ひみつのモデルくん

おにぎり

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7.翠の過去

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昔から、人に言い寄られることは多かった。

「翠くん、あそぼうよ」

「クッキー作ったの。たべて」

そんなふうに言ってくる女の子たちは比較的安全で、こちらを傷つけることはしてこなかったから、どうとも思っていなかった。



俺にとっていちばん厄介だったのは、好意を寄せてくる男の人たちだった。


小学3年生だったある日、ひとりで学校から帰っていた時、1人の男の人に話しかけられた。

「すーいくん、どこいくの?」

黒髪、同色の優しく細まった瞳の、20代前半くらいの男。色白の肌に、高い身長。今になって考えると、俺の名前を初対面の男が知っているはずがないのに、まだ世の中のことを知らなかった俺はその違和感に気づけなかった。

「おうち、かえるの」

「そっか♡あ、そうだ翠くん、飴ちゃんあるんだけど、1個食べる?」

「あめちゃん!?たべる!」


ニコニコ笑った俺を、男は愛おしいものを見る目で見つめた。ただの子供にしていい目ではなかった。


男はポケットからひとつの飴を取り出して、包み紙をとくと、俺の口に入れていた。

なんか変に甘ったるくて、頭がぽわぽわしてくる。


なんか、、、、眠い、、、


瞳を閉じる前、男の歪んだ顔が見えた。






次に起きた時、そこは見たことがない部屋だった。かなり狭くて、ベットがひとつ入るくらいの大きさだ。というか、今俺そのソファーにいるな?やけに可愛らしい内装で、ふわふわの毛布は白猫の模様。

ここどこだろ?

その瞬間、意識がなくなる前の出来事が頭に流れてきた。

そうだ。男の人に飴を貰って、それで、眠くなって、眠っちゃったんだ。


ガバッと体を起こした時、ジャラっと金属の硬い音が響いた。

ん??

違和感を感じた手首を見てみると、かわいらしいベットに似合わない銀色の手錠を嵌められ、鎖で手首をベットの柵に繋がれていた。

...怖い。

必死で鎖を引っ張って取ろうともがくが、鎖はガチャガチャと音を立てるばかりで全く意味は無い。


しばらくそれを続けていると、扉が音をたてて開いた。顔を覗かせたのはさっきの男だ。
彼はこっちをみると、とろけるような顔で呟いた。




「あぁ、、、やっと、、♡」

男がこっちに近づいてくる。それが怖くて、毛布をぎゅっと握りしめた。それを見た男は、ますます顔が緩んだ。

すぐそばまで来ると、こっちの手首をそっと掴んでくる。鎖を引っ張ったせいで赤くなっていた。それまで笑顔だった顔が、一瞬真顔になる。

「...これ取ろうとしたの?」

彼は手錠を指さして聞いてきた。

何も言えずにいると、男は再び微笑んだ。


「...ダメだよ。翠くんはもう俺のものなんだから。」

逃げちゃダメだよ、と囁いた。

逆らったら何されるか分からない。
俺はこくこく、と頷いた。

「はぁ、かわい...♡」

男はベットに横たわると、腕を広げた。

「ん、こっちおいで」

おそるおそる、彼の腕に身体を寄せると、ぎゅっと抱きしめられた。あったかい。
バックハグされている状態で髪の匂いをすぅ~と嗅がれてびくっとしてしまう。

「ずぅっと一緒だよ」

耳元で囁かれた。なんとなく落ち着いてきた俺は、そのまま眠りについていた。

それから約7ヶ月という長い間、俺はそこで暮らした。男の名前は蘭さんだ。本名は分からないけど、蘭さんと呼んで、と言われてからずっとこう呼んでいる。

蘭さんはとても優しい人だった。

はじめのうち、隙があれば逃げようとしていたところをよく見つかって、とてもおこられたけど。その怒り方も、ただ怒鳴りつけるのではなくて、冷ややかに圧をかける感じ。俺が素直に謝ると、いい子、えらいね、と声をかけて甘やかしてくれる。俺はだんだん抵抗をしなくなって行った。蘭さんも俺が逃げないことをわかったのか、殆どつけっぱだった手錠をとって、ほかの部屋にも行けるようにしてくれた。蘭さんは昼は仕事があったので、夕ご飯は家にいる俺が作るようになった。蘭さんがあまりに喜んでくれるので、俺もうれしかった。

着るものは、全部蘭さんが選んでくれて、レースなどが着いたかわいらしいものが多かった。ベットの上にはだんだんとぬいぐるみがふえていった。白猫のぬいぐるみがほとんどだ。蘭さんいわく、俺は白猫みたいなのだそうだ。んー~わからん。

蘭さんは俺のことを抱き枕とでも思っているのか、必ず寝る時は抱きしめてくる。頭を撫でられるのが好きだった。




其れが続いたある日、蘭さんが仕事に行っているあいだ掃除機をかけていた時、ある部屋のドアが少し開いていた。その部屋は入ることを唯一禁止されていて、いつもは鍵がかかっているのに。鍵をかけるのを忘れたのだろうか。

どきどきしながら扉を開けた。
その部屋を見た俺は立ち尽くした。

壁には、所狭しと貼られている俺の写真。この家に来る前からのものも山ほどある。そのどれも、俺の視線はカメラ目線ではない。

足の踏み場がないほどに置かれているダンボールの中には、ゴミが山ほど入っていた。

アイスの棒、使い捨ての割り箸、使用済みのティッシュなど。
その中に俺の見覚えのあるものがいくつかあった。
例えば、小学1年生の誕生日にお義母さんとお義父さんがくれたねこのぬいぐるみだ。大事にしていて、無くなった時は大泣きした記憶がある。


気づいてしまった。
このダンボール達に入っているものは、全部俺から出たものだ。蘭さんが集めていたのだ。


俺は、逃げることを決意した。


幸い、手錠は外されている。蘭さんももう俺が逃げようとしているなど思っていないはずだ。その部屋には窓があった。他の窓とは違って外から鍵がかかっていない。窓の外を覗くと、この部屋は一階のようだ。よかった。十階とかだったらジ・エンドだったよ。

俺はその小さい窓になんとか体をくぐらせて脱出することに成功したのだった。
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