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第12話 交渉成立
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親切な探索者の忠告を無視して通路を進んでいると、奥から青い鱗を持つドラゴンが迫ってきた。額に浅い傷がある。誰かと戦っていたのだろうか。
「マスターは、後ろに下がっていてください」
走ってくるドラゴンの前に立つつもりはなかった。
言われた通りにすると、ユミはドラゴンとの間に大量の幽灯蝶を出現させる。淡い光が強くなって、通路が明るくなった。
明らかに罠だとわかるのに、ドラゴンは足を止めない。突っ込んできた。
危機管理能力が消し飛んでいるのか?
まともな状態ではなさそうだ。
全身が幽灯蝶の中に入った瞬間、ユミは命令を下して電撃を流す。
激しい光で視界が真っ白になった。
ドラゴンの走る音が止まって、悲鳴が聞こえる。
視界が戻るとドラゴンが倒れていた。足や尻尾が痙攣している。体が痺れて動かないのだろう。
「止めを刺しますか?」
「俺たちの持っている武器じゃ殺せないよ」
ドラゴンの生命力は非常に高い。幽灯蝶もそうだけど、他の下位精霊や俺の持っている道具じゃ、殺すにしても時間がかかりすぎる。
傷を付けている間に、ドラゴンは痺れが取れてしまうだろう。
正面から戦うのは危険だ。
ドラゴンの素材は非常に貴重だし、欲しいけどユミの命には替えられない。
探索者の誰かが倒して素材が出回ってくることを期待し、この場は離れよう。
「早く素材として地上に出てきてくれよ」
ポンとドラゴンの頭を叩いてから、ユミと一緒に敵がやってきた道を進む。しばらくして、休憩所に使われる部屋へ着いた。
床が凍り付いていて、別の通路につながる場所には誠がいる。
数少ない友人だ。無視はしない。
「奇遇だね」
声をかけて近づくと、驚く顔をしていたが、それはこっちも同じだ。
慌ててユミの目を俺の手で覆う。
「マスター?」
「教育上、よくない光景がある。しばらくこうさせてくれ」
疑問を浮かべたユミの目を隠したまま、倒れている男を見る。誠が近くにいることから、パーティメンバーなんだろう。
「倒れている男は誠の仲間だよね?」
「あ、ああ。そうだが」
「露出しているのは、彼の趣味なのか……?」
上半身は服を着ているのに、なぜか下半身は下着すら着けていない。ダンジョンで解放感を楽しんで寝てしまったのだろうか。
サイズからして自慢したくなるのはわかるが、時と場所、できれば人も選ぶべきだろう。
誠は真面目な性格だと思っていたんだけど、パーティメンバーに変態が紛れ込んでいたようだ。
「どうして、そんな発想が出てくるんだよ」
呆れたように言われてしまったけど、他に思い浮かばないんだから仕方がない。
露出狂だと言わなかった、俺の気づかいを褒めて欲しいぐらいだ。
「誠さん、あのふざけた人は知り合いですか?」
「そうだ。ここは俺に任せてくれ」
「……わかりました。僕は二人が目覚めるまで、周囲を警戒しておきます」
さらっと酷いことを言った少年は、俺のことを軽く睨んでから、黙って下半身を露出している男に布をかけた。
これでユミを解放できる。
手を離してあげた。
「どうして裕真がダンジョンにいるんだ? 何をしに来た?」
「行商だよ」
誠に聞かれた俺は、『ポーション各種販売します』と書かれた旗を見せた。
「路上販売の次は、ダンジョンでの行商かよ……」
「そうだよ。ということで、回復だけでもいいからポーション買わない?」
偶然、友人と出会ったのだ。
この機会に売り込んでみた。
「いくらだ?」
「一本100万……」
「200万円ですっ!」
俺の言葉にかぶせて、ユミが値段を言ってしまった。
定価の4倍だ。やっぱり高すぎないか? と心配になったのだが、意外なことに誠から文句は出なかった。
「四本売って欲しいのだが、今は手持ちが足りない。不足分は素材払いにできないか?」
「素材? 何があるの?」
「高純度のミスリル銀鉱石でよければ、30kgなら渡せる」
「それでいい! 交渉成立だ!」
回復ポーションと交換できるなら安い物だ!
取りに行くのは面倒なので、非常に助かる。
「マスター、それだと滞納分が……」
「また稼げばいいだけだよ。回復ポーションの在庫はあるんだし、金を稼ぐチャンスはあるだろう」
「在庫はある……か」
何か考えた様子の誠だったが、すぐに別の交渉をしてくる。
「残りの在庫も全部、売って欲しい。いや、それだけじゃなく、今後は俺の専属錬金術師として活動しないか?」
「悪いが断る」
考えるまでもない。知晴さんに指摘されたとおり、俺は他人の行動にあわせて動くなんてことはできないのだ。
自由に生きる。
これは決定事項で、変えるつもりはなかった。
「億単位の金を支払うと言っても?」
「悪いな。金の問題じゃないんだ」
「それは残念だ……」
「まあ優先的に売ることぐらいはしてもいい。欲しくなったら俺の家にでも来てくれ。値段もそれなりに勉強するからさ」
クランに入っていない誠は、これから上級のアイテムが手に入りにくくなる。数少ない友達なんだから、このぐらいの配慮はしてもいいだろう。
「それは助かる。後で欲しいものをまとめておくよ」
一通り話が済んだので、回復ポーションを渡して代わりに現金とミスリル銀の鉱石をもらった。
純度が非常に高い。これを使えば、新しいレシピを作れそうだ。
初めての行商は、大成功だな!
「マスターは、後ろに下がっていてください」
走ってくるドラゴンの前に立つつもりはなかった。
言われた通りにすると、ユミはドラゴンとの間に大量の幽灯蝶を出現させる。淡い光が強くなって、通路が明るくなった。
明らかに罠だとわかるのに、ドラゴンは足を止めない。突っ込んできた。
危機管理能力が消し飛んでいるのか?
まともな状態ではなさそうだ。
全身が幽灯蝶の中に入った瞬間、ユミは命令を下して電撃を流す。
激しい光で視界が真っ白になった。
ドラゴンの走る音が止まって、悲鳴が聞こえる。
視界が戻るとドラゴンが倒れていた。足や尻尾が痙攣している。体が痺れて動かないのだろう。
「止めを刺しますか?」
「俺たちの持っている武器じゃ殺せないよ」
ドラゴンの生命力は非常に高い。幽灯蝶もそうだけど、他の下位精霊や俺の持っている道具じゃ、殺すにしても時間がかかりすぎる。
傷を付けている間に、ドラゴンは痺れが取れてしまうだろう。
正面から戦うのは危険だ。
ドラゴンの素材は非常に貴重だし、欲しいけどユミの命には替えられない。
探索者の誰かが倒して素材が出回ってくることを期待し、この場は離れよう。
「早く素材として地上に出てきてくれよ」
ポンとドラゴンの頭を叩いてから、ユミと一緒に敵がやってきた道を進む。しばらくして、休憩所に使われる部屋へ着いた。
床が凍り付いていて、別の通路につながる場所には誠がいる。
数少ない友人だ。無視はしない。
「奇遇だね」
声をかけて近づくと、驚く顔をしていたが、それはこっちも同じだ。
慌ててユミの目を俺の手で覆う。
「マスター?」
「教育上、よくない光景がある。しばらくこうさせてくれ」
疑問を浮かべたユミの目を隠したまま、倒れている男を見る。誠が近くにいることから、パーティメンバーなんだろう。
「倒れている男は誠の仲間だよね?」
「あ、ああ。そうだが」
「露出しているのは、彼の趣味なのか……?」
上半身は服を着ているのに、なぜか下半身は下着すら着けていない。ダンジョンで解放感を楽しんで寝てしまったのだろうか。
サイズからして自慢したくなるのはわかるが、時と場所、できれば人も選ぶべきだろう。
誠は真面目な性格だと思っていたんだけど、パーティメンバーに変態が紛れ込んでいたようだ。
「どうして、そんな発想が出てくるんだよ」
呆れたように言われてしまったけど、他に思い浮かばないんだから仕方がない。
露出狂だと言わなかった、俺の気づかいを褒めて欲しいぐらいだ。
「誠さん、あのふざけた人は知り合いですか?」
「そうだ。ここは俺に任せてくれ」
「……わかりました。僕は二人が目覚めるまで、周囲を警戒しておきます」
さらっと酷いことを言った少年は、俺のことを軽く睨んでから、黙って下半身を露出している男に布をかけた。
これでユミを解放できる。
手を離してあげた。
「どうして裕真がダンジョンにいるんだ? 何をしに来た?」
「行商だよ」
誠に聞かれた俺は、『ポーション各種販売します』と書かれた旗を見せた。
「路上販売の次は、ダンジョンでの行商かよ……」
「そうだよ。ということで、回復だけでもいいからポーション買わない?」
偶然、友人と出会ったのだ。
この機会に売り込んでみた。
「いくらだ?」
「一本100万……」
「200万円ですっ!」
俺の言葉にかぶせて、ユミが値段を言ってしまった。
定価の4倍だ。やっぱり高すぎないか? と心配になったのだが、意外なことに誠から文句は出なかった。
「四本売って欲しいのだが、今は手持ちが足りない。不足分は素材払いにできないか?」
「素材? 何があるの?」
「高純度のミスリル銀鉱石でよければ、30kgなら渡せる」
「それでいい! 交渉成立だ!」
回復ポーションと交換できるなら安い物だ!
取りに行くのは面倒なので、非常に助かる。
「マスター、それだと滞納分が……」
「また稼げばいいだけだよ。回復ポーションの在庫はあるんだし、金を稼ぐチャンスはあるだろう」
「在庫はある……か」
何か考えた様子の誠だったが、すぐに別の交渉をしてくる。
「残りの在庫も全部、売って欲しい。いや、それだけじゃなく、今後は俺の専属錬金術師として活動しないか?」
「悪いが断る」
考えるまでもない。知晴さんに指摘されたとおり、俺は他人の行動にあわせて動くなんてことはできないのだ。
自由に生きる。
これは決定事項で、変えるつもりはなかった。
「億単位の金を支払うと言っても?」
「悪いな。金の問題じゃないんだ」
「それは残念だ……」
「まあ優先的に売ることぐらいはしてもいい。欲しくなったら俺の家にでも来てくれ。値段もそれなりに勉強するからさ」
クランに入っていない誠は、これから上級のアイテムが手に入りにくくなる。数少ない友達なんだから、このぐらいの配慮はしてもいいだろう。
「それは助かる。後で欲しいものをまとめておくよ」
一通り話が済んだので、回復ポーションを渡して代わりに現金とミスリル銀の鉱石をもらった。
純度が非常に高い。これを使えば、新しいレシピを作れそうだ。
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