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第33話 実演販売
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計画通りに進んで完勝まで見えていたと思ったんだけど、ドラゴンは甘くなかった。
苦痛を感じながらも大きく口を開いたのだ。ブレスとは違う。攻撃までの動作が速い。
「グォォォッッ!!」
ドラゴンが衝撃波を伴う叫び声を上げた。
ダンジョン全体が振動したんじゃないかと錯覚するほどの威力で、攻撃に参加していた探索者たちは吹き飛ばされ、壁や床に叩きつけられる。全身を強く打ち付けたみたいで、すぐに動き出せる状態じゃない。
頭部から血を流しているドラゴンが立ち上がると、顔を上げて息を吸い込み、今度はブレスを吐き出した。
先ほどよりも威力は大きいみたい。
床や天井、対冷気用の金属で作られた壁までもが凍り付く。
俺たちの所にも冷気は届いているけど、事前にポーションを飲んでいたおかげで無事だ。でもドラゴンの近くにいた探索者たちは体の一部が凍り付き、末端部分が砕けている人までいる。
体が動かないので、探索者たちは回復ポーションを飲めない。
たった二度の攻撃で、形勢逆転されてしまった。討伐隊は崩壊寸前だ。
このままじゃドラゴンに踏み潰されて全滅だぞ。
「ユミはミスラムで時間を稼いで!」
「マスター、わかりました!」
迷うことなく指示に従ってくれたユミは、駆け出してドラゴンの前に立つ。
気温が極度に下がっているのか息が白い。
『拘束』
ミスラムに触れながらユミが命令を出すと、液体金属の体から無数の触手が伸びてドラゴンの翼や腕、足、口に絡みついた。さらに魔力を注いで硬質化させると、相手の動きを奪うことに成功する。
ドラゴンは抜け出そうと体を動かそうとするが、そこに幽灯蝶が殺到して、電撃によって体を痺れさせた。力は入らないようで体が横になる。
これで、かなりの時間が稼げるぞ。
少し遅れて俺も駆け出していて、重傷そうな人から回復ポーションと対冷気ポーションを飲んでもらう。回復ポーション以外は俺の持ち出しになるが、探索者を死なせないためには必要なことだ。かまわず瓶を口に突っ込んでいく。
幸運なことに、みんな意識は残っているみたいで口移しをする必要はなかった。
重傷者の手当が終わったので、1級探索者の久我さんを探す。
傷だらけで体の一部が凍り付いているのに、ハンマーを杖のようにして立とうとしていた。
「無茶だよ!」
「誰も死なせないためだ! 無茶でも何でもしてやるっ!」
燃え上がるような、すごい闘志だ。
俺には持っていないもので、尊敬すると共に助けたいと思った。
こうなったら大盤振る舞いだ!
「だったら、これを飲んで!」
3つの瓶を開けると口に突っ込んだ。
「ふごっ!?」
驚いて俺を見たけど、ポーションを飲ませてもらっていると分かって、大人しくなった。
受けていた傷や凍結は瞬時に消えて動けるようになっているけど、変化はそれだけじゃない。
「なんだこれ……力が湧き出てくるようだ」
「肉体強化ポーションの効果だね」
「世界で数百本しか作られたことのない、貴重なものじゃないかっ!?」
あれ? そうなの?
ばーちゃんとか、普通に作っていたんだけど……?
素材の入手難易度はドラゴンパウダーだけが高く、他は金を出せば買える物ばかりだったので、もっと一般的に流通しているかと思っていた。
それでも数が少ないってことは、錬成に失敗している人が多いのかな。
俺かばーちゃんがレシピを公開すれば成功率は跳ね上がりそうだけど、商売敵に技術を提供するほどお人好しじゃない。きっと何年経っても、肉体強化ポーションは貴重なアイテムのままだろう。
「ドラゴン退治に相応しいアイテムだと思わない?」
「……そうだな」
ニヤリと笑った久我さんは、小さな声で「ありがとう」と言って飛び出した。
拘束されているドラゴンの腹にハンマーを叩きつけると、血を吐き出した。内臓を傷つけたみたいだ。さらにもう一度叩きつけようとしたら、衝撃波を伴う叫び声を上げられてしまった。
久我さんは耐えたけど、近くにいたユミは吹き飛んでしまったので受け止める。
「怪我はない? 大丈夫?」
「はい!」
嬉しそうに抱きついて、返事をされてしまった。
ユミが離れてしまったことでミスラムの拘束が緩み、ドラゴンは抜け出してしまった。幽灯蝶の効果も切れてしまったようだ。ブレスを吐く準備をしている。
まだ動けない人がいるので、止めなければと思っていると、久我さんがハンマーを振り上げて顎に当てた。顔が上に向いて天井にブレスが吐かれる。さらに久我さんが蹴りを放つと、ドラゴンの巨体が僅かに浮く。
すごいパワーだ。
1級の探索者となれば、素手でもドラゴンといい戦いができるんじゃないだろうか。
久我さんがドラゴンとタイマン勝負している間に、俺とユミは体が凍結している人たちにポーションを飲ませていく。全員無傷とはいかなかったけど、今のところ死者はゼロのようだ。
探索者の回復が終わったので、戦いを見る。
ドラゴンが爪を振り下ろしたところだった。なんと久我さんは腕で受け流してしまった。
筋力だけじゃなく、体の強度まで上がっているようだ。
前に自分で肉体強化ポーションを使った時は、筋力の測定だけだったので気づかなかった。これは新しい発見だぞ。
他にも反射神経が飛躍的に向上していて、人という種の限界を軽く超えている。
面白い! もっと他に効果は出てないだろうか。例えば炎や雷、状態異常などに対する耐性だ。
誰か間違って、久我さんに魔法をぶつけて試してくれないかなぁ。
「マスターが悪い顔をしています……」
酷いなぁ。ちょっとだけ実験をしたくなっただけじゃないか。
肉体強化ポーションの実験をする機会なんて、滅多にないんだからやれることはやっておかなきゃ。
「裕真は何を飲ませたんだ?」
「肉体強化ポーションだよ。一本ぐらい買う? 保存期間は5年、効果はご覧の通りだよ」
勘の冴えている俺は、商機を逃さない。
護衛をしてくれている誠が聞いてきたので、商売をしてみた。
これが実演販売ってやつなんだろう。
「いくらだ?」
「うーん。決めてなかったなぁ~。いくらなら買う?」
「一千万円ならすぐに支払う」
「じゃあ、それで! 入金は討伐が終わった後でいいから」
一本お買い上げー!
ポーチ型のマジックバッグから肉体強化ポーションを取り出すと、誠に渡した。
俺の商才が恐ろしい。
ダンジョン行商は順調であった。
苦痛を感じながらも大きく口を開いたのだ。ブレスとは違う。攻撃までの動作が速い。
「グォォォッッ!!」
ドラゴンが衝撃波を伴う叫び声を上げた。
ダンジョン全体が振動したんじゃないかと錯覚するほどの威力で、攻撃に参加していた探索者たちは吹き飛ばされ、壁や床に叩きつけられる。全身を強く打ち付けたみたいで、すぐに動き出せる状態じゃない。
頭部から血を流しているドラゴンが立ち上がると、顔を上げて息を吸い込み、今度はブレスを吐き出した。
先ほどよりも威力は大きいみたい。
床や天井、対冷気用の金属で作られた壁までもが凍り付く。
俺たちの所にも冷気は届いているけど、事前にポーションを飲んでいたおかげで無事だ。でもドラゴンの近くにいた探索者たちは体の一部が凍り付き、末端部分が砕けている人までいる。
体が動かないので、探索者たちは回復ポーションを飲めない。
たった二度の攻撃で、形勢逆転されてしまった。討伐隊は崩壊寸前だ。
このままじゃドラゴンに踏み潰されて全滅だぞ。
「ユミはミスラムで時間を稼いで!」
「マスター、わかりました!」
迷うことなく指示に従ってくれたユミは、駆け出してドラゴンの前に立つ。
気温が極度に下がっているのか息が白い。
『拘束』
ミスラムに触れながらユミが命令を出すと、液体金属の体から無数の触手が伸びてドラゴンの翼や腕、足、口に絡みついた。さらに魔力を注いで硬質化させると、相手の動きを奪うことに成功する。
ドラゴンは抜け出そうと体を動かそうとするが、そこに幽灯蝶が殺到して、電撃によって体を痺れさせた。力は入らないようで体が横になる。
これで、かなりの時間が稼げるぞ。
少し遅れて俺も駆け出していて、重傷そうな人から回復ポーションと対冷気ポーションを飲んでもらう。回復ポーション以外は俺の持ち出しになるが、探索者を死なせないためには必要なことだ。かまわず瓶を口に突っ込んでいく。
幸運なことに、みんな意識は残っているみたいで口移しをする必要はなかった。
重傷者の手当が終わったので、1級探索者の久我さんを探す。
傷だらけで体の一部が凍り付いているのに、ハンマーを杖のようにして立とうとしていた。
「無茶だよ!」
「誰も死なせないためだ! 無茶でも何でもしてやるっ!」
燃え上がるような、すごい闘志だ。
俺には持っていないもので、尊敬すると共に助けたいと思った。
こうなったら大盤振る舞いだ!
「だったら、これを飲んで!」
3つの瓶を開けると口に突っ込んだ。
「ふごっ!?」
驚いて俺を見たけど、ポーションを飲ませてもらっていると分かって、大人しくなった。
受けていた傷や凍結は瞬時に消えて動けるようになっているけど、変化はそれだけじゃない。
「なんだこれ……力が湧き出てくるようだ」
「肉体強化ポーションの効果だね」
「世界で数百本しか作られたことのない、貴重なものじゃないかっ!?」
あれ? そうなの?
ばーちゃんとか、普通に作っていたんだけど……?
素材の入手難易度はドラゴンパウダーだけが高く、他は金を出せば買える物ばかりだったので、もっと一般的に流通しているかと思っていた。
それでも数が少ないってことは、錬成に失敗している人が多いのかな。
俺かばーちゃんがレシピを公開すれば成功率は跳ね上がりそうだけど、商売敵に技術を提供するほどお人好しじゃない。きっと何年経っても、肉体強化ポーションは貴重なアイテムのままだろう。
「ドラゴン退治に相応しいアイテムだと思わない?」
「……そうだな」
ニヤリと笑った久我さんは、小さな声で「ありがとう」と言って飛び出した。
拘束されているドラゴンの腹にハンマーを叩きつけると、血を吐き出した。内臓を傷つけたみたいだ。さらにもう一度叩きつけようとしたら、衝撃波を伴う叫び声を上げられてしまった。
久我さんは耐えたけど、近くにいたユミは吹き飛んでしまったので受け止める。
「怪我はない? 大丈夫?」
「はい!」
嬉しそうに抱きついて、返事をされてしまった。
ユミが離れてしまったことでミスラムの拘束が緩み、ドラゴンは抜け出してしまった。幽灯蝶の効果も切れてしまったようだ。ブレスを吐く準備をしている。
まだ動けない人がいるので、止めなければと思っていると、久我さんがハンマーを振り上げて顎に当てた。顔が上に向いて天井にブレスが吐かれる。さらに久我さんが蹴りを放つと、ドラゴンの巨体が僅かに浮く。
すごいパワーだ。
1級の探索者となれば、素手でもドラゴンといい戦いができるんじゃないだろうか。
久我さんがドラゴンとタイマン勝負している間に、俺とユミは体が凍結している人たちにポーションを飲ませていく。全員無傷とはいかなかったけど、今のところ死者はゼロのようだ。
探索者の回復が終わったので、戦いを見る。
ドラゴンが爪を振り下ろしたところだった。なんと久我さんは腕で受け流してしまった。
筋力だけじゃなく、体の強度まで上がっているようだ。
前に自分で肉体強化ポーションを使った時は、筋力の測定だけだったので気づかなかった。これは新しい発見だぞ。
他にも反射神経が飛躍的に向上していて、人という種の限界を軽く超えている。
面白い! もっと他に効果は出てないだろうか。例えば炎や雷、状態異常などに対する耐性だ。
誰か間違って、久我さんに魔法をぶつけて試してくれないかなぁ。
「マスターが悪い顔をしています……」
酷いなぁ。ちょっとだけ実験をしたくなっただけじゃないか。
肉体強化ポーションの実験をする機会なんて、滅多にないんだからやれることはやっておかなきゃ。
「裕真は何を飲ませたんだ?」
「肉体強化ポーションだよ。一本ぐらい買う? 保存期間は5年、効果はご覧の通りだよ」
勘の冴えている俺は、商機を逃さない。
護衛をしてくれている誠が聞いてきたので、商売をしてみた。
これが実演販売ってやつなんだろう。
「いくらだ?」
「うーん。決めてなかったなぁ~。いくらなら買う?」
「一千万円ならすぐに支払う」
「じゃあ、それで! 入金は討伐が終わった後でいいから」
一本お買い上げー!
ポーチ型のマジックバッグから肉体強化ポーションを取り出すと、誠に渡した。
俺の商才が恐ろしい。
ダンジョン行商は順調であった。
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