もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
10 / 85

私の子犬がいなくなりました

しおりを挟む
 私は腕の中の暖かい何かが無いのに気づいた。

 ギュッと抱き締めて、あれっ? 居ない!

「ころちゃん?」
 私は白い子犬を呼んだ。

 どこにいるんだろう?

「ころちゃん!」
 もう一度呼んでも返事がない。
 いつもはワンってすぐ鳴いて私のところに尻尾を振って直ぐに駆けつけてくれるはずなのに?
 今日はどうしたんだろう?

 私は少し慌てた。

「姫様、お目覚めですか?」
 物音を聞き付けて、サーヤが入ってきた。

「サーヤ、ころちゃんが居ないの!」
 私が慌てて言うと、
「ちょっと散歩にでも行ったのでしょう。直ぐに帰ってきますよ。それよりも早くお着替え下さい」
「でも、ころちゃんが」
「姫様、寝巻きのままではころちゃんを探しには行けませんよ」
 私の心配を流して、サーヤはそう言ってくれた。
 確かに、寝巻きのままでは外に探しに行けない。
 私は仕方なしにサーヤに任せて、着替えた。

 そして、朝食を食べるのもそこそこにころちゃんを探しに出たのだ。
 騎士の皆にも協力してもらって、部屋の中や建物の周りを探したのだ。

 でも居なかった。

 変ね?
 私は焦りだした。
 いつもは朝には必ず私の胸の中にいたのだ。
 それがいないばかりか、周りを探してもいない。何かあったんだろうか?
 私はとても心配になった。

「どうしましょう、サーヤ? これだけ探してもいないということは、獣か何かに襲われたのかも知れないわ」
 私が心配して言うと、
「姫様、王宮のの中には獣などおりませんよ」
 即座にサーヤが否定してくれたが、
「でも、二度と姿を宰相らの前に見せるなって言われたのに、ころちゃんは宰相の所に行ったのかも知れないわ」
 私が心配して言うと、
「それはないと思いますけど、あの子犬は見た目よりは賢いと思います。よく人の言うことを聞いてくれますし、人の言葉が判るのではないかと、不思議に思った程ですもの。危険なところには近付かないと思いますよ」

「そうは言ってもころちゃんは最初に待ってと言っても飛び出して、宰相夫人に吠えたじゃない!」
 私は言うが
「まあ、子犬ですからそこは仕方がないかと」
 サーヤが呆れて言ってくれるけど、
「じゃあ、何処に行くか判らないじゃない。宰相の所に迷って行ったかもしれないわ」
 私が心配して言うと、
「それとなく、様子を探って参りましょうか?」
 騎士の一人がそう言ってくれたので私はお願いした。

「それとなく周りの者に聞いてみましたが、宰相の部屋の近辺では何も起こっていないかと」
「周りの者にも聞いてみましたがころちゃんを見たものはないとのことでした」
 騎士さん達が聞いて来てくれた。

 ひと安心したけれど、ころちゃんは何処に行ったんだろう?
 私達はもう一度ころちゃんが隠れそうなところを必死に探した。
 でも、ころちゃんは何処にも居なかったのだ。

 ころちゃんの事を調べるうちにころちゃんは時々夜に出歩いていたことが判明した。

 どうやって外に出たんだろう?

 扉も全て閉めていたし、騎士たちも私の部屋の周りを警戒していたのに……
 あんなに小さな子犬が一匹でウロウロしていたなんて信じられなかった。

 特にころちゃんは小さいからまあ騎士たちが見落としたと言えば仕方がない面もあるとは思うが、私の部屋は特に宰相の権力が大きくなるにつれて、警戒が厳しくなっていたはずなのだ。それを抜け出していたなんて信じられなかった。

 ころちゃんは時々、夜に厨房や、騎士の訓練所に時たま出没しておやつをもらったりしていたらしい。
 そのくせ朝には必ず、私の胸の中で寝ていたのだ。
 やはり、誰かに害されたりしたんだろうか?
 そうか新しい住処でも見つけたんだろうか?

 アレイダの侍女のコリーがころちゃんをとても物欲しそうに見ていたのは知っているけれど、主の母親が犬嫌いなのだ。
 母親は次にころちゃんを見た時は処分すると言い切ったのだ。娘の侍女が飼える訳はなかった。それに、アレイダ自身が昨日は早く帰ったはずなのだ。だから、コリーがころちゃんを拐える訳はないのだ。

 私はその午後からサーヤと騎士たちと一緒にころちゃんの行きそうなところを必死に探したが、ころちゃんは見つからなかった。
「ころちゃん、どこに行ったんだろう」
 夕食時も私は上の空だった。

「姫様。食事が進んでおりませんよ」
 サーヤが注意してくれたが、ころちゃんがお腹をへらして苦しんでいるのではないかと想像すると食事が手につかなかった。

 辛い時、悲しい時にころちゃんを抱きしめてもふもふして癒やされたのだ。
 その癒やしのころちゃんがいなくなって私はとても心配した。

 その夜だ。私はベッドの中でなかなか寝付かれなかった。
 いつもはころちゃんの暖かさともふもふに癒やされてすぐに寝ていたのだ。
 今はそのころちゃんがいないのだ。
 それに夜になるとどこかでころちゃんがひもじい思いをしているのではないかととても心配になってきた。
 大きな野犬や騎士たちに傷つけられたり、殺されたりしたのかもしれない。

 私は明け方まで悶々としていたのだ。

 その夜、私は夢を見た。

 ころちゃんは誰かに捕まって檻の中に閉じ込められていたのだ。
 私を見て、
「わんわん」
 吠えてきたが、私がいくら手を伸ばしてもころちゃんにはさわれなかった。
「ころちゃん! ころちゃん!」
 私が必死に手を差し伸べたのに、届かない。

「クウーン! クウーン!」
 ころちゃんも哭いてくれた。
 そして、檻がどんどん離れていくのだ。

「ころちゃん!」
 私は大声を上げて自分の声に驚いて、起きたのだ。

 そこは朝日が差し込む私の部屋だった。
 私の腕の中にはころちゃんはいなかった。
 1日明けてもころちゃんは帰ってきていなかったのだ。
*************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました
カーラ視点でした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

【完結】転生したぐうたら令嬢は王太子妃になんかになりたくない

金峯蓮華
恋愛
子供の頃から休みなく忙しくしていた貴子は公認会計士として独立するために会社を辞めた日に事故に遭い、死の間際に生まれ変わったらぐうたらしたい!と願った。気がついたら中世ヨーロッパのような世界の子供、ヴィヴィアンヌになっていた。何もしないお姫様のようなぐうたらライフを満喫していたが、突然、王太子に求婚された。王太子妃になんかなったらぐうたらできないじゃない!!ヴィヴィアンヌピンチ! 小説家になろうにも書いてます。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...