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第3話 金稼ぎの方針
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トン、トン、トンと、一定のリズムを刻む音で目を覚ます。
体を起こして錬成物の山をかき分け、キッチンまで行くと、ユミが蝶のエプロンを着けて料理をしていた。
味噌汁の匂いがしている。
時計を見ると朝の7時になっていた。
相当疲れていたみたいで、丸一日寝ていたようである。
「朝ご飯を作ってくれたのか?」
「はい。今日は具なし味噌汁とキュウリの漬物、100円パン一個、というメニューです」
「食べ合わせが悪いのは……」
「お金がないからですね」
切っていたのは、塩漬けしていたキュウリだったようだ。
材料さえあれば、ユミは人並み以上の料理を作れる。だがそれも、空っぽになった冷蔵庫の前では無駄なスキルだ。
滞納した借金を返すのも大事だが、今日のご飯代を稼ぐこともしなければならない。
やることが多いな。
「マスターは、先にお風呂へ入ってください。その後に歯磨きして、朝ご飯にしましょう」
お腹はペコペコなんだけど、ユミの指示には逆らえない。
無視してもいいのだが、ユミはすぐに拗ねてしまうんだよな。「私なんてどうでもいいんですね」って、膝を抱えて言われたら、強い罪悪感を覚えてしまう。
体がベタベタして気持ち悪いし、一週間は髭を剃っていない。
これから真っ当な人間として生活するために、身だしなみは整えておくか。
「わかった。風呂に行ってくる」
脱衣所で服を脱いでから、シャワーを浴びる。
「冷たいっっっっ!!」
どうやらガスは止められているようだ。ユミが料理をしていたから油断していた。
キッチンはすべてIHにしていたので、料理は出来たのである。家には魔石で動作する発電機があるので、電気の心配は不要だ。水は使えているから、なんとか払っていたんだろう。
滞納、してないよな?
目覚ましにちょうどいいと思い直し、髪や体を洗って風呂場を出る。
半袖のシャツとハーフパンツといった格好だ。夏ということもあって薄手のラフなスタイルである。
スーツといった真っ当な服はないから、今後もこういった服で接客することになるだろう。
商売相手は探索者だし、裸じゃ無きゃ文句は言われない。うん。問題ないな。
鏡を見て歯を磨いてから髪型を整え髭を丁寧に剃り、ダイニングへ戻る。
テーブルに料理が並べられていた。
「お帰りな……」
俺を見てユミが口を開きながら止まってしまった。
瞬きすらしていない。
人工だが精霊ではあるので、故障することはないはず。何があったんだ。
「どうした?」
反応がないので顔の前で手を振ると、パシッと叩かれてしまった。
「マスター、手が邪魔です」
「動かないから心配してたんだけど……」
「私は正常です。ご飯が冷めてしまうので座ってください」
多少の理不尽さを覚えながらも、ユミの言葉に従ってフローリングの床に腰を下ろす。
椅子や座布団を買う余裕すらなかったので、直に座ってご飯を食べるのだ。尻は痛いが我慢するしかない。
箸を持って味噌汁を飲む。
「味はどうですか?」
正面に座っているユミが心配そうな顔をして見ていた。
出汁を取ってない味噌汁だが、俺にとっては高級店の料理よりも満足度は高い。
「最高だ。美味しいよ」
「賞味期限の切れた味噌を使ったので心配していましたが、腐ってないようで安心しました」
ようやくユミも味噌汁に口を付けた。
え、俺って毒味役をさせられていたの!?
こう、大好きなマスターが満足しているかな? とか、そういった系等の心配をしてたんじゃないの?
ちょっとした行き場のない悲しみと、ガッカリ感が混ざり合っている。
「食べないのですか?」
悪気が一切ない笑顔をされてしまった。
文句は言えない。
生活面では頼りっきりなんだし、毒味役ぐらいは喜んで受け入れるか。
キュウリの漬物をボリボリ食べて塩分を補給しながら、焼かれた食パンを食べる。うん。美味しくはない。腹は膨れないが、貧乏なのだから我慢だ。
「そういえばガスが止まっていた。水道は、まだ大丈夫そうか?」
「わかりません」
「だよな。今後は光熱費の支払状況も管理してくれないか……」
「人工精霊に頼りすぎじゃないですか?」
「ぐ……っ」
俺は興味ないことの管理が非常に苦手なのだ。すぐに忘れてしまう。
何度頑張っても改善できなかったので、生活をサポートしてくれる人工精霊を作ったのだ。戦闘面も頼れる存在なので、ついついなんでもお願いしてしまうクセがでてしまった。
「マスター、冗談ですよ。私は人間の普通はよくわかりませんが、それでもいいですか?」
「もちろん! 俺も普通はよくわからないからな!」
「……笑いごとじゃないです」
またしても半目で睨まれてしまった。
店を追い出されると分かってから、この手の表情は増えている気がする。それだけ迷惑や苦労をかけているってことなんだろう。
マスターとして威厳を示すためにも、早めに生活の基盤を整えなければ。
食パンと味噌汁を口の中に入れて飲み込み、漬物を食べ尽くすと、そのまま横になった。
食器を片付ける音がするので、ユミがやってくれているのだろう。
「売り物はあるんだ。場所と相手さえ見つかれば、すぐにでも金は作れる」
店舗をやっていたときは、何名か常連もいた。店員と客という関係だったので連絡先は知らないが、相手は探索者なので、渋谷ダンジョン付近をブラブラと歩いていれば出会うこともあるだろう。
ん? 道を歩く……?
そうか!
人はみんな道にいる。特に渋谷なんて大勢が行き交っているのだ、客の獲得には困らないだろう。金稼ぎの方針が見えた!
「決めた! 俺は路上販売するぞ!」
ござを敷いて回復ポーションやマナポーションを並べておけば、客は勝手に来る。
売れるはずだ!!
完璧な計画を思いつき、声を出して笑っていた。
体を起こして錬成物の山をかき分け、キッチンまで行くと、ユミが蝶のエプロンを着けて料理をしていた。
味噌汁の匂いがしている。
時計を見ると朝の7時になっていた。
相当疲れていたみたいで、丸一日寝ていたようである。
「朝ご飯を作ってくれたのか?」
「はい。今日は具なし味噌汁とキュウリの漬物、100円パン一個、というメニューです」
「食べ合わせが悪いのは……」
「お金がないからですね」
切っていたのは、塩漬けしていたキュウリだったようだ。
材料さえあれば、ユミは人並み以上の料理を作れる。だがそれも、空っぽになった冷蔵庫の前では無駄なスキルだ。
滞納した借金を返すのも大事だが、今日のご飯代を稼ぐこともしなければならない。
やることが多いな。
「マスターは、先にお風呂へ入ってください。その後に歯磨きして、朝ご飯にしましょう」
お腹はペコペコなんだけど、ユミの指示には逆らえない。
無視してもいいのだが、ユミはすぐに拗ねてしまうんだよな。「私なんてどうでもいいんですね」って、膝を抱えて言われたら、強い罪悪感を覚えてしまう。
体がベタベタして気持ち悪いし、一週間は髭を剃っていない。
これから真っ当な人間として生活するために、身だしなみは整えておくか。
「わかった。風呂に行ってくる」
脱衣所で服を脱いでから、シャワーを浴びる。
「冷たいっっっっ!!」
どうやらガスは止められているようだ。ユミが料理をしていたから油断していた。
キッチンはすべてIHにしていたので、料理は出来たのである。家には魔石で動作する発電機があるので、電気の心配は不要だ。水は使えているから、なんとか払っていたんだろう。
滞納、してないよな?
目覚ましにちょうどいいと思い直し、髪や体を洗って風呂場を出る。
半袖のシャツとハーフパンツといった格好だ。夏ということもあって薄手のラフなスタイルである。
スーツといった真っ当な服はないから、今後もこういった服で接客することになるだろう。
商売相手は探索者だし、裸じゃ無きゃ文句は言われない。うん。問題ないな。
鏡を見て歯を磨いてから髪型を整え髭を丁寧に剃り、ダイニングへ戻る。
テーブルに料理が並べられていた。
「お帰りな……」
俺を見てユミが口を開きながら止まってしまった。
瞬きすらしていない。
人工だが精霊ではあるので、故障することはないはず。何があったんだ。
「どうした?」
反応がないので顔の前で手を振ると、パシッと叩かれてしまった。
「マスター、手が邪魔です」
「動かないから心配してたんだけど……」
「私は正常です。ご飯が冷めてしまうので座ってください」
多少の理不尽さを覚えながらも、ユミの言葉に従ってフローリングの床に腰を下ろす。
椅子や座布団を買う余裕すらなかったので、直に座ってご飯を食べるのだ。尻は痛いが我慢するしかない。
箸を持って味噌汁を飲む。
「味はどうですか?」
正面に座っているユミが心配そうな顔をして見ていた。
出汁を取ってない味噌汁だが、俺にとっては高級店の料理よりも満足度は高い。
「最高だ。美味しいよ」
「賞味期限の切れた味噌を使ったので心配していましたが、腐ってないようで安心しました」
ようやくユミも味噌汁に口を付けた。
え、俺って毒味役をさせられていたの!?
こう、大好きなマスターが満足しているかな? とか、そういった系等の心配をしてたんじゃないの?
ちょっとした行き場のない悲しみと、ガッカリ感が混ざり合っている。
「食べないのですか?」
悪気が一切ない笑顔をされてしまった。
文句は言えない。
生活面では頼りっきりなんだし、毒味役ぐらいは喜んで受け入れるか。
キュウリの漬物をボリボリ食べて塩分を補給しながら、焼かれた食パンを食べる。うん。美味しくはない。腹は膨れないが、貧乏なのだから我慢だ。
「そういえばガスが止まっていた。水道は、まだ大丈夫そうか?」
「わかりません」
「だよな。今後は光熱費の支払状況も管理してくれないか……」
「人工精霊に頼りすぎじゃないですか?」
「ぐ……っ」
俺は興味ないことの管理が非常に苦手なのだ。すぐに忘れてしまう。
何度頑張っても改善できなかったので、生活をサポートしてくれる人工精霊を作ったのだ。戦闘面も頼れる存在なので、ついついなんでもお願いしてしまうクセがでてしまった。
「マスター、冗談ですよ。私は人間の普通はよくわかりませんが、それでもいいですか?」
「もちろん! 俺も普通はよくわからないからな!」
「……笑いごとじゃないです」
またしても半目で睨まれてしまった。
店を追い出されると分かってから、この手の表情は増えている気がする。それだけ迷惑や苦労をかけているってことなんだろう。
マスターとして威厳を示すためにも、早めに生活の基盤を整えなければ。
食パンと味噌汁を口の中に入れて飲み込み、漬物を食べ尽くすと、そのまま横になった。
食器を片付ける音がするので、ユミがやってくれているのだろう。
「売り物はあるんだ。場所と相手さえ見つかれば、すぐにでも金は作れる」
店舗をやっていたときは、何名か常連もいた。店員と客という関係だったので連絡先は知らないが、相手は探索者なので、渋谷ダンジョン付近をブラブラと歩いていれば出会うこともあるだろう。
ん? 道を歩く……?
そうか!
人はみんな道にいる。特に渋谷なんて大勢が行き交っているのだ、客の獲得には困らないだろう。金稼ぎの方針が見えた!
「決めた! 俺は路上販売するぞ!」
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完璧な計画を思いつき、声を出して笑っていた。
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