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孤児院の慰問の帰りに子犬を拾いました
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私はカーラ・モルガン、この国の王女よ。
それもお父さまの国王の唯一人の子供なの。
本来ならば皆に敬われて奉られる立場なのに。
普通の国ならば……
でも、この国モルガン王国は小国でいつも大国の間に立って苦労している。最近は北の大国ノース帝国の側室の王女を娶った宰相が我が物顔に宮殿内を歩いているの。大国の一つと関係の深い宰相が力を持ってきて、我が王族は蔑ろにされがちなの。
孤児院の慰問にサーヤと騎士たちを引き連れて向かおうとした時だ。
「ああら、カーラ様。どちらにいかれますの?」
私は一番捕まりたくない相手に捕まってしまった。
宰相の娘アレイダだ。
この娘はいつも私に絡んでくるのだ。取り巻きの多くの令嬢と一緒に……
「いえ、ちょっとそこまで……」
私が言葉を濁すと、
「あらそうですの。でもその衣装でお外に出られるのはどうかと思いましてよ」
アレイダが私の地味な衣装を目ざとく見つけて指摘した。
「本当ですわ。この国の王女様にしてはあまりにも地味ではありませんこと」
今から孤児院に行くから汚れていい格好だからこの服にしたのに……
「本当にアレイダ様と比べるととても地味ですわ」
「まあ、コリー様、アレイダ様の衣装と比べるのは可愛そうですわ」
「そうですわよ。何しろアレイダ様は宰相様の娘ですもの。このモルガン王国の中でも一番の衣装をお持ちですわ」
「ああら、よくおわかりになりまして。この衣装はサウス帝国のフェルナンド殿下から頂いた衣装で東洋の絹という布を使っているそうですわ」
「まあ、サウス帝国の殿下から頂いたのですか!」
「それはとても高価なものなんでしょうね」
「まあ、お値段は判りませんけれど、王女殿下では中々手に入らないと存じあげますわ」
自慢気にアレイダは言ってくれた。
「でもアレイダ様もお母様が北の大国ノース帝国の皇女様で、婚約者が南の大国サウス帝国なんて凄いですわ」
「北と南の帝国がアレイダ様の味方なんて天下無敵ですわね」
「本当に王女殿下と並んで立たれたらどちらが王女様か判りませんわ」
「コリー、それは王女殿下に失礼よ。ねえ、殿下」
私もいい加減にアレイダに付き合うのに疲れてきたので、
「いえ、私は急いでおりますので、これで」
これ幸いと逃げ出そうとしたのだ。
「左様でございますか? これから王宮の庭園でお茶会を開きますのに、殿下がいらっしゃらないなんて、残念ですわ」
アレイダの声に私の後ろについていたサーヤと騎士たちは今にも怒りだしそうになっていた。
私が王宮の女主なのに、その女主を差し置いて、宰相の娘が我が物顔で王宮を闊歩しているのだ。
本来ならば許されることではなかった。
でも、宰相は北の帝国の側室の娘を妻にしていたから、力は強いのだ。下手したら王家よりも支持する貴族の数は多い。そんな宰相の娘とやり合ったら、大変なことになる。
私は騎士たちを押さえつつ、王宮の外に出たのだった。
孤児院の慰問は楽しかった。子供たちは無邪気で王宮内のようなギスギスした感じはなかった。
私は久々に童心に帰って子供たちと遊んであげたのだ。
子供たちが疲れて昼寝している間に、私達は帰路についた。
私は久々にリフレッシュできた。
でも、また、アレイダらが闊歩する王宮に帰るのかと思うとげんなりした。
「はああああ、このまま何処かに言ってしまいたいわね」
「姫様、そんな事をおっしゃいますな」
思わず呟いた言葉を、サーヤに注意されてしまった。
「我々共は姫様の味方です」
サーヤの言葉に、騎士たちも頷いてくれるが、最近は宰相も多くの兵士を抱えているようで、まともに戦ったら下手したら負けるかもしれない。
どちらを見ても良いことはない。
そう思ってうつむいた視線の先の木々の茂みの下に私は白いものを見つけた。
「なんだろう?」
思わず私は駆け寄っていた。
そこには傷ついた子犬がいたのだ。
「まあ、大変だわ」
私は思わず子犬を抱き上げたのだ。
「姫様、汚れます」
「構わないわよ。それよりもすぐに連れて帰って手当をしなければ」
私は子犬を抱きかかえて急いで王宮に帰ったのだ。
王宮の典医に見せると、
「まあ、姫様。どこから拾ってこられたのですか?」
咎めるように言われたが、言葉とは裏腹にあっさりとヒールをかけてくれた。
「なにかの動物に襲われたみたいですな。まあ、これで問題ないでしょう」
典医はあっさりと言ってくれた。
「ありがとうございます。先生」
私は子犬を抱きながら言った。
「姫様、お召し物が汚れてしまいましたし、お風呂になされては」
「そうね。この子も一緒に洗いましょうか」
「それがよろしうございます」
「きゃん」
何故か子犬が叫んで逃げようとしたが、私はギュッと抱きしめた。
「この子の名前はどうされるのですか?」
サーヤが聞いてきた。
「そうね、ころちゃんなんかどうかしら?」
「コロコロして可愛いですものね」
サーヤも頷いてくれた。
「さあ、ころちゃん。きれいにしましょうね」
私は子犬を抱っこしてオフロに入ったのだ。
何故かころちゃんが私の胸の中で真っ赤になって恥ずかしがっているような気がしたが、もふもふしていて可愛いので、私はぎゅっと抱きしめていた。
湯あたりでもしたのかお湯から上がった後に、ぐったりしていた。
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今日は出来限り多くのお話アップする予定です。
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本来ならば皆に敬われて奉られる立場なのに。
普通の国ならば……
でも、この国モルガン王国は小国でいつも大国の間に立って苦労している。最近は北の大国ノース帝国の側室の王女を娶った宰相が我が物顔に宮殿内を歩いているの。大国の一つと関係の深い宰相が力を持ってきて、我が王族は蔑ろにされがちなの。
孤児院の慰問にサーヤと騎士たちを引き連れて向かおうとした時だ。
「ああら、カーラ様。どちらにいかれますの?」
私は一番捕まりたくない相手に捕まってしまった。
宰相の娘アレイダだ。
この娘はいつも私に絡んでくるのだ。取り巻きの多くの令嬢と一緒に……
「いえ、ちょっとそこまで……」
私が言葉を濁すと、
「あらそうですの。でもその衣装でお外に出られるのはどうかと思いましてよ」
アレイダが私の地味な衣装を目ざとく見つけて指摘した。
「本当ですわ。この国の王女様にしてはあまりにも地味ではありませんこと」
今から孤児院に行くから汚れていい格好だからこの服にしたのに……
「本当にアレイダ様と比べるととても地味ですわ」
「まあ、コリー様、アレイダ様の衣装と比べるのは可愛そうですわ」
「そうですわよ。何しろアレイダ様は宰相様の娘ですもの。このモルガン王国の中でも一番の衣装をお持ちですわ」
「ああら、よくおわかりになりまして。この衣装はサウス帝国のフェルナンド殿下から頂いた衣装で東洋の絹という布を使っているそうですわ」
「まあ、サウス帝国の殿下から頂いたのですか!」
「それはとても高価なものなんでしょうね」
「まあ、お値段は判りませんけれど、王女殿下では中々手に入らないと存じあげますわ」
自慢気にアレイダは言ってくれた。
「でもアレイダ様もお母様が北の大国ノース帝国の皇女様で、婚約者が南の大国サウス帝国なんて凄いですわ」
「北と南の帝国がアレイダ様の味方なんて天下無敵ですわね」
「本当に王女殿下と並んで立たれたらどちらが王女様か判りませんわ」
「コリー、それは王女殿下に失礼よ。ねえ、殿下」
私もいい加減にアレイダに付き合うのに疲れてきたので、
「いえ、私は急いでおりますので、これで」
これ幸いと逃げ出そうとしたのだ。
「左様でございますか? これから王宮の庭園でお茶会を開きますのに、殿下がいらっしゃらないなんて、残念ですわ」
アレイダの声に私の後ろについていたサーヤと騎士たちは今にも怒りだしそうになっていた。
私が王宮の女主なのに、その女主を差し置いて、宰相の娘が我が物顔で王宮を闊歩しているのだ。
本来ならば許されることではなかった。
でも、宰相は北の帝国の側室の娘を妻にしていたから、力は強いのだ。下手したら王家よりも支持する貴族の数は多い。そんな宰相の娘とやり合ったら、大変なことになる。
私は騎士たちを押さえつつ、王宮の外に出たのだった。
孤児院の慰問は楽しかった。子供たちは無邪気で王宮内のようなギスギスした感じはなかった。
私は久々に童心に帰って子供たちと遊んであげたのだ。
子供たちが疲れて昼寝している間に、私達は帰路についた。
私は久々にリフレッシュできた。
でも、また、アレイダらが闊歩する王宮に帰るのかと思うとげんなりした。
「はああああ、このまま何処かに言ってしまいたいわね」
「姫様、そんな事をおっしゃいますな」
思わず呟いた言葉を、サーヤに注意されてしまった。
「我々共は姫様の味方です」
サーヤの言葉に、騎士たちも頷いてくれるが、最近は宰相も多くの兵士を抱えているようで、まともに戦ったら下手したら負けるかもしれない。
どちらを見ても良いことはない。
そう思ってうつむいた視線の先の木々の茂みの下に私は白いものを見つけた。
「なんだろう?」
思わず私は駆け寄っていた。
そこには傷ついた子犬がいたのだ。
「まあ、大変だわ」
私は思わず子犬を抱き上げたのだ。
「姫様、汚れます」
「構わないわよ。それよりもすぐに連れて帰って手当をしなければ」
私は子犬を抱きかかえて急いで王宮に帰ったのだ。
王宮の典医に見せると、
「まあ、姫様。どこから拾ってこられたのですか?」
咎めるように言われたが、言葉とは裏腹にあっさりとヒールをかけてくれた。
「なにかの動物に襲われたみたいですな。まあ、これで問題ないでしょう」
典医はあっさりと言ってくれた。
「ありがとうございます。先生」
私は子犬を抱きながら言った。
「姫様、お召し物が汚れてしまいましたし、お風呂になされては」
「そうね。この子も一緒に洗いましょうか」
「それがよろしうございます」
「きゃん」
何故か子犬が叫んで逃げようとしたが、私はギュッと抱きしめた。
「この子の名前はどうされるのですか?」
サーヤが聞いてきた。
「そうね、ころちゃんなんかどうかしら?」
「コロコロして可愛いですものね」
サーヤも頷いてくれた。
「さあ、ころちゃん。きれいにしましょうね」
私は子犬を抱っこしてオフロに入ったのだ。
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