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第30話 戦いの準備
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ユミとの会話を終えてお茶を飲んでいると、受付にテレビの取材陣が入ってきた。討伐隊の総責任者である一色さんが対応するみたいで、取り囲まれている。
勝利を確信している、みたいなことを言っていて、画面越しの人たちを安心させようとしていた。
「頑張ってるね」
俺だったら面倒になって逃げているけど、一色さんはそんなことせず、真面目な表情をして嘘をついているのだ。ある意味尊敬するよ。絶対に真似できない。
「取材陣が俺たちに気づいたら面倒だ。そろそろ行こう」
誠の言う通りなので、一気にお茶を飲むと俺たちも渋谷のダンジョンへ入ることにした。
ばーちゃんは知晴さんと一緒に地上でお留守番だ。
先頭は護衛の誠パーティに任せていて、地下1階を歩いている。俺の後ろにはユミ、ミスラムはぽよん、ぽよんと跳ねて付いてきている。
「ドラゴンには動きがない。準備は間に合いそうだな」
誠の手には位置情報が表示されるスマホを持っていて、定期的に居場所を確認しているようだ。
上にくれば騒がしくなるので、すぐ分かるから確認しなくていいのに。律儀で真面目な男だ。
まあ、そんな誠だからこそ、俺にもお金を貸してくれるんだろうけど。
「裕真は前に出るなよ?」
「大丈夫だって。誰かが死にかけるまでは動かないよ」
「本当だろうなぁ……」
なんで疑いの目を向けているんだろう。
俺は後方支援部隊だ。ポーションが切れて死にかけた探索者が出ない限り、仕事なんてないし、するつもりもない。
「マスター、誰も死にかけなければ売上はゼロです。無傷で終わる、というのが有言実行されたら大赤字ですよ」
「でもそれは、いいことじゃない?」
「……そうですね」
「だったら、赤字なんて気にしないよ。どうしようもなくなったら、知晴さんに泣きつけばなんとかなるだろうしね」
精霊になったユミは少し感覚がズレてしまっているんだろうけど、俺は人の失敗や怪我、死を願うほどクズじゃない。
作戦が完璧に成功する代わりとして赤字になるんだったら、喜ばしいことだと思っていた。
「もし回復ポーションが一本も売れなくても、作戦参加費ぐらいはでるだろう。完全な赤字にはならないさ」
知晴さんはそんなこと教えてくれなかったけど、誠が言うなら間違いない。俺たちは参加した時点で金はもらえるらしい。
完全な赤字を回避できると知って、ユミもほっとしているようだ。
会話を終わらせ、襲ってくる魔物を排除していく。地下1階に出現する敵じゃ誠たちの相手にはならず、一発殴るだけで倒してしまう。移動を優先して魔石は取らない。
もったいないなと思いつつ死体を通り過ぎて、先に進んで地下2階に向かう階段前へ到着した。
戦闘ができる程度の広さはあって、周囲にはブレスを防ぐ壁が設置されている。冷気を減少させる金属で作られているので、期待通りの効果を発揮してくれると思う。
作業を進めている探索者たちの顔は明るい。
ドラゴン相手でも準備がしっかりできるなら、絶望的な状況にはならないという自信があるんだろう。
「俺たちは、ここで待機だ。余計なことを言うなよ?」
「わかってるって。同じ失敗はしないよ」
誠に注意されなくても、不必要に探索者と絡むつもりはない。
迎撃ポイントから離れた場所で、作業を眺めさせてもらおう。
ミスラムを拡大させてソファの形にすると、俺はドサリと座る。ユミはちょんと隣に腰を下ろすと、ポーチ型のマジックバッグから水筒を出してくれた。
蓋を開けて口を付ける。中に氷が入っていることもあって、すごく冷たい。喉が潤い、頭がリフレッシュした。快適である。
「お前……絶対に印象悪いぞ」
「役割分担だよ。気にしない、気にしない」
作業を手伝っても邪魔になるだけだしね。
こうやって何もせず見学しているのが一番なんだよ。
「誠も飲む?」
「遠慮しておく」
真面目な性格だから、護衛に集中したいそうだ。
近づいてくる子供ぐらい大きいネズミを殴り殺していた。
すぐ下にドラゴンがいるのに、弱い魔物は逃げていない。興味ないんだろう。
階層ごとに何か……意識とかが断絶しているのかな? 面白い。錬金術と同じく、ダンジョンや魔物も謎に満ちている。
「マスター、なんで笑っているんですか?」
「世界は興味深いと思ってね」
「そうかもしれませんが、生活のことにも興味を持ってください。特にお金のこととか」
何を言っても怒らせてしまいそうだなと思ったので、無言で頭を撫でて誤魔化しておいた。
生活については、今後もユミに頼らせてもらおう。
話している間にも迎撃の準備は順調に進んでいて、地雷の設置を進めていた。錬金術で爆発させる薬剤を作っているため、魔物にも効果があるはずだ。
地雷一個で弱い魔物は跡形もなく吹き飛ばす威力はあるけど、ドラゴン相手だとどのぐらいの効果があるんだろうか。
多分だけど、そこまでは期待できない。
鱗を傷つけることができれば、上出来か。
ドラゴンの位置は相変わらず変化ない。
迎撃準備も終わって、探索者たちは床に座り休んでいる。相手は魔物だから今日中には動きが出ないかもしれない。
意外と長期戦になるかもな、なんて思っていたら数名の探索者が地下2階へ降りていく。
何しに行ったんだろうと疑問に思っていたら、1級探索者の久我さんが近づいてきた。
勝利を確信している、みたいなことを言っていて、画面越しの人たちを安心させようとしていた。
「頑張ってるね」
俺だったら面倒になって逃げているけど、一色さんはそんなことせず、真面目な表情をして嘘をついているのだ。ある意味尊敬するよ。絶対に真似できない。
「取材陣が俺たちに気づいたら面倒だ。そろそろ行こう」
誠の言う通りなので、一気にお茶を飲むと俺たちも渋谷のダンジョンへ入ることにした。
ばーちゃんは知晴さんと一緒に地上でお留守番だ。
先頭は護衛の誠パーティに任せていて、地下1階を歩いている。俺の後ろにはユミ、ミスラムはぽよん、ぽよんと跳ねて付いてきている。
「ドラゴンには動きがない。準備は間に合いそうだな」
誠の手には位置情報が表示されるスマホを持っていて、定期的に居場所を確認しているようだ。
上にくれば騒がしくなるので、すぐ分かるから確認しなくていいのに。律儀で真面目な男だ。
まあ、そんな誠だからこそ、俺にもお金を貸してくれるんだろうけど。
「裕真は前に出るなよ?」
「大丈夫だって。誰かが死にかけるまでは動かないよ」
「本当だろうなぁ……」
なんで疑いの目を向けているんだろう。
俺は後方支援部隊だ。ポーションが切れて死にかけた探索者が出ない限り、仕事なんてないし、するつもりもない。
「マスター、誰も死にかけなければ売上はゼロです。無傷で終わる、というのが有言実行されたら大赤字ですよ」
「でもそれは、いいことじゃない?」
「……そうですね」
「だったら、赤字なんて気にしないよ。どうしようもなくなったら、知晴さんに泣きつけばなんとかなるだろうしね」
精霊になったユミは少し感覚がズレてしまっているんだろうけど、俺は人の失敗や怪我、死を願うほどクズじゃない。
作戦が完璧に成功する代わりとして赤字になるんだったら、喜ばしいことだと思っていた。
「もし回復ポーションが一本も売れなくても、作戦参加費ぐらいはでるだろう。完全な赤字にはならないさ」
知晴さんはそんなこと教えてくれなかったけど、誠が言うなら間違いない。俺たちは参加した時点で金はもらえるらしい。
完全な赤字を回避できると知って、ユミもほっとしているようだ。
会話を終わらせ、襲ってくる魔物を排除していく。地下1階に出現する敵じゃ誠たちの相手にはならず、一発殴るだけで倒してしまう。移動を優先して魔石は取らない。
もったいないなと思いつつ死体を通り過ぎて、先に進んで地下2階に向かう階段前へ到着した。
戦闘ができる程度の広さはあって、周囲にはブレスを防ぐ壁が設置されている。冷気を減少させる金属で作られているので、期待通りの効果を発揮してくれると思う。
作業を進めている探索者たちの顔は明るい。
ドラゴン相手でも準備がしっかりできるなら、絶望的な状況にはならないという自信があるんだろう。
「俺たちは、ここで待機だ。余計なことを言うなよ?」
「わかってるって。同じ失敗はしないよ」
誠に注意されなくても、不必要に探索者と絡むつもりはない。
迎撃ポイントから離れた場所で、作業を眺めさせてもらおう。
ミスラムを拡大させてソファの形にすると、俺はドサリと座る。ユミはちょんと隣に腰を下ろすと、ポーチ型のマジックバッグから水筒を出してくれた。
蓋を開けて口を付ける。中に氷が入っていることもあって、すごく冷たい。喉が潤い、頭がリフレッシュした。快適である。
「お前……絶対に印象悪いぞ」
「役割分担だよ。気にしない、気にしない」
作業を手伝っても邪魔になるだけだしね。
こうやって何もせず見学しているのが一番なんだよ。
「誠も飲む?」
「遠慮しておく」
真面目な性格だから、護衛に集中したいそうだ。
近づいてくる子供ぐらい大きいネズミを殴り殺していた。
すぐ下にドラゴンがいるのに、弱い魔物は逃げていない。興味ないんだろう。
階層ごとに何か……意識とかが断絶しているのかな? 面白い。錬金術と同じく、ダンジョンや魔物も謎に満ちている。
「マスター、なんで笑っているんですか?」
「世界は興味深いと思ってね」
「そうかもしれませんが、生活のことにも興味を持ってください。特にお金のこととか」
何を言っても怒らせてしまいそうだなと思ったので、無言で頭を撫でて誤魔化しておいた。
生活については、今後もユミに頼らせてもらおう。
話している間にも迎撃の準備は順調に進んでいて、地雷の設置を進めていた。錬金術で爆発させる薬剤を作っているため、魔物にも効果があるはずだ。
地雷一個で弱い魔物は跡形もなく吹き飛ばす威力はあるけど、ドラゴン相手だとどのぐらいの効果があるんだろうか。
多分だけど、そこまでは期待できない。
鱗を傷つけることができれば、上出来か。
ドラゴンの位置は相変わらず変化ない。
迎撃準備も終わって、探索者たちは床に座り休んでいる。相手は魔物だから今日中には動きが出ないかもしれない。
意外と長期戦になるかもな、なんて思っていたら数名の探索者が地下2階へ降りていく。
何しに行ったんだろうと疑問に思っていたら、1級探索者の久我さんが近づいてきた。
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