ひみつのモデルくん

おにぎり

文字の大きさ
7 / 18

6.寮

しおりを挟む





寮の前まで行くと、何人かの外部生が既に集まっていた。うちのクラスは俺合わせてふたりだったが、学年全体だと6人のようだ。

内部生は中学の頃と同じ部屋なため、外部生は外部生同士で同室になるらしい。
寮長が寮のルールについて詳しく教えてくれて、俺は必死でメモをとる。

寮の外に出るときは許可をとる必要はなく、比較的自由だそうだ。仕事で外に出る必要がある俺にとってはとてもありがたい。2人1部屋で、共用スペースはリビング、トイレ、お風呂、キッチンくらいで、それとは別でそれぞれの部屋もあるらしい。これも俺にとっては嬉しいポイントだ。自分の部屋くらいでは変装をといても大丈夫だからね。



気になる同室の子は、同じクラスの子だった。赤みがかった髪色のシンプルなショートカットに、琥珀色の瞳。

なんかこの学校、顔が良い人しかいない気がする...。俺の居場所がない。

「俺、日暮 夕。同じクラスだったよね。よろしく」

「俺は雨貝 翠。よろしくおねがいします。」

イケメン具合と声の良さに思わず敬語になってしまった。
そんな俺を見て、日暮くんはにこ、と笑った。何その笑顔、イケメンっっ。

「なんで敬語なの(笑)同じ学年でしょ、タメ語で話してくれないか?」
 

「うん、ありがと」

随分と爽やかな子だ。しかも優しい。日暮くんが同じ部屋で良かったー。


二人で部屋へと向かう。実家から持ってきた荷物は既に部屋に届けてくれてあるので、とてもありがたい。俺たちの部屋は3階だ。

扉を開けると、思ったより居心地の良さそうな部屋だった。広すぎず狭すぎず、二人で住むにはちょうど良い広さだ。学校の豪華さを見ていたからもっと派手なのかと思っていたけど、そんなことは無い。どちらかと言うとシンプルでほっとする。

日暮くんも同じ感想だったみたいだ。

「意外にシンプルでいいね」

そんなことを言ってきた。


「うん、広すぎたらどうしよ、ってビクビクしてたー。」

俺が答えると、彼はふふ、と笑った。











俺はこの日、とても疲れていた。初めて来た学校に、知らない人達との出会い、寮への引越し、疲れてない方がおかしい。
そのせいか、とんでもないやらかしをしてしまったのである。




「翠ー」

「ん~?」

本を読んでる俺に、夕が話しかけた。

「お風呂先はいるかい?」


「この本もーすぐ終わるから、先はいっちゃっていいよー~」


「わかった、先はいるね」


夕がお風呂から上がったあと、俺はお風呂に入った。ここまではなんの問題もなかったんだ。ゆっくりお風呂に使ったあと、お風呂を出た。

静かに扉の隙間からリビングをのぞく。


よし、夕は部屋にいるみたいだ。もう11時前だし、寝たのかもしれない。ちょっとくらい素の姿でいても大丈夫だろう。そう思った俺は、パーカーとスウェットを来て、リビングのソファーで少し横になった。


疲れていた俺は、あろうことかそのまま寝落ちしてしまったのである。もちろん、カラコンどころかウィッグもうしていない。完全にシェルの姿のままだ。




【夕視点】


翠がお風呂に入っているあいだ、自分の部屋に入ってベットに腰掛けた。ほっと一息をつく。


同室になった翠という男の子は、その地味な見た目と、中身に違和感がある子だった。


黒くて少しボサボサの髪に、マスクでほとんど顔が見えない。それだけに着目するとどこにでも居そうなただの男の子なのだが、そう思えない理由があった。

彼を教室で初めて見かけた時、自分でも何故なのか分からないけど思わず見とれてしまったんだ。

細くて白い首筋、すっと伸びた背筋。
窓から差し込む木漏れ日が彼を照らして、消えてしまいそうな儚さを感じた。

自己紹介の時も、驚いた。

あの見た目だからきっとボソボソとした話し方だと思っていたのに、口から聞こえていたのは、耳に心地よいアルトの声だった。
高すぎず、低すぎず、はっきりとした喋り方だ。


寮の説明会で挨拶した時、彼が思ったよりも小柄なことに気がついた。教室で見た時は、もっと大きいと思ったけど、背筋を綺麗に伸ばしていたからだろう。実際に目の前にたつと、抱きしめたくなる身長だ。

にこ、っと声で笑う彼をかわいいと思ったのはナイショだ。





歯磨きをするために部屋を出て、リビングに向かった俺は、ソファーにとんでもないものを見つけた。


天使かと思った。
ミルク色の肌にはシミひとつなくなめらかで、頬にはほんのりと朱が差している。ふわふわの亜麻色の髪の毛は照明の光を受けてキラキラと光っていた。


その姿を、俺は何度も見たことがある。


信じられない。信じられるわけない。でも、今俺が見ていることが真実だ。





翠の正体は、大人気モデルのシェルだ。
テレビや雑誌やポスターやらで毎日見ている顔だが、本物の方が100倍かわいらしい。


その桜のようなほっぺたに自分の手が伸びていくのを、どこか他人事のように見ていた。


つんつん、と頬をつついてみた。
柔らかい。

「...ん、、」

翠は少し寝返りをうったが、またすぐにすーすーと寝息をたて始めた。

「かわいい」

自分のものとは思えない甘い声が響いた。

魔が差して、もちもちなほっぺをもみもみしていると、天使の目がゆっくりと開いた。
目を擦って必死に俺を見つめた。


「....ふ、ぅん?...え、?あ!!?」

湖のような瞳がまんまるに見開かれた。

「...翠って、シェルだったんだね」

微笑んでそう言うと、彼は顔を青ざめさせて、震える声で呟いた。

「...だ、誰にも言わないで」

その様子が尋常じゃなかったので、問いかけた。

「なんで、隠すの?」

彼は、少し息を整えると、ぽつぽつと語り始めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 説明は初めの方に詰め込んでます。 えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?) ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます! 5/25 お久しぶりです。 書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

処理中です...