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11.佐倉くんの話
しおりを挟む単刀直入に言ってしまうけど、僕は、かなり見た目がいい。この男しかいない学園で、さんざん可愛いと言われてきた。
「男子校に咲く小花」と言われていた、僕、梅田、菊池の3人は自然と一緒に行動するようになった。そうすると、ますます周りは僕たちを褒め散らかし、僕たちはその期待に応えようと、あらゆる努力をした。
日焼け止めは欠かさず塗り、体型を保つための筋トレ、ストレッチを毎晩。朝の5時に起きて1時間かけてメイクをする。
そうすると、周りの男たちはさらに褒めてきた。
「可愛い」
「抱きたい」
さらにさらにそれがプレッシャーになり、よりいっそう努力を重ねる日々。
もっとまつ毛をあげて、もっと血色をよく。
自分を飾るアクセサリーを身につけ、リップの塗り直しは1時間ごと。
努力して、努力して、努力して。
どんなに努力しても、言われるのは単純なことばかり。
「可愛い」
それだけだ。
それだけでもいい。僕たちには容姿の良さしかない。そう思った僕たちは周りの男たちの僕たちへの態度の変化に気づかなかった。
高等部に上がり、数日たったある日の放課後、いつものように一緒に行動していた僕たちは、空き教室から聞こえてきた会話に運悪くも耳を傾けてしまった。
それを話していたのは、名前をまだ覚えていないクラスメイトと、その友達。
「なーぶっちゃけさぁ、同じクラスで抱ける奴いた?」
「あ?そんなやついねーよ」
「でもお前のクラス、佐倉がいんじゃん。」
「あーあいつ?なんか派手になったよな。しょーじき無理」
「佐倉だけじゃないよなー。梅田も菊池もなんかケバすぎて抱けんわ笑」
「昔は男子校に咲く小花とか呼ばれてたのに。今あんなとかウケる」
心臓が、止まるかと思った。
その場を立ち去りたくて、涙を零しながら校舎を飛び出し、中庭の隅っこでうずくまった。あとから来た梅田と菊池も、大きな目から涙を流しながら俺の隣にへたりこんだ。
何が、ダメだったんだろう。期待に応えなきゃなのに。なんで、誰も認めてくれないんだろう。なんで。
その時、とたとたと歩く音が聞こえ、その音はだんだんと大きくなっていった。
「ちょ、大丈夫ですか?!」
アルトの声が優しく響いた。
おそるおそる顔をあげると、そこに居たのは、黒い髪の男の子。
突然のことに驚いて言葉を発せない俺を見た彼は、悲しい目で俺を見つめると、俺のぐちゃぐちゃの顔を、ふわふわのテッシュで優しく拭き始めた。
顔を拭かれながら頭を撫でられていると、なんだか気持ちが落ち着いてきた。いい匂いがする。彼の匂いだろうか。
俺の顔を拭き終わると、梅田と菊池の顔も同じように拭き始めた。
それが終わる頃には俺たちは泣き終わり、その男の子はぽつ、と呟いた。
「せっかくのメイク、落ちちゃったね。せっかく可愛いのに」
可愛い?嘘だ、そんなこと思う人、もうどこにもいないのに。
「...かわいく、ないんです」
「え?」
「...ケバいって...」
「...それ、誰かに言われたの?」
コク、と頷くと、彼はもう一度頭を撫でてきた。
「...俺もね、メイクする時が、いや、メイクしたことがあるんだけどね、あ、やりたくてやった訳じゃないんだけど。メイクって、すごい時間かかるし、めんどくさいし、すぐ落ちちゃうし、大変なのわかるよ、」
彼は真っ直ぐに僕たちを見つめた
「それをさ、自分のためとか、誰かのために努力してやるのって、すごいなって思うよ」
その瞬間、それまでずっと満たされなかった心が、満たされていくのを感じた。
そうだ。僕たちが欲していたのは、「可愛い」という言葉でも可愛さでもなかった。
ただ、努力している自分たちを認めて欲しかった。僕たちの可愛さが、努力によって作られていることを知って欲しかった。
また泣き出してしまった僕たちに、男の子はオロオロと戸惑いながらも、ずっとそばに寄り添ってくれた。それがどれだけ安心したか、彼は知らないだろう。
その子の名前が雨貝 翠であることを次の日に突き止めた。これは直感なのだが、雨貝様はだいぶ危なっかしい気配がする。なんか、お人好しすぎて放っておけない。
この先その直感が間違っていなかったことをさんざん思い知る羽目になるのだが、この時の僕らはまだそれを知らない。
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