世間知らずの王子様を教育していたら、嫁として誘拐されました

ぺきぺき

文字の大きさ
6 / 13
本編

後編2

しおりを挟む
藍の10歳はなれた兄・ゆうは二年前に花嫁を迎え、蒼ノ宮家の直系の嫡男として秘密の教育を受けていた。そこには次代の蒼ノ宮を担うものとして藍の下の兄・いくも参加していた。

蒼ノ宮家は大きな問題を抱えていた。


まずは、竜の誕生数の低下。

蒼ノ宮家の敷地内においても竜を飼育して、卵を得るべく、雄と雌をめあわせている。しかし、50年ほど前から卵の数は減少し、ここ10年は一つも生まれていない。


そして、蒼ノ宮姓の竜使い数の減少。

蒼ノ宮の直系三兄妹とそのはとこ一人をのぞいて、その年のころの蒼ノ宮姓の竜使い候補たちは竜に選ばれていない。
蒼ノ宮姓以外の竜使い数は変わらないのに対して、蒼ノ宮家の竜使い数は50年ほど前から減少の一途をたどっている。


さらに、将来を担う子供の出生数も低下している。

一番小さい子供が15歳だ。若い夫婦は何組もいるし、みな励んでいるのだが、全く子供が生まれないのだ。
これもまた、50年ほど前から始まっている。


50年前に何があったのか。蒼ノ宮家最大の機密事項を雄と郁も知ることとなった。



蒼ノ宮家にずっとある始祖待望論。
始祖のように竜と心を通わせる存在が現れ、蒼ノ宮家を再び盛り上げる、というあれ。

これはあながち間違いではないのだ。


蒼ノ宮家では約100年おきに”龍の子”と呼ばれる、竜に好かれる特別な力を持った子供が生まれるのだ。

その子が蒼ノ宮家にいる限り、竜たちは蒼ノ宮家の者を好いていてくれる。そう信じられている。



先代の”龍の子”が亡くなったのが50年前だ。


先代の”龍の子”は、竜使いではなかったため、独り立ちしようと蒼ノ宮邸を出ていこうとしたらしい。
自分が”龍の子”だとは知らなかったのだ。そこを家の大人たちに止められ、森奥の離れに幽閉され…。

そして年老いて亡くなった。


”龍の子”が生まれると、竜たちは喜んで吠えるらしい。

しかし、まだそのような子供は生まれていない。しかし、時期的には、もうとっくに生まれているはずなのだ。
約20年前に先代が生まれてから100年が経過していた。



「その”龍の子”はどのような力をもって生まれてくるのですか?」

「ああ。竜たちと脳内でんだ。念話とでも言うのかな。」



小さいころから藍を守ってきた兄二人はすぐにピンときた。



ーーーー


藍が幽閉されたのは蒼ノ宮家の敷地内にある森の奥の離れだ。このあたりの森は竜使いを持たないが、蒼ノ宮家が飼育している竜たちの生息域で、蒼ノ宮家の直系と訓練された世話係以外の人を受け付けない。

つまり、半自然の要塞となっている。


『やっぱり、藍が”龍の子”だってバレてしまったんじゃないかしら。』

幽閉された藍の支えになったのは、瑠璃との念話が結局一度も途切れず,つながったままだったことだ。

「外はどうなっているんだろう?」

幽閉されて三日。飛世にはどんな話が伝わっているのだろう。

自分が”龍の子”であることは竜使い候補になった時に、父の竜・千里せんりから伝えられた。




『あなたは私たち、竜と脳内で会話することができるの。でもそれを他人に知られてはだめよ。』


そうして教えられた先代の”龍の子”の悲しい生涯。竜たちは”龍の子”を飼殺すことになってしまった結末をずっと悔いていた。
その思いが脈々と蒼ノ宮家の竜たちに継がれ、次の”龍の子”が自由に生きられるように、竜たちから話しかけることを禁じたのである。


しかし、生まれたばかりの竜たちにそんな分別はない。

だから、藍が子供の竜と接する立場になる際に、事実を打ち明けることにしたのだ。



『とりあえず、藍は大人しくしてなさい。大人しくしていれば、先代のようにこともないわ。おそらく、じじいたちも本当に藍が”龍の子”なのか半信半疑なのよ。』

「わかった。」

『私はすぐにこの試験を終わらせて、邸に帰るわ。合格だけはしっかりもらうから安心して。もう最後の地点だし、ここから飛ばせば三日で帰れるわ。』

それは、速すぎる。守も付き合って飛ばしているのだろう。なんだか申し訳ない。



藍が幽閉された離れは人の接近は禁じられていたが、竜の接近は禁じられていない。

兄②の竜・すももは、兄の代わりになのか、よく離れのそばまで来て兄②が語り聞かせたと思われる近況を教えてくれた。



どうやら、私は死亡扱いされ、飛世との婚約は正式に断られてしまったらしい。

飛世は何度か蒼ノ宮家に来て、遺体を見せろ、証拠を出せ、と偉い方を問い詰めているらしいが全員に箝口令がだされて誰も何も話すことはないそうだ。

…こういうときは、古い頭で結束が強くて嫌になる。

兄②は藍を離れから出そうと奮闘しているようだが、父上と兄①が賛成に回ってしまい、旗色が悪い。


どうやら、私が”龍の子”だと見破ったのも兄①だったようだ。

兄上、どうして…と悲しい気持ちになる。現状、あんなに兄二人に応援されていると思っていた竜使いへの夢も断たれてしまった。


しかし、兄①も藍に薬を飲ませたり、拘束して自由を奪うことには反対しており、離れへの幽閉で済んでいるのはそのためかもしれなかった。


とりあえず、今は飛世からの、つまりは王家からの追及をかわすこと。それに注力しているようだ。



先日帰ってきた、瑠璃。守にせっついて藍を一人前に昇進させた。

公式には死亡したことになっている藍も、記録上では一人前として亡くなったことになる。ここに初の女竜使いが誕生したわけだ。


その後、瑠璃は引きずってでも連れて行こうとする蒼ノ宮の男衆を振り払い、どこかへ飛んで行った。そうだ。



もちろん、藍は行き先を知っている。

瑠璃は飛世の屋敷へと飛んで行ったのだ。


『任せて!』なんて言われたけれど、瑠璃と飛世は意思疎通ができない。いったいどうするのか。




藍が幽閉されて一週間が経過していた。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

処理中です...