ひみつのモデルくん

おにぎり

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17.バイト

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学校が終わった俺はバイト先であるコンビニへ向かう。学校から近いコンビニなのはありがたい。1週間に2日ほどモデルの仕事がない日にシフトを入れているのだ。借金が、、、辛い。モデルだけじゃ足りないって、どんだけ借金したんだ実の親よ。

コンビニに着くとスタッフルームで学校の制服からバイトの制服に着替える。うちのコンビニの制服は紺色に黄色のラインが入っている。ある程度誰にでも似合いそうな制服なのはありがたい。

夕方からのシフトなので学校帰りの学生が結構多い。暇だとやることがなくて辛いので、お客さんがいっぱいいるのは逆に楽だったりする。

レジで会計のお客さんを待っていると見知った顔のお客さんが現れた。認識した俺の身体が硬くなっていくのが自分でもわかる。この男にはいい思い出がない。

ミルクティーベージュの無造作ヘアに、バチバチのピアス。真っ黒のスーツを着崩している。


その男は俺の会計まで来ると、カウンターに一冊の雑誌を置いた。

Lueurだ。しかも、ちょうど俺の表紙のやつ。
わざとらしいにも程がある。
ピッピとコードを読み取っていると、男は話しかけてきた。

「やっほ、翠さん」

「...なんでここが」

彼は五十嵐さん。俺が借金している会社のお偉いさんらしい。所謂闇金だ。

「なんでだろうね。ってかアンタこんなとこで働いてんの」

「...五十嵐さんには関係ありませんよね」

「んー?律儀に莫大な借金返そうとしてるのウケる。あっちの仕事じゃ足りないからって」

「...悪いですか」

この人は、俺がシェルなのを知っている。変装前からの知り合いなので、当然なんだけど。

「っていうかさ翠さん」

五十嵐さんはずいっと俺の耳に口を近づけて囁いた。

「最近、うちの奴らが騒いでるぜ。アンタを売れって。気をつけろ」

思わず目を見開き、俺から離れた五十嵐さんを見つめた。

「まぁ、当面は俺が何とかしとくけど」

「なんで、そんなことしてくれるんですか」

五十嵐さんは端正な顔を余裕ありげに微笑ませた。

「さぁ、なんでだろうね」


本当に、分からない。この男の考えていることが。


呆然と立っていると、後ろに気配を感じる。


「お客様、どうかいたしましたか?」

後ろを振り返ると、バイトの後輩の深海くんが立っていた。俺より断然背が高いので、背後に立たれると圧を感じるんだけど。
どうやら様子のおかしい俺と五十嵐さんが気になったのだろう。

「いーやなんでもないよー」

「...そうは見えませんでしたが」

五十嵐さんは俺にウィンクした。


「俺と翠さんにしか分からない話してたの、ね?」


...なんだろう。意味はあってるんだけど、語弊があるような。

深海くんは見知らぬ男が俺の名前を知ってることに驚いたらしい。目をパチクリとさせ聞いてきた。

「翠くんの知り合いですか?」

「ん~...知り合い、かな」

まさか借金取りだとは言えない俺ははぐらかして答える。

「でも、翠くん困ってましたよね」

「見間違えじゃね?俺、アンタより翠さんと付き合い長いし」

「...それが、なんですか」

「アンタ、翠さんの困ってるの遠くから見て助けに来るって、相当わかりやすいのな」

「何を言って、ッ」

「はっ、めんど」

五十嵐さんは俺をちらっと見ると、ひらりと手をふった。

「じゃーね翠さん」

思わず反射で手を振り返すと五十嵐さんはもう片方の手で顔を隠した。耳が赤い。なんなんだ。

去っていく五十嵐さんを眺めていたら、振り続けていた手をなにかに止められる。視線を向けると、俺の手首を深海くんの手が掴んでいる。俺よりずっと大きくて骨張った手だ。


「...あいつと、どういう関係なんですか翠くん」

ただの知り合いでないのを察したのかと焦った俺は何とかはぐらかす。

「...だから、知り合いだって」

「...そうですか」

釈然としない表情でそう呟く深海くん。深海くん、どうやら勘が鋭いらしい。気をつけよ。


深海くんは年齢は俺の一個上なのだが、バイト歴は俺の方が長いので、一応後輩ということになっている。タメ語でいいよと言ったのに律儀に敬語を使ってくる。身長は俺より十五センチは高そうだ。黒髪の肩までのストレートで、所謂おかっぱみたいな髪型がとても似合う美形だ。『ハウ〇の動く城』に出てくるハウ〇みたいなので、もちろん女子にモテモテだ。実際、お会計中に女の子に言い寄られているのを何回か見たことがある。

はっきり言って羨ましい。俺も女の子にモテたい。彼女欲しい。出会いないけど...。



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