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第2話 家も追い出されるかもしれない
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結局、朝の6時まで錬金術スキルを使い続けていた。
魔力は枯渇気味で強い眠気に襲われ、頭はフラフラである。もうダメだ。歩く力が出てこない。
荷物はなくなったんだし、人間が残っていても大目に見てくれるだろう。
仰向けに倒れて大の字になる。
「マスター、服が汚れますよ」
洗うのは自分なんだから、さっさと起きろ。ユミはそんな目で見ている。
普段なら立ち上がって「ごめん」と謝るところではあるのだが、今は力が入らず動けない。
睡魔に負けて瞼を閉じそうになる。
「仕方がありませんね。すごく頑張ったということで、家まで連れて行ってあげます」
幽灯蝶で運ばれるのかなと思っていたが、荷物のようにユミの肩に担がれてしまった。
ユミは背が低いので、つま先が地面に当たっている。
「人って、意識がなくなると重くなるんです。寝ないようにお願いしますね」
「無茶なことを……」
「マスターならできます」
言い切られてしまったら、何だか頑張らなければいけない気がしてくるから不思議だ。いいだろう。マスターとしての威厳を見せてやる!
目を開けて、動く地面を見ながら運ばれていく。
店舗を出ると早朝だというのに蒸し暑かった。
動いてないのに、じんわりと汗が浮き出てくる。夏全開だな。今からダンジョンにでも入って涼みたいな。昼寝したら最高だろう。魔物に襲われる危険を無視すれば、だが。
「早くお家に帰りたい……」
「マスターを担いで走れるほどのパワーはありません。命令は拒否いたします」
「だよなぁ」
魔力型として創ったので、見た目より少し強いぐらいの力しか無い。こうやって運べるのも精霊だから疲れにくいってだけであって、少女の体に秘められた大人顔負けの筋力なんてものはないのだ。
「裕真《ゆうま》、まだいたのか」
呆れた知晴さんの声が聞こえたけど、返事をする余裕なんてない。
視線すら動かせない。
応対はユミに一任しよう。
「撤収は完了しております」
「終わってるなら良いが……」
足音がする。近づいているみたいだ。
また怒られたら嫌なので、寝たふりは続行だ。
「お前はたしか裕真が創った人工精霊だったよな?」
「はい。ユミと申します」
「主人よりしっかりしているな」
挨拶しただけなのに評価が高い。不公平だ!
俺が話しかける時なんて聞き流すことが多いクセに。もしかして知晴さんはロリコンなんじゃないか。
次に会ったときはロリコンギルド長……と呼んだら怒られそうなので、心の中で叫ぶだけにしておこう。
「一応、裕真は起きているようだし、警告だけしておく。つい一ヶ月前に錬金術ギルドのトップ層が全て入れ替わった」
「総入れ替え。穏やかな話じゃありませんね。何かあったのですか?」
「まあな」
一呼吸置いて、知晴さんが話を続ける。
「今後は質よりも量を重視する戦略をとるらしい。低価格で廉価品を販売するため、高品質を売りにしている店は全て閉店することになった。反発する錬金術師はギルドの資格を剥奪するという強行っぷりだ」
「だからマスターに、急な退去命令を出したのですね」
「そうだ。ギルド内で怒鳴り散らしたのも、裕真に反発させる気力をなくさせるためだったんだが、大丈夫だったか?」
「はい。あまり気にしていませんでした」
「なんだ。気を使って損をした」
機嫌よさそうに知晴さんは笑っていた。
「まあそういった事情もあって、錬金術ギルドからは低品質の物しか買えなくなる。仕入れと販売は独自で開拓するしかないぞ」
錬金術師はギルドから店と看板を借りて商売をすることが多い。イメージとしてはフランチャイズが近いだろうか。
経営の知識が無い俺たちにとっては大変貼りがたい存在だったのだが、もう使えないと突き放されたのである。
「ギルド長権限でどうにかならないのですか?」
「しがない支部長でしかない俺じゃ、組織には逆らえん。悪いな」
「サラリーマンも大変ですね」
「……お前のせいでな」
寝たふりがバレていたので会話に割り込んで慰めたら、なぜか文句を言われてしまった。
「マスター、今は重要な話をしているんです。余計なことは言わないでください」
しかも人工精霊にまで。
俺、創造主なんだけど。
「ふははは! いい性格しているな! 気に入った! 店舗の家賃未払いについては、俺の権限で支払期限を延ばしておく。一年以内に1000万円を完済してくれ」
ケツをバシッと叩かれた。痛い。
「金額は減らせないのか……」
「俺に犯罪をしろと? さすがに無理だ。どうにかして工面するんだな」
笑いながら知晴は、俺が使っていた店舗へ入っていった。
「目は覚めました?」
「いや、眠い。寝ていい?」
「我慢してください」
冷たく言うとユミは歩き始めた。朝早く人は少ないが、カシャカシャと音が鳴っている。スマホで撮影されているのだろうか。
少女に担がれる成人男性。うん、珍しい光景だ。見世物になるのもわかる。
撮影している人を見ると旅行客みたいだった。俺が日本の代表として、ネット上で広まらないことを祈るばかりである。
自宅は渋谷のラブホテル街にあるので、10分ちょっとぐらい歩いたら着いた。
ポストには入りきらないほどの催促状が入っているので、ユミが幽灯蝶を使って全て持つと階段を上って、借りている部屋の中へ入った。
錬成した物が整然並べられていて、生活エリアはかなり狭くなったが寝るところは残っている。
ユミは俺を優しくベッドに置くと、封筒を開けて中身を確認していく。
「何が書いてある?」
「家賃滞納に関する内容ですね。今月中に振り込まないと財産の差し押さえする裁判をするそうです」
幸いにも今は8月上旬だ。まだ時間はある。
「滞納額は?」
「だいたい100万円です」
「高いなぁ~」
「何ヶ月も滞納しましたからね」
日本は借主側が有利ではあるが、長期滞納していれば差し押さえも可能になるか。
錬金術スキルの熟練度を上げるために他のことは考えないようにしていたが、もうそろそろ限界らしい。
売り物はあるんだ。あとはどこで、誰に売るか、が決まれば金は稼げる。
先ずは家賃滞納分、その次は店舗の未納分……の前に友人から借りた金も返さないと。たしか、そろそろ期限だったはずだ。
「返済については私も考えておきます。今はゆっくり眠ってください」
「助かる」
眠気のせいで頭がぼーっとしていたので、ユミの言葉に甘えて眠ることにした。
せめて、夢の中では金持ちライフを過ごしてみたいな。
魔力は枯渇気味で強い眠気に襲われ、頭はフラフラである。もうダメだ。歩く力が出てこない。
荷物はなくなったんだし、人間が残っていても大目に見てくれるだろう。
仰向けに倒れて大の字になる。
「マスター、服が汚れますよ」
洗うのは自分なんだから、さっさと起きろ。ユミはそんな目で見ている。
普段なら立ち上がって「ごめん」と謝るところではあるのだが、今は力が入らず動けない。
睡魔に負けて瞼を閉じそうになる。
「仕方がありませんね。すごく頑張ったということで、家まで連れて行ってあげます」
幽灯蝶で運ばれるのかなと思っていたが、荷物のようにユミの肩に担がれてしまった。
ユミは背が低いので、つま先が地面に当たっている。
「人って、意識がなくなると重くなるんです。寝ないようにお願いしますね」
「無茶なことを……」
「マスターならできます」
言い切られてしまったら、何だか頑張らなければいけない気がしてくるから不思議だ。いいだろう。マスターとしての威厳を見せてやる!
目を開けて、動く地面を見ながら運ばれていく。
店舗を出ると早朝だというのに蒸し暑かった。
動いてないのに、じんわりと汗が浮き出てくる。夏全開だな。今からダンジョンにでも入って涼みたいな。昼寝したら最高だろう。魔物に襲われる危険を無視すれば、だが。
「早くお家に帰りたい……」
「マスターを担いで走れるほどのパワーはありません。命令は拒否いたします」
「だよなぁ」
魔力型として創ったので、見た目より少し強いぐらいの力しか無い。こうやって運べるのも精霊だから疲れにくいってだけであって、少女の体に秘められた大人顔負けの筋力なんてものはないのだ。
「裕真《ゆうま》、まだいたのか」
呆れた知晴さんの声が聞こえたけど、返事をする余裕なんてない。
視線すら動かせない。
応対はユミに一任しよう。
「撤収は完了しております」
「終わってるなら良いが……」
足音がする。近づいているみたいだ。
また怒られたら嫌なので、寝たふりは続行だ。
「お前はたしか裕真が創った人工精霊だったよな?」
「はい。ユミと申します」
「主人よりしっかりしているな」
挨拶しただけなのに評価が高い。不公平だ!
俺が話しかける時なんて聞き流すことが多いクセに。もしかして知晴さんはロリコンなんじゃないか。
次に会ったときはロリコンギルド長……と呼んだら怒られそうなので、心の中で叫ぶだけにしておこう。
「一応、裕真は起きているようだし、警告だけしておく。つい一ヶ月前に錬金術ギルドのトップ層が全て入れ替わった」
「総入れ替え。穏やかな話じゃありませんね。何かあったのですか?」
「まあな」
一呼吸置いて、知晴さんが話を続ける。
「今後は質よりも量を重視する戦略をとるらしい。低価格で廉価品を販売するため、高品質を売りにしている店は全て閉店することになった。反発する錬金術師はギルドの資格を剥奪するという強行っぷりだ」
「だからマスターに、急な退去命令を出したのですね」
「そうだ。ギルド内で怒鳴り散らしたのも、裕真に反発させる気力をなくさせるためだったんだが、大丈夫だったか?」
「はい。あまり気にしていませんでした」
「なんだ。気を使って損をした」
機嫌よさそうに知晴さんは笑っていた。
「まあそういった事情もあって、錬金術ギルドからは低品質の物しか買えなくなる。仕入れと販売は独自で開拓するしかないぞ」
錬金術師はギルドから店と看板を借りて商売をすることが多い。イメージとしてはフランチャイズが近いだろうか。
経営の知識が無い俺たちにとっては大変貼りがたい存在だったのだが、もう使えないと突き放されたのである。
「ギルド長権限でどうにかならないのですか?」
「しがない支部長でしかない俺じゃ、組織には逆らえん。悪いな」
「サラリーマンも大変ですね」
「……お前のせいでな」
寝たふりがバレていたので会話に割り込んで慰めたら、なぜか文句を言われてしまった。
「マスター、今は重要な話をしているんです。余計なことは言わないでください」
しかも人工精霊にまで。
俺、創造主なんだけど。
「ふははは! いい性格しているな! 気に入った! 店舗の家賃未払いについては、俺の権限で支払期限を延ばしておく。一年以内に1000万円を完済してくれ」
ケツをバシッと叩かれた。痛い。
「金額は減らせないのか……」
「俺に犯罪をしろと? さすがに無理だ。どうにかして工面するんだな」
笑いながら知晴は、俺が使っていた店舗へ入っていった。
「目は覚めました?」
「いや、眠い。寝ていい?」
「我慢してください」
冷たく言うとユミは歩き始めた。朝早く人は少ないが、カシャカシャと音が鳴っている。スマホで撮影されているのだろうか。
少女に担がれる成人男性。うん、珍しい光景だ。見世物になるのもわかる。
撮影している人を見ると旅行客みたいだった。俺が日本の代表として、ネット上で広まらないことを祈るばかりである。
自宅は渋谷のラブホテル街にあるので、10分ちょっとぐらい歩いたら着いた。
ポストには入りきらないほどの催促状が入っているので、ユミが幽灯蝶を使って全て持つと階段を上って、借りている部屋の中へ入った。
錬成した物が整然並べられていて、生活エリアはかなり狭くなったが寝るところは残っている。
ユミは俺を優しくベッドに置くと、封筒を開けて中身を確認していく。
「何が書いてある?」
「家賃滞納に関する内容ですね。今月中に振り込まないと財産の差し押さえする裁判をするそうです」
幸いにも今は8月上旬だ。まだ時間はある。
「滞納額は?」
「だいたい100万円です」
「高いなぁ~」
「何ヶ月も滞納しましたからね」
日本は借主側が有利ではあるが、長期滞納していれば差し押さえも可能になるか。
錬金術スキルの熟練度を上げるために他のことは考えないようにしていたが、もうそろそろ限界らしい。
売り物はあるんだ。あとはどこで、誰に売るか、が決まれば金は稼げる。
先ずは家賃滞納分、その次は店舗の未納分……の前に友人から借りた金も返さないと。たしか、そろそろ期限だったはずだ。
「返済については私も考えておきます。今はゆっくり眠ってください」
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