ひみつのモデルくん

おにぎり

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⒌櫻木先生

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教室に入ってきたのは、20代後半くらいの男だった。漆黒の緩いパーマがかかった髪に、同色の切れ長の細目。なるほどイケメンだ、生徒が騒ぐのも無理はない。白衣を着ているので、化学かなんかの教師だろうか?
先生は騒がしい教室を見回した。鋭い目が、俺を見つめた気がした。
気のせいかな?

「おい、お前ら、静かにしろ」

その瞬間、一瞬にして教室が静かになった。
先生すごい。思わずキラキラした目で見つめる。

「1年間このクラスを担当することになった、櫻木 拓真だ。教科は化学。よろしくなー」

やっぱり化学だった。

「じゃ、1番から自己紹介な」

1人ずつ立って自己紹介をしていく。
ほとんどが内部進学生のようだ。外部生は、俺ともう1人しかいなかった。

俺の番になり、少し緊張しながら口を開いた。

「雨貝 翠です。外部から進学してきましたが、仲良くして貰えたらうれしいです。好きな食べ物は甘いもので、実は兄弟が7人います。よろしくお願いします。」

なんとか噛まずに言い切って、着席した。
ふぅ、緊張した。大勢の前で話すのは得意じゃないのだ。


自己紹介が終わり、櫻木先生から学校についての説明を受けた。今日は午前中までで学校は終わりで、そのあとは寮に言って、説明を受ける予定なのだ。

「じゃあ、これでホームルームは終わりだ。プリント運びを手伝って欲しいから、んーそうだな、」

なんか、、悪い予感がする。何となく櫻木先生から目線を逸らしたが、遅かった。

「雨貝、お前、俺と来い」

、、、うぅぅぅう。断るわけにも行かず、仕方なく先生のところに向かった。

山のように積み重なったプリントを持たされ、少し不服だが、先生は俺の倍くらいの量を持っているので、なんとも言えない。

しばらく無言で歩いていると、櫻木先生は話しかけてきた。

「お前、意外にちっこいな」

イラッッ
失礼すぎる。俺は先生をキッと睨みつけた。
前髪で見えてないだろうけれど。

「ちっこくないです。先生がおっきいだけです。普通の身長です!」

先生は一瞬目を見開き、次の瞬間ふははと笑いだした。笑うと細い目がさらに細くなる。さっきまでの無表情が嘘みたいだ。
不覚にもかわいいと思ってしまう。

「かわいい...」

「あぁ?」

あ、やばい、口に出ていた。

「...お前の方がかわいいだろ」

「ん?なんか言いました?」

「ゴホンッ、いや、なにも」

なんかボソッと呟いた気がしたのだが、俺の勘違いだったらしい。

そんなことを話すうちに、化学準備室に着く。先生の机の上にプリントを置いた。これでお役目ゴメンなはずだ。
準備室を立ち去ろうとしたが、先生に声をかけられた。

「お礼にケーキでも食べてけ」

ケーキッ?!
甘いもの好きな俺としては、この誘惑に逆らえない。
明らかにソワソワし始めた俺を見ると先生は小さく笑った。
先生は冷蔵庫からチーズケーキを2つ取り出して、それぞれをお皿に乗っけた。冷蔵庫にケーキが入ってるって...先生もかなりの甘党じゃないか?

「そこの棚に紅茶があるから入れてくれないか?」

「これですか?」

「あぁ」

電気ケトルに入っていたお湯を注いで、蒸らしている間にマグカップを棚から取り出す。白猫と黒猫のデザインだ。先生のイメージ的にこっちかなーと思い、黒猫の方を先生にした。

マグカップを机に置くと、先生もケーキが乗ったお皿を並べた。

「いただきます」

さすがにマスクをしたまま食べれないので、マスクを外す。チーズケーキをフォークで1口大に切り、口に頬張る。優しい甘さに、思わず頬が緩んだ。幸せー~。
その時、ふと先生を見ると、何故かこっちを凝視していた。何故か耳が赤い。

「...な、お前、顔、、、」

先生の言葉に体がビクッとした。なにかやらかしただろうか?モデルだってこと、バレてないよな?

「ど、どうしましたか?」

「...いや、なんでもない。お前、なるべく人前でマスク取らない方がいいぞ」

俺の顔がブスだと言いたいのだろうか。
つくづく失礼だ。

「はぁ...ってそんなことより、なんですかこのケーキ!!これ、『ボンボン・ド・ネージュ』のケーキじゃないですか!」

ボンボン・ド・ネージュは、とてつもない人気を誇るケーキ屋だ。平日でも1時間は並ぶほど。

「翠も知っているのか」

「俺の甘いもの好きを舐めないでください」

ドヤ顔で言うと、櫻木先生はまた笑った。

「翠、また仕事手伝え、お菓子用意しとくから」

「え、逆にいいんですか!?」

「あぁ、頼む」

嬉しい。

ケーキを食べ終わって、 化学準備室を立ち去る。そろそろ寮の説明が始まる時間だ。





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