死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ

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第32話 学園にて

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 アレクシアが学園へ顔を出すことができたのはさらにその翌々日だった。

 あの後医師の診察を受け、体調に異常なしと診断されたのだが、フォンデル公爵を始めとした面々がまだ療養した方がいいと進め、それでは授業が遅れてしまうと反論して何とかここへ落ち着いたのだった。

「アレクシア様、もう具合はよろしいんですの?」

 昼休みになると、ゾフィー・ランズベルト侯爵令嬢がアレクシアの姿を目に留めて話し掛けてくる。

 アレクシアは体調不良ということで休みになっていたが、捜索の際フォンデル公爵が問い合わせたこともあり、ある程度の事情は伝わっているようだった。

 ちなみにあの目立つ髪と瞳はまた違う最新型の魔道具で封じてあった。それなら最初からそれを使えばよかったのではないか、という話だが、アレクシアが生まれた頃にはまだ開発されておらず、また魔法に関しては後発国となるコントワーズ王国にはなかなか情報が入ってこなかったらしい。

 だがあの魔道具の不具合の内容を聞いたときはこちらの魔道具にしてほしかった、とアレクシアは切に思った。

 まさかあんな不具合だなんて。

「アレクシア様?」

 気遣うようにこちらを見る翠の瞳にアレクシアは軽く頷く。

「ええ。もう大丈夫ですわ。ご心配をお掛けして申し訳ありません」

 よかった、とゾフィーが息を吐いた。

 食堂で話をするわけにもいかず、またアレクシアとしては初めてできた友人である。全てとはいかないが差し障りのないことくらいは話しておきたかったため、食堂で昼食を摂った後、ガゼボに誘うとゾフィーは二つ返事で応じてくれた。

「最初にお話を聞いたときには一体どうなることかと思いましたが」
 
 欠席していた間のことを聞いているとゾフィーが、ああ、と思い出したように頬に手を当てた。

「そう言えばランドール男爵令嬢もひどい風邪を引いたとかでお休みされていますね。こちらはまだ登園されていないようですけど、よほどひどい症状なのでしょうか」

 ゾフィーの言葉を聞いてアレクシアは複雑な表情になった。

 オリビアはなぜか革命軍に加担していたとかで処分保留のまま、地下牢に収容されていた。

 本人は否定しているが、革命軍のリーダーのアジトに出入りしていたのはさまざまな証言があり、とても見過ごせるものではないらしい。

 クラスター公爵は監禁されていた地下牢から一旦は救出されたが、アレクシア誘拐等でこちらも逃走できないように新たな牢へ収容されている。

 そこへ加えて王弟サンダルフォンの謀反もあり、王宮はしばらくの間落ち着かないだろう。

「さあ、どうなのでしょう。私にはわかりかねます」

 無難な言葉を返してアレクシアは話題を変えた。



 しばらく今ゾフィーのクラスで流行り出した髪型や装飾品のことを話していると、人の気配がした。

「ちょっとお邪魔してもいいかな?」

 ユージーンとその側近候補であるマッテオ・アルケゾミス侯爵令息がいた。

 アレクシアとしては少し気まずい感じがしたが、ゾフィーの言葉の方が早かった。

「まあ、もちろん構いませんでしてよ。ねえ、アレクシア様」

 そこでアレクシアの様子を見て、気乗りしない雰囲気をしていることに気付かれてしまったようだが、アレクシアは軽く首を振って気にしないで、と返す。

「少し報告したいことがあったんだけど、お邪魔だったかな?」

「とんでもございません!!」

 ユージーンの問い掛けに焦ったように返すゾフィーが気の毒になり、アレクシアは口を挟んだ。

「ええ。もちろん何の支障もありませんわ」

 それに答えたのはマッテオの方だった。

「助かります。どうしてもフォンデル公爵令嬢と話をしたいとすね……痛っ、暴力反対です!!」

 脛を押さえるマッテオの肩を軽く押してユージーンが前へ出た。

「歓談中失礼するよ。ああ、ランズベルト侯爵令嬢は気を遣わなくていいから。まずは病気の快癒おめでとう。それと早いが、帰国が決まったので挨拶しておこうと思ってね」
 
 ――帰国?

 いきなりのことに頭の中の整理がつかないアレクシアの前でゾフィーが声を上げた。

「まあ、最初に聞いたお話では卒業までいらっしゃるとお聞きしておりましたけれど」

「俺もそう思っていたんだけどね。幾つか片付けないといけないことがで出来たからね」

 確かにこの国の現状を考えると帰国した方がいいのだろう。

 いろいろなことが一気に明るみになったため、コントワーズ王は貴族議会を開いたがすぐには結論がでないらしい。

 だが概ねコントワーズ王の血を引くアレクシアへ譲位を、という意見が多勢のようだった。

 王妃は反対らしいが、ユクトルの父親が王弟サンダルフォンだったと分かった時点で発言力を失っている。

 舞踏会のユクトルの暴言もあり、王家の権威は失墜しているため、アレクシアへの譲位は早い時期に行われそうな気がする。

 革命軍を指揮した北の辺境伯とクラスター公爵の処罰も未定のままだ。

 何気に二人共人望や権力のある人物なため、落としどころをうまく決めないと反乱が起きてしまう可能性もある。

 重大事なため、まだこれらのことは公表されていないので、今のうちに帝国へ帰国するのは良い判断と言えた。

 帰ってしまわれるのね。

『申し訳ありませんがお受けできません』 

 そう断った時のユージーンの表情は何とも言えないものをしていた。

 まるで断られるのは予感していたかのように話題を変えたユージーンにアレクシアは何も言えなかった。

 これが正しいことなのに。

 今生は有り得ないことばかり起きた気がするが、ケインの母親を変えるわけには行かない。

 こういったことは分からないが、万が一アレクシアがユージーンと結ばれたことによってケインが生まれて来ない、などという事態は防ぎたい。

 だけど、どこか納得していらっしゃらないようなのね。

 もしからしたらだが、一旦は引くが後から何か策を弄してアレクシアがユージーンに嫁さなければならない事態を作り上げてしまうかもしれない。

「フォンデル公爵令嬢?」

 だからアレクシアは心を決めた。

「第二王子殿下、後で少しだけお時間頂けないでしょうか」

 これでこの方と会うのは最後にする。






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