。
ざまぁと言うより自業自得?
本編三万文字くらい。12話で完結。
番外編二万文字くらい。だいぶコメディ寄り。
サクッとお読みいただけると思います。
※女性向けHotランキング最高17位、いただきました!本作を読んで頂きありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる