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第20話 捜索 ③ (騎士団 side)
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コントワーズ王国には騎士団が五つ存在する。
ひとつは王都に拠点を置くものでこちらは第一騎士団と呼ばれ、主に王都の治安を守ることが役割であるが、それは上級都民が住む地区に限られる。
続く第二騎士団はそれに次ぐ中流の都民が暮らす地区であり、更に第三騎士団は貧民街を主に任される。
第四騎士団は王都以外の領主が個別に持つ騎士団への指導、連携が委ねられ、第五騎士団は辺境を任されている。
そのため第一騎士団の騎士たちは上級貴族の令息で占められることがほとんどであり、例外はなかった。
アレクシアが攫われた翌日、王都のとある大通りを歩く男達がいた。
男達を目にした王都民と思われる男が隣を歩いていた男を軽く小突いた。
「おい。あれって第一騎士団じゃないか」
男達の意匠は簡素ながら上等な布で作られた服を身に付け、背筋をきっちり伸ばした姿はどう見ても上流貴族のそれである。
「嘘だろ。あんなお偉いさんがなんでこんなとこに来てるんだ?」
都民の間でよく見られる簡素な意匠をした、着古して生地が柔らかくなった服を身に付けた男がそう疑問を呈した。
「さあなぁ。まったく。最近また税が上がったってんのに。上等な服着ちまってさ。ってあれ? 後からくる連中、第三騎士団じゃないか?」
後半にきて声が上がったところを見ると第一騎士団より第三騎士団の方が身近に感じられる存在らしい。
「お、そうだ。あの身なりはどう見ても俺達のほうだな。手でも振るか?」
「やめとけ。第一騎士団がいるだろ。ほら、目を付けられないうちに行くぞ。今日の打ち合わせにはアゼンダ商会も来るんだろ」
「そうだったな。あそこは時間には厳しいもんな」
ぼやきながら二人の男達が去るころには大通りは閑散としていた。
「ずいぶんと静かだな」
男達に噂されていた上等な布地の服を身に付け、上背のある男性が灰色の眉の下で青い目を眇めた。
「そうですね。タナ―隊長」
付き従うように歩いていたこげ茶色の髪を伸ばし、首の後ろで括っている男性が同意して、振り返る。
「おい。いつもこんな感じなのか?」
第一騎士団の者と思われる男は彼も含めて三人いた。
彼らの後ろからついて来ていた男達は三人おり、その中で中肉中背の、あまり特徴のない男が前へ出た。
一見すると茶色の髪に薄茶色の瞳をした、どこにでもいるような色合いと顔立ちだが、鍛えられた体躯をしており、温和に見せながらもその目の奥は鋭い眼差しをしていた。
「いえ。第一騎士団ヤード副隊長どの。この大通りは今の時間帯でしたら、もう少し人手があるのですが。恐らく皆様に気を遣われたのでしょう」
その内容を聞いたのか、タナ―隊長、と呼ばれていた男が振り返る。
「それは確か? 第三騎士団団長殿?」
聞かれた第三騎士団団長は軽く肩を竦めてみせた。
「推測ですが間違いないと思います。都民はこんなところに華の第一騎士団がいるなんて思いませんから」
口調は丁寧だがよく聞けば冷たいものが混じっているのが分かる声音だった。
幾人かは顔色を変えたようだったが、当のタナ―隊長はそれほど気にしてないように返す。
「第三騎士団はその出自もあるが、都民たちの人気も高いと聞く。我々もそうありたいものだな」
その声音には邪気がないように思われたが、そこでヤード副隊長が口を挟んだ。
「人が良すぎますよ。タナ―隊長は。元来俺たち第一騎士団はこんな貧民街ではなく、それなりの階級の者達が集うところにいなければならないでしょうに」
「カイサル、口が過ぎるぞ」
「ですが隊長、今日我々が駆り出されたのはこの辺りに例のご令嬢がいるかもしれないから、でしょう? ざっと回りましたが杞憂だったようですね」
その口調には、こんな汚れたところに貴族令嬢がいなくてよかった、と言わんばかりの嘲りが含まれているようだった。
「後は彼らに任せてしまってもいいでしょう? タナ―隊長」
ヤード副隊長のやや投げやりな発言の反応は二つに分かれた。
ムッとして睨みつける者。
うむうむと頷く者。
前者は第三騎士団の者であり、後者は言うまでもなく第一騎士団の者である。
「やめろ、デューク」
前へ出かかった長身の男性を第三騎士団団長が押さえる。
「おや、何か言いたいことでもありますか?」
第一騎士団ヤード副隊長の分かり易い煽りにまたもう一人、今度は大柄な男性が肩を揺らす。
「よせ。ランドルフ。――申し訳ございません」
大通りの端まで来ると、そこから先は世界が違うとでもいうように建物は粗末な作りの物にねり、それまで石畳が敷き詰められていた路は土がむき出しになっていた。
さらにとどめとばかりに簡素な門扉まで付けられたその場所へ着くとタナ―隊長が振り返る。
「ではこの先が第三騎士団の管轄だな」
そう告げて足を踏み出したタナ―隊長をヤード副隊長が止めた。
「お待ちください。タナ―隊長。お時間です」
その言葉に訝し気な表情でタナ―隊長が振り返った。
「何だ? 今日は王都での捜索以外に予定は組んでいないはずだが?」
「この後、コリンズ商会会長との会談が入っております。それからラジット男爵から第一騎士団宛に寄付の申し出が来ております」
「今初めて聞いたが」
「申し訳ありません。失念しておりました」
タナ―隊長が小さくため息をつく。
「それでいつからだ?」
「はっ、実はその――」
予定を聞いたタナ―隊長がそこでようやく第三騎士団団長へ顔を向けた。
「申し訳ない。まさかこんなことになっているとは思わなった。この後の捜索は第三騎士団へ委ねることになるが、よいだろうか?」
この言葉に第三騎士団の血気のはやった者が再び前へ出ようとしたが押し止められた。
「ええ。構いませんよ」
第三騎士団団長がそつなく答え、門扉に手をかけた。
「すまないな。この埋め合わせはまたの機会に」
「お気になさらず」
そんなやり取りを経て第一騎士団の男たちが大通りへ引き返して行く。その姿がだいぶ遠くなったところで長身の男が喚きだした。
「これだからお偉いさんは」
「よせ。デューク」
焦げ茶色の眉をしかめてぼやくデュークを第三騎士団団長が止める。
「ですが団長。あの様子だとどうせあいつら、ウチの管轄に関わる気なんてこれっぽちもなかったようですよ」
傍らにいた大男もうなずく。
「そうだろうな」
それを聞いたデュークが薄い水色の瞳で大男を睨んだ。
「なんだよ。結局ランドルフも似たようなこと考えてたんじゃないか。俺だけ注意されてなんかすっげぇ損した気分」
その言葉に大男が口を開きかけたとき、団長が機先を制するように呼び掛けた。
「デューク。ランドルフ」
「「はっ!! 申し訳ございません!! フリンク団長!!」」
門扉を開き、そこから中へ入ると一気に淀んだ空気が彼らを包んだ。
「うわ。いつ来てもこんなっすかね」
とたんに口元を手で押さえたデュークにランドルフが応じた。
「さあな」
「お前に言ってねぇよ」
とたんに口ゲンカが始まりそうになる二人にフリンクが注意する。
「無駄口はやめろ。タイゼンさんの店までその調子で行くつもりか」
語尾が疑問形にならない台詞に怒りを感じたのか、二人の言葉が重なった。
「「申し訳ありませんでした!!」」
再び揃った二人に諦めたようなため息を漏らし、フリンクが続けた。
「まあ、第一騎士団は上流貴族の出身が多いから、緊張したのも分かるが」
「そうなんですよ、団長。今回第二騎士団の奴らが珍しく出張ってこないと思ったら、この件よりも何か重要案件に関わってるんだ、とかおかしなこと抜かしやがって」
「デューク」
「すいません」
三人が歩を進めるにつれ、大通りの明るさは消え、ひしめき合っている建物から落ちる影が濃さを増す。
狭い路地を慣れた様子で何度か曲がり、この辺りとしては目新しいところのない建物の扉を一定のリズムでフリンクが叩いた。
間を置いて扉が開き、中年の男が顔を見せた。
「ウチに何か用かい?」
「カーランの葉はあるかな?」
フリンクがそう告げると男性は黙って扉を開けた。
「入んな」
中へ入るとそこは日用品を扱っているのか、箒やちり取りといった掃除道具が置かれ、棚には木皿やカップが並んでいるが、すっかり埃にまみれて元の色さえわからなくなっている。
「相変わらずだな。タイゼン」
店内は狭く、彼らが入るとそれだけで立錐の余地もないほどだった。
フリンクの言葉に扉を開けた男――タイゼンが答える。
「用心にこしたことはないからな。ここへ来たのは例の件だろ?」
「話が早いな。さすが当代一の情報屋だな」
「おだてても何も出ないぞ」
肩を竦めたタイゼンに穏やか口調でフリンクが続ける。
「それでどこまで掴めたんだ?」
「そうだな。いくつかあったが一応二つまで絞れたぜ」
服の隠しから出された小さな紙片にはとある邸の所在地が二つ書き記されていた。
「ありがたい。これはいつものだ」
フリンクがこちらも隠しから小袋を取り出してタイゼンへ渡す。
「いつもより多くないか?」
「これでも少ない方だ。この情報がなかったらもっと手間取っていた」
フリンクの言葉にタイゼンはふむ、とうなずいたが、挨拶を交わしたフリンクが扉に手をかけたとき、小さく笑みを作って声をかけた。
「だったらこの後、シーサンスの店へ行ってみな。面白いもんが見られるぜ」
「どういう意味だ?」
「なに、コイツのちょっとしたおまけだ」
そう言ってタイゼンはフリンクたちを店の外へ出した。
ひとつは王都に拠点を置くものでこちらは第一騎士団と呼ばれ、主に王都の治安を守ることが役割であるが、それは上級都民が住む地区に限られる。
続く第二騎士団はそれに次ぐ中流の都民が暮らす地区であり、更に第三騎士団は貧民街を主に任される。
第四騎士団は王都以外の領主が個別に持つ騎士団への指導、連携が委ねられ、第五騎士団は辺境を任されている。
そのため第一騎士団の騎士たちは上級貴族の令息で占められることがほとんどであり、例外はなかった。
アレクシアが攫われた翌日、王都のとある大通りを歩く男達がいた。
男達を目にした王都民と思われる男が隣を歩いていた男を軽く小突いた。
「おい。あれって第一騎士団じゃないか」
男達の意匠は簡素ながら上等な布で作られた服を身に付け、背筋をきっちり伸ばした姿はどう見ても上流貴族のそれである。
「嘘だろ。あんなお偉いさんがなんでこんなとこに来てるんだ?」
都民の間でよく見られる簡素な意匠をした、着古して生地が柔らかくなった服を身に付けた男がそう疑問を呈した。
「さあなぁ。まったく。最近また税が上がったってんのに。上等な服着ちまってさ。ってあれ? 後からくる連中、第三騎士団じゃないか?」
後半にきて声が上がったところを見ると第一騎士団より第三騎士団の方が身近に感じられる存在らしい。
「お、そうだ。あの身なりはどう見ても俺達のほうだな。手でも振るか?」
「やめとけ。第一騎士団がいるだろ。ほら、目を付けられないうちに行くぞ。今日の打ち合わせにはアゼンダ商会も来るんだろ」
「そうだったな。あそこは時間には厳しいもんな」
ぼやきながら二人の男達が去るころには大通りは閑散としていた。
「ずいぶんと静かだな」
男達に噂されていた上等な布地の服を身に付け、上背のある男性が灰色の眉の下で青い目を眇めた。
「そうですね。タナ―隊長」
付き従うように歩いていたこげ茶色の髪を伸ばし、首の後ろで括っている男性が同意して、振り返る。
「おい。いつもこんな感じなのか?」
第一騎士団の者と思われる男は彼も含めて三人いた。
彼らの後ろからついて来ていた男達は三人おり、その中で中肉中背の、あまり特徴のない男が前へ出た。
一見すると茶色の髪に薄茶色の瞳をした、どこにでもいるような色合いと顔立ちだが、鍛えられた体躯をしており、温和に見せながらもその目の奥は鋭い眼差しをしていた。
「いえ。第一騎士団ヤード副隊長どの。この大通りは今の時間帯でしたら、もう少し人手があるのですが。恐らく皆様に気を遣われたのでしょう」
その内容を聞いたのか、タナ―隊長、と呼ばれていた男が振り返る。
「それは確か? 第三騎士団団長殿?」
聞かれた第三騎士団団長は軽く肩を竦めてみせた。
「推測ですが間違いないと思います。都民はこんなところに華の第一騎士団がいるなんて思いませんから」
口調は丁寧だがよく聞けば冷たいものが混じっているのが分かる声音だった。
幾人かは顔色を変えたようだったが、当のタナ―隊長はそれほど気にしてないように返す。
「第三騎士団はその出自もあるが、都民たちの人気も高いと聞く。我々もそうありたいものだな」
その声音には邪気がないように思われたが、そこでヤード副隊長が口を挟んだ。
「人が良すぎますよ。タナ―隊長は。元来俺たち第一騎士団はこんな貧民街ではなく、それなりの階級の者達が集うところにいなければならないでしょうに」
「カイサル、口が過ぎるぞ」
「ですが隊長、今日我々が駆り出されたのはこの辺りに例のご令嬢がいるかもしれないから、でしょう? ざっと回りましたが杞憂だったようですね」
その口調には、こんな汚れたところに貴族令嬢がいなくてよかった、と言わんばかりの嘲りが含まれているようだった。
「後は彼らに任せてしまってもいいでしょう? タナ―隊長」
ヤード副隊長のやや投げやりな発言の反応は二つに分かれた。
ムッとして睨みつける者。
うむうむと頷く者。
前者は第三騎士団の者であり、後者は言うまでもなく第一騎士団の者である。
「やめろ、デューク」
前へ出かかった長身の男性を第三騎士団団長が押さえる。
「おや、何か言いたいことでもありますか?」
第一騎士団ヤード副隊長の分かり易い煽りにまたもう一人、今度は大柄な男性が肩を揺らす。
「よせ。ランドルフ。――申し訳ございません」
大通りの端まで来ると、そこから先は世界が違うとでもいうように建物は粗末な作りの物にねり、それまで石畳が敷き詰められていた路は土がむき出しになっていた。
さらにとどめとばかりに簡素な門扉まで付けられたその場所へ着くとタナ―隊長が振り返る。
「ではこの先が第三騎士団の管轄だな」
そう告げて足を踏み出したタナ―隊長をヤード副隊長が止めた。
「お待ちください。タナ―隊長。お時間です」
その言葉に訝し気な表情でタナ―隊長が振り返った。
「何だ? 今日は王都での捜索以外に予定は組んでいないはずだが?」
「この後、コリンズ商会会長との会談が入っております。それからラジット男爵から第一騎士団宛に寄付の申し出が来ております」
「今初めて聞いたが」
「申し訳ありません。失念しておりました」
タナ―隊長が小さくため息をつく。
「それでいつからだ?」
「はっ、実はその――」
予定を聞いたタナ―隊長がそこでようやく第三騎士団団長へ顔を向けた。
「申し訳ない。まさかこんなことになっているとは思わなった。この後の捜索は第三騎士団へ委ねることになるが、よいだろうか?」
この言葉に第三騎士団の血気のはやった者が再び前へ出ようとしたが押し止められた。
「ええ。構いませんよ」
第三騎士団団長がそつなく答え、門扉に手をかけた。
「すまないな。この埋め合わせはまたの機会に」
「お気になさらず」
そんなやり取りを経て第一騎士団の男たちが大通りへ引き返して行く。その姿がだいぶ遠くなったところで長身の男が喚きだした。
「これだからお偉いさんは」
「よせ。デューク」
焦げ茶色の眉をしかめてぼやくデュークを第三騎士団団長が止める。
「ですが団長。あの様子だとどうせあいつら、ウチの管轄に関わる気なんてこれっぽちもなかったようですよ」
傍らにいた大男もうなずく。
「そうだろうな」
それを聞いたデュークが薄い水色の瞳で大男を睨んだ。
「なんだよ。結局ランドルフも似たようなこと考えてたんじゃないか。俺だけ注意されてなんかすっげぇ損した気分」
その言葉に大男が口を開きかけたとき、団長が機先を制するように呼び掛けた。
「デューク。ランドルフ」
「「はっ!! 申し訳ございません!! フリンク団長!!」」
門扉を開き、そこから中へ入ると一気に淀んだ空気が彼らを包んだ。
「うわ。いつ来てもこんなっすかね」
とたんに口元を手で押さえたデュークにランドルフが応じた。
「さあな」
「お前に言ってねぇよ」
とたんに口ゲンカが始まりそうになる二人にフリンクが注意する。
「無駄口はやめろ。タイゼンさんの店までその調子で行くつもりか」
語尾が疑問形にならない台詞に怒りを感じたのか、二人の言葉が重なった。
「「申し訳ありませんでした!!」」
再び揃った二人に諦めたようなため息を漏らし、フリンクが続けた。
「まあ、第一騎士団は上流貴族の出身が多いから、緊張したのも分かるが」
「そうなんですよ、団長。今回第二騎士団の奴らが珍しく出張ってこないと思ったら、この件よりも何か重要案件に関わってるんだ、とかおかしなこと抜かしやがって」
「デューク」
「すいません」
三人が歩を進めるにつれ、大通りの明るさは消え、ひしめき合っている建物から落ちる影が濃さを増す。
狭い路地を慣れた様子で何度か曲がり、この辺りとしては目新しいところのない建物の扉を一定のリズムでフリンクが叩いた。
間を置いて扉が開き、中年の男が顔を見せた。
「ウチに何か用かい?」
「カーランの葉はあるかな?」
フリンクがそう告げると男性は黙って扉を開けた。
「入んな」
中へ入るとそこは日用品を扱っているのか、箒やちり取りといった掃除道具が置かれ、棚には木皿やカップが並んでいるが、すっかり埃にまみれて元の色さえわからなくなっている。
「相変わらずだな。タイゼン」
店内は狭く、彼らが入るとそれだけで立錐の余地もないほどだった。
フリンクの言葉に扉を開けた男――タイゼンが答える。
「用心にこしたことはないからな。ここへ来たのは例の件だろ?」
「話が早いな。さすが当代一の情報屋だな」
「おだてても何も出ないぞ」
肩を竦めたタイゼンに穏やか口調でフリンクが続ける。
「それでどこまで掴めたんだ?」
「そうだな。いくつかあったが一応二つまで絞れたぜ」
服の隠しから出された小さな紙片にはとある邸の所在地が二つ書き記されていた。
「ありがたい。これはいつものだ」
フリンクがこちらも隠しから小袋を取り出してタイゼンへ渡す。
「いつもより多くないか?」
「これでも少ない方だ。この情報がなかったらもっと手間取っていた」
フリンクの言葉にタイゼンはふむ、とうなずいたが、挨拶を交わしたフリンクが扉に手をかけたとき、小さく笑みを作って声をかけた。
「だったらこの後、シーサンスの店へ行ってみな。面白いもんが見られるぜ」
「どういう意味だ?」
「なに、コイツのちょっとしたおまけだ」
そう言ってタイゼンはフリンクたちを店の外へ出した。
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