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第8話 裕真が始める行商
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俺がクランの加入を断念すると発言した後、ユミが会話を引き継いだ。
「今回のマスターは正しい判断をされました。社会性がないので集団の中で生きていくのは難しいと思います」
「さすがは人工精霊、ご主人のことをよく知っているな」
二人とも酷いことを言う。
ここは認識を変えてもらわなければ。
「頑張れば集団の中でも活躍できるぞ」
「生まれて数年の人工精霊よりも常識を知らず、錬金術ギルドでボッチだったマスターには不可能です。ずっと見てきた私が、保証してあげます」
自信を持って言われてしまった。反論したいが、言葉が思い浮かばない。
実は俺も、言いながらちょっと無理かな? って思ってたからね。
特に錬金術に関わることだと、周りが見えなくなる。
良い素材があれば作りたい物は沢山あるし、クランメンバーの需要なんて無視して、素材をあるだけ使ってしまうかもしれない。ううん、間違いなく使う。
それで追い出されるならマシで、素材費を請求されたら目も当てられない。
借金がさらに膨れ上がってしまう。
「じゃあ、どうすればいいんだ……」
時代の流れに乗っていけないので、独自の道を開拓するしかない。それも個人で活動し、錬金術ギルドに睨まれない形で。
難癖を付けて免許を取り上げるぐらいのことは容易に出来る組織だから、出来れば敵に回したくないんだよね。
ん? そういえば免許の維持費を一度も支払ったことなかった。知晴さんがいい感じに誤魔化してくれているのかな。
「マスター、回復ポーションが最も必要とされる場所はわかりますか?」
「病院じゃない?」
ケガ人が運ばれる場所なのだから、いつも必要とされているはずだ。錬金術ギルドも常に大量の回復と解毒ポーションを卸している、と聞いたことがある。
「他にもあります。それも、錬金術ギルドが手を出せない場所です」
「そんな都合のいい場所あるのか?」
他には探索者ギルドが思い浮かぶものの、あそこは大量には扱っていない。基本的には錬金術ギルドが経営している店で買えって方針だからね。
海外にも現地の錬金術ギルドはあるので、輸出という線もないだろう。
各家庭にも回復ポーション等は購入、保管されているが、低品質の物ばかり。これから錬金術ギルドが狙っていきそうな場所だ。
「うーーーーん。降参だ。答えを教えてくれ」
「死にかけの探索者に売ればいいんですよ。定価より高めで」
「どういうことだ?」
知晴さんは、ほぉと感心した顔をしているけど、俺はさっぱりだ。
探索者を背後から襲って、死にかけたところで回復ポーションを売りつけるのだろうか。
マッチポンプってやつだ。
これなら警察にバレない限り商売は続けられる。
幽灯蝶なら気づかれずに攻撃することも可能だろう。
お、意外と、それが答えなのかもしれないな。
「何を考えているか知りませんが、マスターは間違っています」
「そ、そうなのか?」
「はい。私はダンジョンで売れば良いと考えていますよ」
ユミが自信を持って発表したアイデアに、知晴さんが乗っかる。
「常に危険で緊急性が高い場所だ。上級回復ポーションなら定価の倍でも、即決して買うだろうな」
「そんな都合良くいく? 値下げ合戦にならない?」
「パーティやクランに所属せず、ダンジョンで直接、ポーションを売りさばくような錬金術師が裕真以外にいるなら、そうなるかもな」
錬金術師はギルドの店で活動する。野良がいても個人店を構えるか、探索者のパーティに入る。
ギルドから追い出されて、個人活動するバカな錬金術師はいない。
…………俺以外はな。
知晴さんの言葉に納得した。
「定価より高く売るって、いいのか? そりゃ多少の手間賃は欲しいけどさ」
錬金術は半分以上、趣味でやっているので、高い金を取るのに罪悪感を覚える。
ギルドみたいに高値で売るなんて、気が引けてしまいどうしても出来ない。バカだなと思われそうだけど、そういう性格なんだから仕方がないと諦めてくれ。
「マスター、富士山に自動販売機が置かれているのですが、いくらで販売されているか知っています?」
「手間賃とか考えると300円とか?」
「約500円です」
「高っ!!」
「とあるテーマパークだと250円です。場所によって値段が変わるのは、普通なんですよ」
俺は自他共に常識が無いと認めている。
人工精霊のユミだって生まれた当初は同じだったが、勉強を続けて今じゃ俺より常識的だ。それでも細かいところは抜けているが、それでも彼女が自信を持って言うのであれば間違ってはないのだろう。
販売する人が行きたがらない場所では、何倍の値段で売っても普通。それが世の中の原理なんだろう。高値で売ることへの罪悪感が薄れてきた。
「ダンジョンに入って、死にかけている探索者へ高値で回復ポーションを売りさばく錬金術師か……」
悪の組織に入った気分だが、方針としては良さそうだ。
「錬金術ギルドに睨まれないよう、マスターのポーションは一本1000万円で売りましょう。死にかけていたら3000万円まで値上げするのもいいですね。他の商品も定価の数倍で売れば、借金なんてすぐに返せますよ」
すごく悪い笑みを浮かべているユミがいる。
育て方を間違っちゃったのかもしれない……。
「さすがにそれは、人道に反しない?」
「そうでもしないと、今のマスターはお金が稼げません。錬金術師を辞めて山奥でひっそりと暮らしますか? 私はそれでもいいですけど」
「それは嫌だなぁ」
俺から錬金術を取り上げたら何も残らない。ユミによしよしされるだけの生き物になってしまう。
どうするか悩んでいると、俺たちのやりとりを見守ってくれていた知晴さんが口を開く。
「ダンジョンで相場以上の値段で売るのは良いアイデアだ。悪かねぇ。そこは裕真も賛成しているんだろ?」
「うん。方針は問題ないと思っている。気になっているのは、死にかけの探索者にあり得ないほどの金額をふっかけることかな」
「だったら、物納も許可すればいいだろ」
「あっ! なるほど! それは俺が嬉しい!」
金を稼いでも、錬金術の素材で消えてしまう。
ダンジョンで手に入ったばかりなら品質は最高に近い状態だ。
管理が難しい素材は、その場で錬成すれば保管庫がなくても商売は続けられる。
さすが支部長にまで成り上がった男。
素晴らしいアイデアだった。
「よし! ダンジョンで行商をしよう! 売り物はたっぷりあるから、明日にでも!」
ようやく解決の糸口が見えて見えて嬉しくなって立ち上がった。ユミを見る。
「探索者には定価の4倍ぐらいまでに抑えて、足りなければ素材と交換する、でもいいか?」
「マスターが、それでいいのでしたら」
無理して同意しているようには見えない。ユミも賛成してくれたので自信が湧いてくる。
「ダンジョンで行商するだけなら、ギルドも文句は言わないと思うが、新しい動きがあれば連絡する。だから通信代の未払いも何とかしておけよ」
「ということだ、ユミ、お金のことは任せた!」
「任されました。これからは徹底的に管理いたします」
「お前たち、それでいいのかよ……」
知晴さんに呆れた顔をされてしまったが、俺が金を管理をするより安心できる。
人工精霊のユミは、頼もしいパートナーだからね。
「今回のマスターは正しい判断をされました。社会性がないので集団の中で生きていくのは難しいと思います」
「さすがは人工精霊、ご主人のことをよく知っているな」
二人とも酷いことを言う。
ここは認識を変えてもらわなければ。
「頑張れば集団の中でも活躍できるぞ」
「生まれて数年の人工精霊よりも常識を知らず、錬金術ギルドでボッチだったマスターには不可能です。ずっと見てきた私が、保証してあげます」
自信を持って言われてしまった。反論したいが、言葉が思い浮かばない。
実は俺も、言いながらちょっと無理かな? って思ってたからね。
特に錬金術に関わることだと、周りが見えなくなる。
良い素材があれば作りたい物は沢山あるし、クランメンバーの需要なんて無視して、素材をあるだけ使ってしまうかもしれない。ううん、間違いなく使う。
それで追い出されるならマシで、素材費を請求されたら目も当てられない。
借金がさらに膨れ上がってしまう。
「じゃあ、どうすればいいんだ……」
時代の流れに乗っていけないので、独自の道を開拓するしかない。それも個人で活動し、錬金術ギルドに睨まれない形で。
難癖を付けて免許を取り上げるぐらいのことは容易に出来る組織だから、出来れば敵に回したくないんだよね。
ん? そういえば免許の維持費を一度も支払ったことなかった。知晴さんがいい感じに誤魔化してくれているのかな。
「マスター、回復ポーションが最も必要とされる場所はわかりますか?」
「病院じゃない?」
ケガ人が運ばれる場所なのだから、いつも必要とされているはずだ。錬金術ギルドも常に大量の回復と解毒ポーションを卸している、と聞いたことがある。
「他にもあります。それも、錬金術ギルドが手を出せない場所です」
「そんな都合のいい場所あるのか?」
他には探索者ギルドが思い浮かぶものの、あそこは大量には扱っていない。基本的には錬金術ギルドが経営している店で買えって方針だからね。
海外にも現地の錬金術ギルドはあるので、輸出という線もないだろう。
各家庭にも回復ポーション等は購入、保管されているが、低品質の物ばかり。これから錬金術ギルドが狙っていきそうな場所だ。
「うーーーーん。降参だ。答えを教えてくれ」
「死にかけの探索者に売ればいいんですよ。定価より高めで」
「どういうことだ?」
知晴さんは、ほぉと感心した顔をしているけど、俺はさっぱりだ。
探索者を背後から襲って、死にかけたところで回復ポーションを売りつけるのだろうか。
マッチポンプってやつだ。
これなら警察にバレない限り商売は続けられる。
幽灯蝶なら気づかれずに攻撃することも可能だろう。
お、意外と、それが答えなのかもしれないな。
「何を考えているか知りませんが、マスターは間違っています」
「そ、そうなのか?」
「はい。私はダンジョンで売れば良いと考えていますよ」
ユミが自信を持って発表したアイデアに、知晴さんが乗っかる。
「常に危険で緊急性が高い場所だ。上級回復ポーションなら定価の倍でも、即決して買うだろうな」
「そんな都合良くいく? 値下げ合戦にならない?」
「パーティやクランに所属せず、ダンジョンで直接、ポーションを売りさばくような錬金術師が裕真以外にいるなら、そうなるかもな」
錬金術師はギルドの店で活動する。野良がいても個人店を構えるか、探索者のパーティに入る。
ギルドから追い出されて、個人活動するバカな錬金術師はいない。
…………俺以外はな。
知晴さんの言葉に納得した。
「定価より高く売るって、いいのか? そりゃ多少の手間賃は欲しいけどさ」
錬金術は半分以上、趣味でやっているので、高い金を取るのに罪悪感を覚える。
ギルドみたいに高値で売るなんて、気が引けてしまいどうしても出来ない。バカだなと思われそうだけど、そういう性格なんだから仕方がないと諦めてくれ。
「マスター、富士山に自動販売機が置かれているのですが、いくらで販売されているか知っています?」
「手間賃とか考えると300円とか?」
「約500円です」
「高っ!!」
「とあるテーマパークだと250円です。場所によって値段が変わるのは、普通なんですよ」
俺は自他共に常識が無いと認めている。
人工精霊のユミだって生まれた当初は同じだったが、勉強を続けて今じゃ俺より常識的だ。それでも細かいところは抜けているが、それでも彼女が自信を持って言うのであれば間違ってはないのだろう。
販売する人が行きたがらない場所では、何倍の値段で売っても普通。それが世の中の原理なんだろう。高値で売ることへの罪悪感が薄れてきた。
「ダンジョンに入って、死にかけている探索者へ高値で回復ポーションを売りさばく錬金術師か……」
悪の組織に入った気分だが、方針としては良さそうだ。
「錬金術ギルドに睨まれないよう、マスターのポーションは一本1000万円で売りましょう。死にかけていたら3000万円まで値上げするのもいいですね。他の商品も定価の数倍で売れば、借金なんてすぐに返せますよ」
すごく悪い笑みを浮かべているユミがいる。
育て方を間違っちゃったのかもしれない……。
「さすがにそれは、人道に反しない?」
「そうでもしないと、今のマスターはお金が稼げません。錬金術師を辞めて山奥でひっそりと暮らしますか? 私はそれでもいいですけど」
「それは嫌だなぁ」
俺から錬金術を取り上げたら何も残らない。ユミによしよしされるだけの生き物になってしまう。
どうするか悩んでいると、俺たちのやりとりを見守ってくれていた知晴さんが口を開く。
「ダンジョンで相場以上の値段で売るのは良いアイデアだ。悪かねぇ。そこは裕真も賛成しているんだろ?」
「うん。方針は問題ないと思っている。気になっているのは、死にかけの探索者にあり得ないほどの金額をふっかけることかな」
「だったら、物納も許可すればいいだろ」
「あっ! なるほど! それは俺が嬉しい!」
金を稼いでも、錬金術の素材で消えてしまう。
ダンジョンで手に入ったばかりなら品質は最高に近い状態だ。
管理が難しい素材は、その場で錬成すれば保管庫がなくても商売は続けられる。
さすが支部長にまで成り上がった男。
素晴らしいアイデアだった。
「よし! ダンジョンで行商をしよう! 売り物はたっぷりあるから、明日にでも!」
ようやく解決の糸口が見えて見えて嬉しくなって立ち上がった。ユミを見る。
「探索者には定価の4倍ぐらいまでに抑えて、足りなければ素材と交換する、でもいいか?」
「マスターが、それでいいのでしたら」
無理して同意しているようには見えない。ユミも賛成してくれたので自信が湧いてくる。
「ダンジョンで行商するだけなら、ギルドも文句は言わないと思うが、新しい動きがあれば連絡する。だから通信代の未払いも何とかしておけよ」
「ということだ、ユミ、お金のことは任せた!」
「任されました。これからは徹底的に管理いたします」
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人工精霊のユミは、頼もしいパートナーだからね。
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