死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ

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第22話 舞踏会 オリビアside

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 ――時は少し遡る。



「アレクシア・フォンデル公爵令嬢!! お前には王太子妃となる資格などない!! 今日この場をもってお前との婚約を破棄する!!」

 ちょっと誰が教科書を破ったって!? 

 嘘でしょう? 

 ユクトルの半歩後ろで私――オリビア・ランドールは思い切り首を振ったが、誰もそれを見てくれなかった。

 一度目の生のことを思い出してから私が平和に人生を全うするには、とにかくユクトルが平穏に王太子として過ごして行くことが第一だったのに、今この目の前のボンクラは何と言った!?

 あれほど言っておいたのに!?

 私が一度目の生を思い出したのは五歳の頃だった。

 有り得ない、とは思ったけれど成長するにつれていろいろ合致することが多く、自分がフォンデル公爵家の隠された令嬢だと確信したのは、両親だと思っていた人たちが上流貴族と思われる人とこっそり会っている様子を見たときだった。

 物陰から聞くと彼らは私の近況を話していて、それを上流貴族らしい男性が真剣に聞いているようだった。

 やっぱり私は公爵令嬢なのね。

 その後の判断は早かった。

 私は一度目の生ではなかった学園への入学を両親へ打診し、受け入れて貰えるとすぐに勉強を始めた。

 物凄くやりたくないけど、あの未来になりたくないもの!!

 一度目での贅沢し放題の生活はそれは楽しかった。

 私が本当は公爵令嬢だということを誰かが教えたのかもしれないけれど、私が何をしても不満が出ることはなく、叱責のすべてはあの女に向かっていたし。

 あの革命さえ起きなければ最高の人生だったのに。

 何度考えてもやっぱりユクトルの存在が枷になる。

 こちらのおだてにほいほい乗ってくれるのはいいけど、矜持が高いのか、自分がやらかしたことに対してひと言も謝罪したことがない。

 というか、この俺が話し掛けてやっているんだ、って態度、すっごい苛々するんだけど!!

 一度目の生ではそれほど感じてなかったのだが、今こうして見ているとユクトルの馬鹿さ加ge……こほん、とにかくこれを何とかしないとまたあの結末になってしまう。

 目指せ、お洒落し放題、贅沢な食生活、パーティー三昧な人生よ!!

 そのためにはやっぱり学園生活からユクトルを操らないとね!!

 一度目のことがあるから、ユクトルにどんな態度で何を言えばいいのかはだいたい見当がつく。

 何気ない偶然を装って近付き、それとなく自尊心を満足させるようなことを控えめに告げる。

 そんなことを何度か繰り返すと面白いくらいユクトルが近付いてきた。

 ふふっ、いい調子だわ。

 学園内でユクトルとの仲が噂になってしまったけれど、まあ多少はしょうがないわよね。

 そう思っていたのだけれど、私は学園生活というのを甘く見ていた。

 だんだんユクトルが本当に愛しているのは私だ、という噂が広がり、あの女が苛められているという。

 え、ちょっと早くない?

 確かにあの女のことは気に入らないけれど、物には限度というか順番てものがあるのよ!?

 もしこのままあの女が排除されて万が一私が次の婚約者、なんてことになったら――

 待って、私あんな面倒くさい公務や書類仕事なんてしたくないわよ!!

 私が目指すのはあの女がお飾りの王太子妃、果ては王妃になって、私は側妃で贅沢三昧、って生活なんだから!!

 でも、ユクトルとの愛人生活も悪くなかったけれど、何か今になってくると違う気もする。

 うーん、ここは他の国に行く、って手もあるのかしらね。

 一応勉強してるし、それなりに礼儀も覚えたから、他国で王宮、とはいかなくてもそれなりの貴族のとこに侍女として雇われて見初められてそっちで愛人生活した方が楽かしらね。

 私がそう思ったのにはいくつか理由がある。

 だってこの国の貴族の男ってつまらないんだもの。

 ちょっとしおらしい顔をすればすぐに助けてくれるし、すぐにちやほやしてくれる。

 悪くないんだけどこう何か物足りない、というか。

 とりあえずあの女の悪い噂は否定して、面倒だけどあの女に接触して、って何か最近あの女の態度が違うんだけど!?

 なんというか芯が一本通ったみたいに醸し出す雰囲気がしっかりしている。

 数日観察して、もしかしてと思う。

 まさかあの女も一度目の記憶が蘇った!?

 冗談じゃないわよ、もしあの女が万が一ユクトルの婚約を辞退でもしたら面倒くさいことになっちゃうじゃない!!

 だからお互い一度目の記憶があると分かってからは、目一杯ネコ被ってユクトルとの婚約は破棄しないように説得してたのに!!

「衛兵!! この不届き者を捕らえよ!!」

 おバカなの!?

 その頭の中身は空っぽなの!?

 ユクトルとその側近とも言えるリュックにも話をしておいたのにいったい彼らは何を聞いていたの?

 私はあの女をそこまで追い詰める気はないんだってば!!

 瞬く間にユクトルは王太子かの地位を下ろされることになった。

 これはマズいわ。こっちにも飛び火するかもしれない。

 しばらく壁の花になっていた後、皆が踊りに興じている隙にそっと大広間を退出した。

 これってどうしたらいいのかしら?

 いい後ろ盾だったユクトルが浮上するのは無理だろう。

 私は本当は公爵令嬢だけれど、それがバレる時ってあの女の身元の分かっちゃうのよね。

 公爵令嬢と王女。

 いくら公爵令嬢が上流貴族だといっても王族には負けてしまう。

 下手を打つ前にこの国から脱出した方がいいかしら?

 そんなことを考えていたとき私に声を掛ける男性がいた。

「待ちなさい」

 え? まさかこの人って。

 まさかのまさか、私はフォンデル公爵に声を掛けられ、そのまま別邸に匿われることになったのだけど、これってどう見ても軟禁よね。

 別邸での生活があまりにも窮屈で我慢ができなくなったのでそこを抜け出したところであの生意気な革命家に出会った。

 革命家シャークは北の辺境伯と組んで王都で都民を先導し、その都民を王城へ向かわせることに尽力した立役者のひとりだった。

 もっとおとなっぽい人でやり手だと思っていたのに。

 協力者に名乗りを上げることはできたけれど、逃走中に服を取り替えていたことと、気安い口調を使ったためか、私が本当は公爵令嬢だと言っても冗談はよせ、と言って取り合ってくれない。

 本当のことなのに。

 出会って数日なのにこんなにこだわってしまうのはなぜだろう。
 
 ちょっともやもやしない気持ちを抱えたまま、私は新たな生活を模索していた。
 


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