借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた

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第10話 初めての取引に向けて

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 魔物と戦わずに、地下2階にまで来てしまった。

 階段付近で休憩している若い探索者が座っている。誰も怪我はしておらず、俺とユミを見てヒソヒソと話している。『ポーション各種販売します』と書いた旗を持っているのに、犯罪者のように思われているようだ。

 こう、空気感的に、話しかけてもポーションを買ってもらえるとは思えなかった。

「先に行こう」
「はい。マスター」

 探索者が休憩する場所は階段付近の他、大きめの部屋が定番と決まっている。現在地から一時間ほど歩いた場所にあるため、向かうことにした。

 ユミが先行して通路を歩く。

 5分ほど進むとようやく生きている魔物と出会った。

 岩を積み重ねて人の形を模倣したレッサーストーンゴーレムだ。身長はユミと同じぐらいで、肩や頭に苔が付着している。硬そうに見えるが、指でも削れるほど脆い。

 俺たちを発見すると走って来たのだが、間に入り込んだ幽灯蝶と接触し、電撃が流れてボロボロと崩れ去ってしまった。

 地下二階に出現する程度の魔物じゃ、相手にならないな。

「魔石は回収しますか?」
「うん。お願い」

 魔物には必ず体内に魔石がある。電池代わりになるんだけど、弱い個体だと小さく、強い個体だと大きい。容量も全然違う。

 今回倒したレッサーストーンゴーレムだと、家で使っている発電機を数日動かすぐらいのパワーしかない。普段なら無視するサイズなんだけど、今は電気が止まったら暑くて死んでしまう。

 回収しておくべきだろう。

 そのぐらい俺だって分かるのだ。

 魔石を拾ったユミはマジックバッグに入れて歩き出す。

 魔物と会わずに休憩所まで着いた。都合よく怪我をしている探索者が数人いる。

「そこの君、怪我をしているみたいだけど、俺の回復ポーションを買わない? すっごく効くよ」

 優しそうな女性に声をかけると、キリッと睨まれてしまった。

 さらには仲間と思われる二人の男が間に入ってくる。

「回復ポーションぐらい持っている。不要だ」
「ほら、でも、俺のは高性能だよ?」
「ダンジョンにまで来て売りつけるような商品が高性能? はっ、信じられるかってんだ」

 困ったな。疑われてしまっている。交渉するのも面倒だし、他の客を探そうかな。

「マスターを愚弄するなんて……お前、に遭いたいのか?」

 あ、ユミが切れている。

 部屋中を満たすほどの幽灯蝶が出現して、昼間のように明るくなる。

 一人でも逃してしまえば契約精霊の暴走を報告されてしまい、俺たちは探索者ギルドからペナルティーを受けてしまうので、無関係な人も含めて皆殺しにするつもりなんだろう。

 この場にいるのは装備からして5級の探索者だ。第三世代だろうけど、魔力の鍛え方が甘そうなので、さほど肉体強化はされていない。反撃すらできず、黒焦げになるはずだ。

 唐突に発生した大量殺人の危機に、表面上は慌てず、冷や汗をかきながらユミの肩に手を置く。

「価値が分からない人を相手にしている時間はない。他を当たろう」
「マスター、よろしいのですか?」
「うん。こんなところで無駄に力を使う必要はないよ」

 俺の言葉でようやくユミは落ち着いたようだ。部屋を満たしていた幽灯蝶が一気に減った。

 これ以上のトラブルは避けたいので、何かを言われる前に部屋から出ていく。

 幸いなことに、誰も追っては来なかった。

「マスター、これからどうしますか?」

 先ほどガチギレしていたとは思えないほど、穏やかな声だ。機嫌は直っていると思っていいだろう。多分ね。

「そうだなぁ。もっと下に行こうか」
「いいですね。死にかけた探索者が、たくさんいそうです」

 さらに地下へ行った方が、回復ポーションを使い切った探索者がいると思っただけなんだけど、ユミは物騒な発想をしていた。

 ただ、あながち考え方は間違いじゃない。

 死にかけていれば俺が怪しくても、藁にもすがる思いで回復ポーションを購入してくれるだろう。また地下に行けば状態異常を引き起こす魔物も出現するようになる。

 回復だけじゃなく、解毒や解呪のポーションだって買ってもらえるかもしれない。

「それじゃ地下10階を目指そうか」

 俺たちの行ったことがある最も深い場所だ。

 渋谷ダンジョンは13階まで攻略されている。噂だと20階で終わりらしいんだけど、誰もたどり着いていないので推測でしかない。

「わかりました。私は魔物と戦いますので、マスターは最短ルートを指示してください」
「任せて。それならできる」

 道案内をしながら、ユミは魔物と戦っていく。

 複数と戦うこともあったが、大量の幽灯蝶を出現させ、電撃で攻撃すれば負けることはない。足を止めることすらなく通路を順調に進んでいき、半日ほどで地下10階までたどり着いた。

 ここまで来ると上層とは雰囲気が違う。

 空気に含まれる魔力が濃いというか、重い感じがするのだ。

 階段付近で休憩している探索者たちは強く、最低でも3級の免許を持っている実力者ばかりだろう。

 怪我をしている人がいないことを確認すると、俺たちは通路を歩いていく。

 目的地は10階の中心近くにある大部屋だ。休憩所として使われることもあって、怪我人もしくは死にかけの探索者がいるかもしれない。

 ついに初めての取引ができるかもと、ワクワクしている。スキップして歩いていたのだが、俺たちに向かって走ってくる探索者の集団が来た。

「やばい魔物が暴れている! 下から上がってきたんだ! 死にたくなければ逃げろ!」

 親切なことに通り過ぎる際、忠告してくれた。

 怪我人もいたのでポーションを売りつけたかったが、声をかける余裕がなかった。

「マスターどうします?」
「先に行こう」

 探索者が逃げ出すほど強力な魔物がいるのであれば、回復ポーションの需要はあるだろう。

 怪しいと思っても買う人もいるはずだ。

 一度でも使って効果を確認すれば、リピートしてもらえる自信はある。

 この際、大幅な割引をしてもいいので、さっさと最初の一回を使ってもらおう。

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